シャーク・フィンのスプリットヘッド・エクスプローラー - チューンナップかく語りき
エリック・クラプトンの使用で一躍有名になった「エルボーカット・エクスプローラー」をモチーフに、Vintage Maniacsが独自に改造を施した、懐かしくも新しいギター「Splitlorer(スプリットローラー)」をご紹介します。
目次
エルボーカット・エクスプローラー
VM(Vintage Maniacs)今回のチューンナップもエポックメイキングですね。
FV(Fukazawa Vintage Club)ギブソンのエクスプローラーは、斬新なデザインもさることながら、エリック・クラプトンが「肘があたる余計な部分をカット」したことで一躍有名になった「イカギター」が印象深い。
FVVintage Maniacsでは、そのエルボーカット・モデルをモチーフに、リック・デリンジャーやアレン・コリンズなどをオマージュした、まったく新しいデザインに仕上げてみた。
VMメダリオン・フライングVに始まり、76復刻サンダーバードからエボニーブロックSGと、ここまでVintage Maniacs Tune-upは、大体において「好き勝手」やってますが(笑)、今回は「あるようで無かった」という印象です。
FV好き勝手(苦笑)…というよりは、エクスプローラーに実用性の生命を吹き込むというコンセプトでもあるな。
VM確かに、エクスプローラーって重量あるしデカいから、なんとなく男性目線になりますね。
FVコリーナのカスタムショップ・モデルをエルボーカットしたときに思ったんだが、演奏ポジションも操作性もすごく軽快で取り回しが良く、ストラトっぽくなるんだよなあ。
VMあ、それわかります。ストラップを下げたときのバランスが抜群ですよね。
FVボディのレゾナンスも、要らない部分をそぎ落とすと随分シャープになる。ホント、弾いてみるとギブソンのどのモデルにも無い、軽快なハムバッカーサウンドなんだ。
VMそういえば、H.S.Andersonという国産メーカーのモデルに、スプリットヘッドのエクスプローラーと、ファイヤーバードヘッドのエルボーカットがありました。
FVカタログでしか見たことないけれど、当時は随分と興奮したのを覚えているよ。
VMでも、スプリットヘッドにしたり、エルボーカットしたり、今回担当してくださったルシアーの方、随分と根気ありますね。特にFVさんのめんどくさいオーダー、普通は断りますけど…。
FVいやあ、本当に今回のチューンナップは、ルシアーさん渾身のプロジェクトだと思うよ。
VMエルボーカットは「シャークフィン」って、命名ですね?
FVそう。カットした余分な部分が、まさに「サメの背びれ」って感じで、抜群にCoolなんだよ。それを伝えたくて、ルシアーさんがネーミングを考えてくれた。
新しいサウンドをクリエイトするヘッドストック
VMまずは、ヘッドストックの突き板を外して、スプリットになる部分を付け足すんですが、ここはすごく視点が凝っていると思いました。塗装というか塗料はビニールみたいに分厚いのがわかりますね。
FVヘッドは強度を保ちながら新しいサウンドをクリエイトするための工夫が盛り込まれている。もとのバナナヘッドがそのまま残ってるだろ?私は思いつかなかったけれど、これは嬉しいよね。
VMうわ、これは凄い。しかも、ペグホールをひとつひとつ丁寧に埋めていくんですね。
FVポイントは、エクステンドしたホンジュラスマホガニーの中に、ハードロックメイプルのブロックを埋めているところだ。まさに「サスティーンプレート」のごとく、木材の質量差がデッドポイントを無くしてくれて全音域でバランスが良いから、コードワークが気持ちいいよ。
VMそのうえで見えないように表と裏に突き板を貼ってサンドイッチするって、マニアックな設計ですよ。70年代のマイケル・スティーブンスの作業を連想させますが、こちらの方がテクニカルに高度ですね。
FV塗装は、ネックの裏を全部剥がしてニトロセルロースラッカー。最近の水溶性ラッカーだと、どうしても「のっぺり」「まったり」と、弦振動が吸い込まれてしまう気がして。
VMネック裏全塗装ですか。ラッカーが薄くて硬いのがわかりますね。
FVそして手に吸い付くようなタッチ。懐かしいだろ?
VMだんだん、ジャパネットたかたみたいになってますよ。
FVお、すまんすまん。
懐かしくも新しいギター「Splitlorer(スプリットローラー)」
VMHystericPAFのDouble Blondeや、Kluson Single Line、レイズドロゴ、ABR-1と、随所にVintage Maniacsらしいスペックが搭載されていて、懐かしくも新しいギターって感じがします。
FVファイヤーバードで実現できなかった、フェンダーライクなバランスとタッチ、それをハムバッカーでキンキーに仕上げるってのは、ポルシェでいうとRUFのイエローバード的な。いわゆる、Gibsonチェリーバードって感じだ。
VMブラックもあるんですよね?
FVそれは、ブラックバードだ。
VMいま思いついたんでしょう(笑)まったく…湾岸ミッドナイトじゃあるまいし。あ、ちなみに私は好きですよ、朝倉アキオの「悪魔のZ」。
FVいうなれば今回のは「デビルEX」かね。
VMダサい…だめです、そんなネーミング。チューンナップしてくれたルシアーさんが怒りますよ。
後日、ルシアーさんからブラックカラーモデルに「オリオンブラック」という素敵なネーミングをいただきました。Splitlorerのボディシェイプが、冬の夜空に君臨するオリオン座の直線美を連想させ、海洋をインスパイアさせるシャークフィンカットと相まって、海の神“ポセイドン”の力強さ、漆黒の美学が伝わってきますね。
FV湾岸ミッドナイトでいうなら、Zというよりは、島達也の930ターボってことにしてほしいんだけど。
VM「ヴィンテージなのにモダンで、レトロなのにアグレッシヴ」って、かっこいい。
FV弾いてみたらわかるよ、本当に「フィット」するから(笑)
VMじゃあ名称は、Vintage Maniacs Tune-up「Splitlorer(スプリットローラー)」でどうですか?
FVあ、いいね、それ。
チューンナップの工程をご紹介
今回はルシアーさんのご厚意で、特別にチューンナップ工程をご覧いただけることになりました。サンキュー!
H.S. Anderson A3
スプリットローラー・チューンナップにあたり、インスパイアされたH.S. AndersonのA3&A5を当時のカタログでご覧いただきましたが、オリジナルオーナーである松岡様からA3の大変貴重な写真をご提供いただきました。本体のコンディション、オリジナルタグ、ハードケースのすべてがタイムマシン・ギターですね!
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