正しく遺すもの - Firebird Ⅲ (中編)

ピックガードに注目した前編に続き、今回もFirebird IIIにクローズアップ。美しい曲線を描くヘッドストックや間違えやすいノブの仕様、リバース・ファイヤーバードと相性抜群(個人的好み)のニッケルパーツなどをじっくり見ていきましょう。

異次元の美しさ

(毛利夏実作 龍面)

VM (Vintage Maniacs)このギターは、「フルオリ(フルオリジナル・コンディション)」と呼んでも良さそうですね。

FV (Fukazawa Vintage Club)Vintage Maniacsにも何度か登場している個体だけど、オリジナル性が高いので細かに見ていこうか。まずは、ファイヤーバードで一番交換されがちな、ロッドカバーのスクリュー。

FVメダリオンへの憧れ - ファイヤーバード編 (2) ~ 71年と63年のスペック比較」でも詳しく紹介しているので、参照してね。

メダリオンへの憧れ - ファイヤーバード編(2)~ 71年と63年のスペック比較

メダリオンへの憧れ - ファイヤーバード編(2)~ 71年と63年のスペック比較

2019.11.22

VMこのあたりのマチエールっていうか、手作業の加工ラインが美しいですね。ブラックが二層構造になる、ロッドカバーとのダブルライン。

FV何もないところから、こんな美しい曲線を思いつく人って、プロダクトデザインというよりもファッションの領域にみえる。なのに、女々しくなく男性的なメカっぽさ。

VMべた褒めですね。

FVいろいろ好きなギターのデザインがあるけれど、Firebirdだけは唯一無二というか、他と比較する領域に属さない、異次元の美しさだ。私が、同じギターデザイナーとしてレイモンド・ディートリッヒに感じるのは、彼がまったく想像の及ばない、別なフィールドでギターにアプローチしている、というオーラだな。

VMぐちゃぐちゃ言ってないで、パーツの解説してくださいよ。

FV……。

割れやすいピックガードと間違えやすいノブのスペック

VMピックガードの隅っこが割れてる個体の多いFirebirdにあって、これは綺麗ですね。

FVここと、ここが割れやすいのよ。

VMコレクター泣かせですよ。ここのスクリュー部分は意外と丈夫で、滅多に割れてないです。

VMそして、消えやすい鳥のマーク。これも、かろうじて残っているというか、見えなくない程度です。

FVしかし、随分とウェザーチェックが入っているね。ラッカーがパラパラと落ちてきそうだ。

VMノブは4個とも大丈夫ですか?

FVときどき、60年代後期とか70年代前期のものに交換されているから、入手するときはチェックポイントだ。

FVこれが正しい60年代初期。

VMえっと、ローレットが真ん中まできている、深いタイプが初期ですよね?

FV左側が、60年代初期。右が中期以降。

FV右の方が59のノブに似ていてローレットが浅いので、ときどき間違って覚えている人がいる。

VM僕も、直観的には右が60年代初期って答えちゃいそうです。

FVポインターの角度とか、50年代っぽくてCOOLだ。

VM60年代初期のギブソンは、50年代パーツを踏襲していて萌えますね。

Firebird Ⅲ feat. 龍面:毛利夏実作

ニッケルパーツとリバース・ファイヤーバード

VMそれはそうと、ファイヤーバードのパーツって、ノンリバースになるとクロームに変更されますよね。

FV個人的な好みで言わせてもらうと、ニッケルパーツとリバース・ファイヤーバードって組み合わせは、絶妙に最強だと思わない?

VM90年代のレギュラー・ファイヤーバードもニッケルパーツに乗せ換えると、ぐっと渋さが増すんですよね。このアングル、かっこいいなあ💛

FVあとさ、良く質問されるんだけど、ヴァイブローラ・ハンドルの留めネジって、「プラスですか、マイナスですか?」って。

VMあ、それ僕も昔悩みました。両方ありますよね。

VM個人的な好みで言わせてもらいますと…

FVマネしないでよ(笑)

VM「マイナス」が好きです。

FVいまでは入手困難な、ニッケルのバンジョーペグ。ギブソンは、なんでペグのスペックを変えちゃったんだろ。試行錯誤してるよなあ。Japan Limitedのロングヴァイブローラ搭載モデルなんて、あと一息だったのに。

VM惜しいといえば、惜しいですし。次のクローズアップ画像は、失くすと困る「特殊な形状のペグ・スクリュー」です。

FVFirebirdのⅠ・Ⅲと見てきたけど、やっぱりカッコいいわ。

VM後編では、ハードケースやポットについてもクローズアップしていきます。

 次に読むなら

ファイヤーバードの歴史とヴァイブローラの役割
ファイヤーバードというギターはアメリカンロックには欠かせないモデルです。SGではおなじみのパーツ、ロングヴァイブローラ(マエストロ・ヴィブラートユニット)に注目し、この機種の変遷とヴァイブローラが果たす役割を考えてみます。

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