レスポール・アーカイブス - Rich Robinson’s FUG

今回のアーカイブスはサンバーストのヒスコレをゴールドに改造した「FUG:Flame Under Gold」をご紹介。コンセプトは「ギタリストが改造した愛器」。複数のオーナーを渡り歩いてきた感を、時代を反映する改造メニューでチューンナップしました。

The HystericCollection FUG:Flame Under Gold

サンバーストのヒスコレをゴールドにトランスフォーメーションした「FUG:Flame Under Gold」のアーカイブスです。チューンナップのコンセプトは、「ハムバッカー搭載・ABR-1・STPにコンバージョンした55年GT」というややこしい仕様。ベースにしたヒスコレは、ワンピースのフレイムメイプル・トップを持った、チェンバード構造の限定モデル「CR-84035」で、かなり特殊なスペックです。軽量なボディバランスと贅沢なワンピーストップが相まって、55GT改を復刻するにはうってつけでした。

こちらが、購入したてのチェンバード・サンバースト「CR-84035」
遠目に見ると、ちょっと薄トラの、かっこいいヒスコレですが…
トップが贅沢なワンピース
角度で見え隠れするフレイムがキュートです
新品のままアメリカに発送しました

VM (Vintage Maniacs)Rich RobinsonさんのFUGっていうタイトルですけど、彼のは68年のトップを無理やり剥がした感じでしたよね。

FV (Fukazawa Vintage Club)そうだね。Richにアトランタでこのギターを見せてもらったときに、「なんか、 もっと、なんてのか、マディーでウエットなGTが欲しいんだよね」って話を彼がしていてさ。

VMFVさんは、遡って高校時代のロビンソン兄弟を当時からご存知でしたよね。あの頃RichはロンのZemaitisを目指していたって。

FV「おれは、兄貴のバンドで有名になって、お金ためてロンとおなじギターを買うんだ」って毎週末Famous Bargain Musicで店主のJack Spenceにタンカ切ってた(笑)

VMで、一気に売れましたよね、そのあと。

FV渋谷でシークレットギグをやったときに、楽屋で久しぶりにあって。「この後、ヨーロッパツアーだから、イギリスでゼマイティスをオーダーしにいくんだ。場所を教えてくれ」って感じでね。彼は、ケントとかトニーとか、詳しいことは知らなかった。

VMFVさんの昔話になると長いので、このあたりでギターに戻りましょう。

FVえ~っ、つまんないなあ(笑)

FV一覧でご紹介すると、チューンナップは概ねこんな感じだよ。

  1. ペグは、ドイツ製シャーラーに交換
  2. ヘッドロゴはヴィンテージロゴに差し替えて、位置を下げる
  3. ポジションマークはヴィンテージセルロイド
  4. サンバーストをゴールドトップに、ボディもオールリフィニッシュ
  5. トップがワンピースとわかるように、ゴールドをセンターまで剥がすエイジド加工
  6. センターオフの継ぎ目がトップにあるように見せるフェイクラインを入れる
  7. コンビネーションブリッジのアンカー跡を作成し、ABR-1のポストを入れる
  8. デュアルサウンド用ミニスイッチ×2個の穴跡を、素人っぽく木で埋めただけにする
  9. ハムバッカーのザグリをP-90風に加工しなおして、もう一度ハムバッカー用に再加工
  10. 指板はハカランダにリプレイス
  11. トラスロッドはスチール製のチューブレスに交換

VM改めて「何故Gibson社が、この異様なスペックのヒスコレを作ったか」知りたい気持ちになります(笑)

FVそれもそうだけど、今回はワンピースだからこそできる55改風チューンナップだ。「ゴールドトップの下に見え隠れするメイプルのうねり」を発見したときに誰もが駆られる、“剥いでみたい!”という衝動を再現してみたってところかな。

VMカッコいいフレイム・トップをゴールドで隠してしまうんだから、相当贅沢な作業ですよ。

FV目指す「ウマヘタ」スペックは、あくまで「ギタリストが改造した愛器」。それぞれの改造が施された時代を反映するメニューだな。複数のオーナーを渡り歩いてきた感が満載。

VM確かに「ディマジオ搭載により開けられた風のミニスイッチ穴」や、「壊れた木部のリペア痕」、「手作業の改造跡」など、レストレーションという言葉がまだまだ発展途上の70~80年代をサバイバルしたギターのイメージ。その「ウマヘタ・セットアップ」を細かに再現しています。

FVおいおい、随分褒めるじゃないか(笑)

VM「愛され、こき使われ、奏で、魅了し、生存し続けた“しぶとい命”が、このギターには宿っているんだぜ!!」って叫びですねえ。華やかなサンバーストと玄人好みのゴールドトップ、その2つをコラボさせた、あたらしいスタイルのセンターオフ2Pは、さらなる発展を予感させます。

FVうーむ、カタログ通販みたいになってきたなあ。

FVまあ、とにかくデイヴ(ジョンソン)のクラックとか、そこはそれでナチュラルなんだよ。画像で、そのあたりを楽しんでいただけると嬉しいな。

VMロゴの位置替えとか、丁寧な作業をみると、「ギター作ったほうが早くない?」って突っ込みたくなりました。

FVこのギター、いま誰が弾いてるんだろうなあ。もう一度触りたいなあ。

VMFVさん、元カノにも言ってます?(笑)

※そういえば、ストップテールピースにも拘ってました。

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