James Yamaguchiさんがやってきた - James Burton Telecaster

フェンダーが1990年代に発表した名器「James Burton Telecaster」にストリング・ベンダーをカスタムオーダーで搭載。オーナーのJames Yamaguchiさんのコダワリが詰まった唯一無二のギターをご紹介します。

James Burtonというギタリストを知ってるかい? ミスター・テレキャスターといわれるルイジアナ生まれのチキン・ピッキング・ギタリストだ。1939年生まれの彼が最初に大ヒットを飛ばしたのが1957年。若干18歳でそのテレキャスター・サウンドは世界を魅了し、長年に亘りリッキー・ネルソンやエルビス・プレスリーを支えたレジェンド。スタジオ・プレイヤーとしてもフランク・シナトラやサミー・デービス・Jr、ビーチ・ボーイズなどのレコーディングで多才ぶりを発揮している。

ここに、一本のJames Burtonモデルがある。フェンダーが1990年代に発表した衝撃的なデザインとスペックの名器「James Burton Telecaster」だ。同社は、James Burtonの為に、ゴールドペイズリーのモデルと、Candy Apple Red(Standard Telecaster)を開発し、特にレースセンサーPUを3基搭載したバージョンは、テレキャスター・マニアから絶大な人気を博した。カタログを参照してみると、ゴールドペイズリーは、245,700円となっている。 

手の込んだカスタム仕様のミュージシャン・モデルがこの価格で手に入ったのも、90年代の良き時代かもしれない。

オーナーのご厚意で紹介している画像の個体は、ファクトリースペックに加え、さらにジェームズ・フリークを彷彿とさせる「ストリング・ベンダー」をカスタムオーダーで搭載、バキバキのマニアック仕様になっている。 

VMこんにちは~、差し入れ持ってきましたよ~。

FVお、気が利くね。ジェラートとフェンダーの90年代のカタログか。

VM暑さしのぎに、Antica(二子玉川高島屋B1のGelateria)買ってきました。リリコイ好きでしょ?

FVサンキュー、サンキュウ。パッションフルーツは涼しげで、のど越し爽やかだね。

VM私は季節限定の「マロン」を食べよっと。ところで、この90年代カタログ、見てくださいよ。

FV分厚くって、ムック本みたいに手の込んだ編集とカラー写真。豪華でバブリーな時代を象徴してる。

VMで、いま撮影しているギターは何ですか?

FVフェンダーのジェームズ・バートン・モデルだよ。

VMへえ、ジェームズさんって日本人っぽいですね。

FVあほか、君は。写真はオーナーのJames Yamaguchiさんだ。わざわざ持ってきてくださった。バキバキの日本人だ。

VMえへへ、知ってますよ、僕だって。デール・ホーキンズのスージー・クワトロって曲、大好きですから。

FVそれを言うなら「Susie Q」だろ?

VMバキバキのテレキャスター・サウンドですね。

FVこんにちのテレキャスのポジションは、彼が作り上げたサウンドといっても過言じゃない。

VMちょっと解説してくださいよ。

FVこのギターに関してはJames Yamaguchiさんのコダワリが随所に詰まっているので、私の説明というよりは、オーナーの解説を記載しようか。

VMそもそも、このギターの開発って、どういう経緯なんですか?

FVそうだねえ、彼の印象としてはエルビスのライブ映像に残っているピンク・ペイズリーなんだけど、この「ゴールド・ペイズリー」も十分にインパクトあるデザインだね。君が持ってきてくれたカタログにインタビューが掲載されてるので見てみてよ。

デビューから現在までを振り返る貴重なインタビュー

VMへえ、ピンク・ペイズリーって、70年代にフェンダー社がジェームズ・バートンさんに作ったデザインなんだ。

FVYamaguchiさんは、このギターにストリング・ベンダーを搭載してもらったそうだ。 

VMえっと、ちょっと調べてみたんですが、ストリング・ベンダーって、開発者のGene Parsonsさんご本人が搭載してくれるそうですね。

FVだから、ギターをアメリカに送ってチューンナップしてもらわないといけない、随分とコダワリのユニットってことだな。

VMあ、ほんとだ。James Yamaguchiさんも、丁寧なレターを書いて、ギターをアメリカまで航空輸送したんですね。1992年から。ちゃんとお手紙で返事が来るんだ。

FVそういう時代だよ。欲しいものがあれば、自分で調べてコンタクトして、電子送金して、梱包発送したあと、何か月も待ち焦がれる。

VM「マロン」ですね。

FV「ロマン」だろ? 

Yamaguchiさんのレターには細かなスペックも指定されていて…

VMこれって、ボディにバックのクリアプレートを沈めてほしいっていうリクエストですね?

FV超コダワリを感じる。クローズアップで見てみてよ。

VMすごいなあ。ボディにストリング・ベンダーのキャビティを空けて、外周をもう一段沈めている、手間暇かけたスペックですよ。 

FVしかも、その作業が丁寧だ。美しい。

VMアメリカでギター作る人って、なんかダイナミックにディテールに拘って、妙に細かいのに、全体的なバランスとしてギブソンやフェンダーのおおらかなテイストを壊さない、そんな共通項を感じます。

ストラップピンと連動して、2弦の音程を上下させる機構

VMピックアップはレース・センサーですか?

FVそうだね、一番ストラトっぽいサウンドが出る、私の大好きなピックアップだ。

VMあ、思い出しました。ギブソンも、なんたらかんたらジュニアっていう、ストリングベンダーを搭載したギターを出してましたよね?

Gibson Music City Jr. with B-Benderの旋律

久しぶりに、びっくりするようなギターがギブソンから登場しました。パッと見た感じ、レスポール・Swan…

2016.03.04

FV「なんたらかんたら」は酷いな。ちゃんと「Music City Jr」っていうモデル名だよ。

VMカーヴィングのかっこいいハードケースが欲しくて買ったっていう(笑)

FVギターよりもケースが欲しかった(笑) でも、持ってみると素晴らしいギターだ。弦をベンドする仕組みは、だいぶ機能的に異なるようだけどね。

よりシンプルな機構になってギブソンに搭載されたストリングベンダー

90年代にアメリカに手紙を書いて、本人からお返事をもらって、銀行送金して。待ちに待って手に入れたマニアックなギター。James Yamaguchiさんのチューンナップ・ジェームス・バートンには、さらにヒップショットが搭載されていて、今見ても当時のことが走馬灯のように脳裏に浮かぶ、唯一無二のギターであることが伝わってきます。

チューンナップ前の個体の写真
筆者のフェイバリットピックアップ、レースセンサーの「Blue,Red,Silver」
最高級ペグ「パールボタン・エリート・ペグ」はゴールドプレート
1弦と6弦には、ドロップチューニング機構も搭載
これが2弦と連動してペダルスティールっぽいサウンドを作り出す

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