フカザワ・バレー・レストーラーの巻(前編) - SG Special改

ネット通販で手に入れた、ヘンテコな改造SG Special。前オーナーに敬意を表して、Vintage Maniacsがレストレーションします。今回は新しく作るピックガードのデザイン、怪しい仕様、そして不思議な「ちっちゃいプレート」をご紹介します。

前オーナーの苦労と工夫

こういうギターをネットで手に入れました。

70年代中期のStandardっぽくて、ABR-1&シングルガードなので、SGファンとしては見逃せない個体だったのです。で、ポチっと。説明をあまり読まずに、衝動的にボタンを押してしまうこと、ありますよね、皆さんも。で、画像をよく見ると、ちょっとこんなアングルもあって、決済してから不安になったりしますが、それも通販の楽しみです。

到着してみると、すこぶるカッコいい。よく見るとピックガードはブラックの1Pだし、ピックアップのザグリがはみ出しているし、どうやらスタンダードではなくて、Specialを改造したようです。

しかも、ネジ穴につま楊枝補強…。

前オーナーの苦労というか、工夫というか、いろいろ感じるところがあります。そもそもの原型は、これだったのでしょう。

で、解体してみたら、こんなでした。

こうした改造を「素人がひどいことをして…」と戒めるか、「工具も無い中、良い音を求めて手作業を頑張った」と評価するか、人それぞれに思うところがあるかと思いますが、こうして手にしたのもご縁ですから、私は「しっかりとレストアしたい」と思うわけです。

幸いボディバックには、ステッカー跡やバックルキズがなくて、ギター自体は丁寧に扱われてきた印象を受けます。

前オーナーに敬意を表して、前後編でお送りする「レストーラー」物語、お楽しみください。

はみ出したザグリを隠すためにピックガードをデザイン

皆さんは、ヴィンテージ・カーの廃車をレストレーションするオッちゃん達の番組「ラスト・バレー・レストーラー(Netflix)」や「名車再生!クラシックカー・ディーラーズ(Discovery Channel)」をご覧になったことはありますでしょうか。誰にも負けない熱意と一家言を持ち、粗っぽい外見からは想像できない専門知識とデジタルリテラシーの高さ、そして経験・記憶力と資料の膨大な蓄積を持つ連中。「好き」とはこういう事だと脱帽する「ツワモノ達」が、不可能と思われるようなレストレーションを見事にやり遂げる番組です。もちろん、レストーラーの顧客である「ファン」達も、ストーリーに彩を添えます。いつか俺も、長野の笹賀あたりにプレハブ付きの土地をかりて、ヴィンテージギターに囲まれて、毎日思う存分「レストレーションするんだ」って夢見ながら、フカザワ・バレー(笑)で今回の作業に講じることにします。

え~っと、この「とりもち(昔、蝉採りに使いました。知らない読者も多いかも)」のようなねちゃねちゃしたモノは、マホガニーの粉末をタイトボンドで練った充填剤です。

これを使って、歪んだ位置に開けられたピックアップリング・スクリューの穴を、ひとつひとつ丁寧に埋めていきます。

そのあと、#3000のサンドペーパーで表面を均していけば、しっかりとピックアップリングが…のはずだったんですが、困りました。

Vintage Maniacsなのに、日曜大工レベルの作業で申し訳ありません。大反省です。で、とりあえずピックアップリングを載せてみたのですが…。

元のザグリがはみ出しちゃって、全然ダメでした(泣) じゃあってことで、ワイドピックガードで全部隠しちゃおうと安易に思ったのですが、この年代は、そもそもがネックエンドの位置がボディに入り込んでいるので、ヴィンテージのピックガードはサイズが合いません。

それならばと、あたらしいワイドピックガードのシェイプを描いてみることに。

全体のイメージを崩さず、ネックの切込みをいれてみました。

だいぶ縦長のシェイプになっています。

でも、イメージ的に違和感ないでしょ?

遠目にみても、ちゃんと「かっこいい」か確認します。

スリムすぎないように、最後にウイングの部分を微調整しましょう。

皆さんなら、どちらを選びますか?

とにもかくにも、ここまでゴールデンウィークの前半2日間をかけてみて、自力レストレーションが無理っぽいことに気が付き始めました(笑) そこで盟友「よっちゃん(MusiMagic)」の登場です。ピックガードの切り出し、PUキャビティの補正、そしてハードウェアのセッティングを含め、後編で彼の作業をじっくりとご紹介します。

左右のバランスがヘンテコ

さて、今日の作業はここまでにして、時間もあるので「SG Special 改」を観察することにしました。

直観的に「変だ!」と思うのは、ヘッドストックのロッドカバーです。上のネジ穴の位置、おかしくないですか?

ほら。

どうも、ギター全体を写真で見ると左右のバランスがヘンテコなのは、このためかな? と思ったら、ストラップピンの位置も怪しいです。

左にずれてます。こりゃ、SECOND(工場出荷時点で、Bランク品)扱いでも良さそうな製造ラインの「チョンボ」でしょう。ほかにも「やらかして」ます。元のパーツが載っていた部分と日焼けした部分で見分けがつきますね。

ちっちゃいスイッチプレート

買う前には、「スイッチプレートはオリジナルに戻さないとな」って思っていたのですが、この「日焼け跡」を見ると、なんと、この「ちっちゃいプレートがオリジナル」ではないですか! 初めてみました。

ヘッド裏に「SECOND」のスタンプは無いので、通常の販売ルートで店頭にならんだんでしょうね。いいのかなあ…。あ~、ペグもGroverから戻したいなあ…。

そうそう、スイッチプレートは、どうみても「スタッドボルトの穴周辺カバー」のためにゴールドトップなどで70年代初期に使われたプレートの流用ですよ。というか、単に間違ったのか…。

まあそんなこんなの「なんちゃってレストーラー」ですが、後編ではよっちゃんが参加して、本格的に治していきますよ。

白蝶貝ではなく、パーロイドのブロックポジション。色合いがキュート。
ネックエンドの曲線がデザインの見せどころ。
ペグはGroverからSchallerへ。ルックスはヴィンテージです。
ピックガードはシンプルな1プライで、切り出し断面はギザギザ。
搭載を待ち受けるパーツ群。

 次に読むなら

フカザワ・バレー・レストーラーの巻(後編) - SG Special改
前編に引き続き、改造SG Specialをレストレーション。ピックガード製作とPUキャビティ加工を中心に、MusiMagicの吉原さんの出張レストレーションの様子をお届けします。

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