Lap around コリーナの憧憬

コリーナ好きでも高額なFVやEXを何本も所有するわけにはいきませんが、ラップスティールは手頃な価格で手に入れることができます。コリーナの魅力を堪能できるギブソンのコリーナ・ラップスティールを、パーツを中心にじっくり見ていきます。

美しい木目のコリーナ材

(Photo: Courtesy of Joe Bonamassa)

ヴィンテージギター・マニアの間で「Korina」といえば、フライングVやエクスプローラーに代表される、希少でレアなモデルに使われた黄色っぽいカラーの木材でしょう。この木材がもともとLimba-woodと呼ばれていたのは、Wood Database に記載されているとおりです。

西アフリカ原産のこの木材には、「Terminalia superba」や「Superb Terminalia」等の呼称がありましたが、みなさんにとって、よりポピュラーなのは「Limba」や「Afara Korina」で、特に家具や楽器に使用されるときは「コリーナ」と呼ぶのが一番通りが良かったみたいですね。

このカタログでも、ギブソンは「High quality natural Korina finish」と記載していて、「コリーナ材と、木目の美しさを引き立たせるためのナチュラル・フィニッシュ」はセットだったことを匂わせています。冒頭のラップスティールを6弦にコンバージョンしたようなギターは、ジョー・ボナマッサ所有のモデルですが、ここでもゴールデン・ナチュラルとでも呼びたくなる美しいナチュラル・フィニッシュが施されています。

ギブソンのコリーナ・ラップスティールギター

最近の音楽シーンにラップスティールが登場する場面は、以前ほど多くはなくなりましたが、ナッシュビルのライブカフェに立ち寄ると、今でもクリーンなトーンを奏でる往年のFenderやGibson製ラップスティールの軽やかな音色を楽しむことができます。私はラップスティールは演奏できませんが、この「Korina Lapsteel」は大好きです。見ているだけで音が聞こえてきそうですね。

そもそもKorinaという呼称は、リンバウッドを化粧板として家具に使用していたメーカーの商品名だったという話も聞いたことがありますが、それだけ木目の美しい木材だったということです。ギブソンのフライングVでもエクスプローラーでも、フシや木目、導管が黒や茶色に汚れたものは使われておらず、美しいグレインを誇っています。

1982年にギブソン社が突然コリーナ材を使ったギター製作を再開したのには驚きました。フライングVがセンター2ピースではなかったり、エクスプローラーが1Pでなかったり、モダーンはよくわからなかったり(1Pのモダーンを見たことがあります)で、58年当時のままというわけにはいきませんが、なんせ久しぶりの「Korina」というウッドマテリアルの登場に、業界は色めき立ったのでした。

コリーナ好きというか、相当なマニアでも、高額なFVやEXを何本も所有するわけにはいきませんが、手元に置いて眺めるのに手頃価格で絶好なのがラップスティールでした。

なによりも、ヘッドのレイズドロゴがかっこいいです。これはもう目が眩むほどです。なんといっても、ヴィンテージのフライングVと同じパーツなのですから!

この「樹脂製ロゴ」は3本足でヘッドに差し込まれていて、意外と簡単に外れます。

ところで、美しいコリーナウッドを使ったギターでコレクターを驚かせたのが、日本の「バッカス」です。筆者も何本もコレクションしています。写真に登場するフライングVもバッカス製で、本体の厚みがGibson社製よりも若干薄く、軽量で取り回しが良いので大好きです。

