ダーティーフィンガーズ・ピックアップ - 80年代の風雲児

今なおジョン・サイクスらディストーション・サウンドを追い求めるギタリストから愛用されているダーティーフィンガーズ・ピックアップ。12個のアジャスタブル・ポールピースを搭載した、ギブソンとしては異質かつ画期的なルックスです。

ダーティーフィンガーズ・ピックアップ

70~80年代にかけてのTトップ・ピックアップには、いくつかのバージョンがあります。良く知られているのは、60年代から継続されていたパテントナンバーのデカールが刻印に変更されたことや、ベースプレートの足の折り返し角度がシャープになったことなどです。

70年代後半は、ギブソンにとって非常にエクスペリメンタルな時期でもありました。マローダーやL6など新機軸のピックアップが開発・搭載されたギターが店頭に店頭に並び、新しい時代の到来を予感させていました。残念ながらそれらの試みはヴィンテージ・サウンドを敬愛するミュージシャン達には受け入れられず、商業的にはある程度の成功を収めながらも、長期にわたって愛される対象にはなりませんでした。今日でも中古のマローダーやThe Paul、The SG、The V、Explorer Ⅱなどのギターの価格にヴィンテージ的付加価値を見出すことはありません。

しかし、これらの時代を生き残り、今なおジョン・サイクスらディストーション・サウンドを追い求めるギタリストから愛用されているピックアップがあります。ダーティーフィンガーズは、ディマジオやダンカンのハイパワー・ピックアップに対抗すべく、当時のTトップ・ボビンを流用して、12個のアジャスタブル・ポールピースを搭載した、ギブソンとしては異質かつ画期的なルックスです。搭載されたギターも多岐にわたり、ソリッドボディからセミアコ、ラミネートボディまで千差万別です。

ダーティーフィンガーズが搭載されたギター

このピックアップは、ダブルブラック、ゼブラ、ダブルホワイトの3種類が生産され別売もされていましたが、実際には低価格ギターにも搭載されていたことから、高価な別料金を支払って入手した人は少なかったようです。カタログスペックでも出力16.0 kΩとなっており、当時のPatent Applied For ™に比べても2倍の出力のモンスター・ピックアップでした。レアなモンスター故、現在ではeBayなどで見つけても高額な価格をつけている状態です。

ギブソンのアクセサリーカタログ

カタログに掲載されたダーティーフィンガーズ

詳細を見てみましょう。初期のダーティーフィンガーズは70年代初期のTトップ・ボビンを使っていますので、ルックスはヴィンテージっぽいですね。

ダーティーフィンガーズのTトップ・ボビン

サイドのテーピングには布テープが巻かれており、ルックス的には紙テープの70年代初期との違いが一目瞭然です。

ダーティーフィンガーズに巻かれた布テープ

ヴィンテージのTトップ・ハムバッカーと厚みを比較してみると、1割程度分厚いのがわかります。

ダーティーフィンガーズとヴィンテージのTトップ・ハムバッカーの厚み

ヴィンテージのTトップ・ハムバッカーは約14mm。

ヴィンテージのTトップ・ハムバッカーの厚み

ダーティーフィンガーズが約16mmでした。

ダーティーフィンガーズの厚み

出力はカタログスペック通りで15.81 kΩです。

ダーティーフィンガーズの出力

裏面にはパテントナンバーの刻印に加えて、製造月日でしょうか、インクのスタンプが押されています。

ダーティーフィンガーズ裏側の刻印とスタンプ

「Mar.27 1979」のように見えます。マグネットやスペーサーも、どこかロボティックで未来的な金属の印象があります。

ダーティーフィンガーズのマグネットとスペーサー

中古市場でダーティーフィンガーズが搭載されたThe SGやThe Paulを見つけたら、とりあえず試奏してみてその極悪ぶりを体験してみてくださいね。

個人的には当時のアクセサリーカタログでダーティーフィンガーズの下に載っている、Velvet Brickというピックアップも名前がイカシテて好きです。

カタログに掲載されたVelvet Brickピックアップ

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