1983年(亥年)のアクエリアス - 前編
1980年代に華々しく登場した期待のルーキー「 Sonex-180」。新素材のチャレンジャーともいえるこのギターと、同じナッシュビル工場で5日を隔てて産声をあげた「SG Standard」の2本。当時のカタログを開きながら、それぞれのモデルを見ていこう。
目次
Sonex 180とSG Standard
「80283579」のSonex 180と「80333564」のSG Standard。1983年の1月28日と2月2日、わずか5日を隔ててテネシー州ナッシュビル工場で産声をあげた、この2本のエレクトリックギターは、容姿や仕様そして生い立ちに於いて随分と距離のあるモデルだ。
SGモデルは、60年代の登場からこれまで唯一ディスコンされていない長寿モデルで、幾多のスペック変更を繰り返しながらも、ベーシックなスタイルとルックスを守っている。一方でSonex 180は、180度の高温にも耐えうる新素材「Multiphonic body」を採用して1980年代に華々しく登場した期待のルーキーだった。
それぞれのモデルについてクローズアップする前に、当時のカタログでラインナップを見ながら回顧してみよう。
1980年のギブソン・カタログ
小冊子になった1980年のフルカラー・カタログには、Kalamazoo AwardからSonex 180までバラエティに富んだ価格帯のギターが58機種紹介されている。
まず、おどろくのは冒頭で「長寿モデル」としたSGだが、ここでは「Standard」一機種だけとなり、カスタムもジュニアもスペシャルも無いことである。
一方で、生産工程を簡素化したローエンドモデルは充実していて、当時ワールドワイドにマーケットを席捲していたアジア製ギターに、なんとか価格でも対抗しようとした経営陣の迷走を感じることもできる。
The PaulやThe SG、そして335-Sなどは、まさに新時代のギブソンとして期待されながらも、当時は「ブランド名を失墜させた戦犯の烙印」を押され、特にヴィンテージ復刻ブームだった日本の市場では大きな成功を収めることはできなかった。ただ、40年経過した現代からみても、筆者は、その基本コンセプトと生産品質、そしてなによりも「Gibsonのロゴを戴冠」するに値する「王道のロックサウンド」を、高く評価できると思っている。
新素材のチャレンジャー
この頃に登場したサイドジャックは「生産性向上」と受け止められているが、ワイヤレスシステムの普及していない時代に、実際にステージでシールドを踏んで、ジャックまわりを壊した経験のあるギタリスト達は、「シールドを踏んだらスポっと抜けるサイドジャック」は、重宝だったと聞いている。
ヘッドロゴですら、往年の真珠貝で模られたGibsonロゴと、シルクプリントのような金文字でデカデカと描かれた「The Gibson USA」では、デリカシーが違うと思うかもしれない。
でも、それでも良いじゃないか。Sonex 180は、Made in Japanのパーツを搭載した、新素材のチャレンジャーだったのだから。
後編では、Sonex 180ラインナップの最安値モデルDeluxeと、サイドジャックのSG Standardの細部を見ながら、「決して手を抜かないギブソンのプライド」を見ていこう。
この3モデルの違いが、ひと目で判別できるだろうか。CustomとStandardのピックアップは「Gibson Super Humbucking」となっている。Deluxeは「High Output Humbucking」とだけ表記されていた。いずれも、6弦側のマウントスクリューが2本で、角度を変えられるように工夫されている。
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