メンテナンスのしやすい設計のコントロールプレート

コントロールプレートは1枚の金属です。その上にすべてのパーツが搭載されてるのが驚きで、簡単に外せます。

これは、工場でアッセンブルするのも楽ちんだし、メンテナンス適性も抜群です。設計者、天才ですね。キャビティ内の文字は例のごとく読めません…。

おしゃれなブラックボタンの3連クルーソン

ギブソンのおしゃれ感が炸裂しているのがペグのボタンです。クルーソンの3連といえばホワイトボタンがスタンダードですが、ここではブラックが採用されているのです。

取り外してみても通常の3連クルーソンで、ボタン色以外は同一仕様、わざわざラップスティールのためのブラックボタンと考えられますね。

さて、私は以前から「コリーナのキュートなゴールドカラーには、ホワイトボタンのほうが似合うはずだ」と思っていたのですが、良い機会なので取り替えてみました。

やってみてわかったのですが、膨張色の白は、コンパクトなラップスティールのヘッドストックに似合わなかったです。

しかし、わざわざ「部長、白ボタン付けてみたらヘッドが大きくて不細工なので、ここはひとつ、なんていうか、特別にクルーソンに黒ボタンを発注してもいいっすかね?」って聞かれて「いいよ」って返事するほうがどうかしてます。それだけ当時のギブソンには、アーティスティックに「工業デザインとしてのカラーリング」に拘った人がいたのだと勝手に想像しています。

シリアル、リフレクターノブ、ピックアップ

シリアルは、塗装の上から「乱暴に打刻」してあって、ここだけ見るとギブソンっぽくないと思いませんか?

そのほか、細部を見ていくと、ブラックのリフレクターノブは60年代スペック。

ピックアップやスクリューはメロディーメーカーからの流用でしょうか。

流用されたネジと見たことのないネジ

ピックアップの後方には、弦を止めるテールピースがプレートにネジ止めされています。

ギブソンは、あまりネジの流用をしないのですが、このテールピースを止めているネジが結構ひ弱なので、チェックしてみると、ピックアップを止めるネジと同じでした。ギブソンらしくないです。

左2本がピックアップスクリューで、右の1本がテールピース用です。まさか60年後に「こんなチマチマした指摘」を遠い東洋の異国でされるとは思わなかったでしょうが、ネジの共通性はアフターパーツの入手でも、非常にユーザーフレンドリーな考え方だと思います。

ちなみに、ブリッジカバーのネジは「見たことのないネジ」なので、共通部品ではなさそうです。このあたりもPUネジで良かったのではないかと…。

ホワイトトーレックスのハードケース

そんなこんなで、いろんな発見が多い「コリーナ・ラップスティール」でしたが、カラーに拘っているのは本体だけではありません。ハードケースは、ギブソンにはめずらしい「ホワイトトーレックス」でした。

ギブソン・バッジがかっこいいですね。ハンドルとかラッチは当時のブラウンケースと同じですから、ケースの外張りもブラウンで良かった気もしますが、これはコダワリでしょうか。

というか、よく見ると「ブラウンケース」というよりはフェンダーっぽいですね。

ケースに当時のスライドバーが入っていたり、相変わらずタイムスリップ的なコンディションの一本ですが、とにかく「クルーソンのつまみは黒か白か」、人気投票したい今回の撮影でした。

人気投票 結果発表
投票期間:2020年7月31日~8月31日
投票者プレゼントにつきましては、ご当選された方へメールでご連絡を差し上げました。メールが届かなかった方は残念ながら落選となりますのでご了承ください。

 次に読むなら

ヴィンテージ・レスポールっぽい楽器 - Gibsonラップスティールギター
フルオリジナルで貴重なコンディションのコンソール・グランデを紹介。ファンにとっては「レスポールっぽいもの」にあこがれ続ける…それがギブソンなんですよねえ。

掲載されている文章および画像の無断転載・引用(ソーシャルボタンは除く)は固くお断わりいたします。

 Vintage Maniacs Shopのおすすめアイテム

Vintage Maniacs Magazine Vol. 1

Vintage Maniacsのブログに著者コメントを追記し、編集・再構成した「Vintage Maniacs Magazine」。全ページフルカラー仕様で、資料としてもオススメです。Vintage Maniacsが切り込むディープでマニアックなヴィンテージギターの世界をお楽しみください。

ショップで見る
Vintage Maniacs 公式Webショップ