チッチキチーな土曜日 - SG Custom 3つの再発見 その1
レスポール・カスタムの存在感にくらべ、SGカスタムというモデルがいかに「ぞんざいな扱い」を受けてきたかを証明するかの如き出来事が2021年1月に起こってしまった。このシリーズは、筆者の私見と回顧をもとに綴った「SG Customへの贖罪」である。
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レスポールにおけるカスタムの存在感にくらべ、SG Customというモデルがいかに「ぞんざいな扱い」を受けてきたかを証明するかの如き出来事が2021年1月に起こってしまった。これは、SGマニアを自称する筆者がパーソナルに経験した“トワイライト・ゾーン”的な3つのストーリーを、私見と回顧をもとに綴った、いわゆる「SG Customへの贖罪」である。
再発見ストーリー「記憶にないSG Custom」
もうそろそろクリスマスイブだ、という水曜日の夜に、MusiMagicの吉原君からLINEが入った。「PRSのセットアップ、仕上がりました。それと、ずっとお預かりしているSG Customのリペア、どうしましょうか」
添付された画像を見る。たしかにSG Customだが、シングルPGの70年代モデルをリペアに出した記憶がない。しかも、コンディションは良さそうだ。画像を見ながら記憶を辿る……思い出せない。まあ、「百聞は一見に如かず」である。その週末は、クルマで第三京浜をひとっ走り。吉原君の工房で現物チェックだ。
FVこれ、どこ直すんだっけ…
吉原真ん中のピックアップ、音が出てないですよ。
FVそれだけ?
吉原うーん、ちゃんとフロントとリアは音出てますから、あとは配線かな。
FVいつ預けたの?
吉原FVさんが、まだ富士宮で仕事してた頃ですから、2007年頃かなあ。
FVそっか、最近だなあ。
VMぜんぜん最近じゃないですよ! 干支が一巡してますよ!
FVお、なんだなんだVM君。居たのか。
VM自分が呼んだんじゃないですか、面白そうな話だから来いって。
吉原彼、昼からずっといますよ。セラミックコンデンサーばっかりいじってます(笑)
FV仕事しなくていいの?
VMウィークデーも週末も、テレクラってやつですよ。
吉原テレワークでしょ?
FVよっちゃん、相手にしなくていいよ(笑) VM君も、いつも手ぶらじゃなくて、ケーキくらい差し入れたら?
VM持ってきましたよ、今日は。柿の木坂を通ったんで、キャトルのモンブラン。
FVでもさ、よっちゃんが覚えてるんだから、これ私のギターなんだろうなあ。
吉原eBayで買ったって言ってました。
いや、そんなはずはない。eBayなら通関申告とか輸入税納付とかあるから、価格とか開梱作業やら含めて、どこかに記憶と記録があるはず。しかし…覚えていない。本当に、私のSGなのだろうか。
これは再発見どころか「発掘」である。自分のギターであれば、なんとしても入手経路を調べなければ。
外せないピックアップカバー
VM詳しく見ながら、いじくったところをチェックすれば、何か思い出すかもしれませんよ。
吉原この年代のピックアップは、裏側からタールで凝固してあるスーパーハムバッカーだから、なかなかリプレイスメントが見つからないですよ。
FVそうか、PUを探すからって、預けたまま12年間見つからなかったって事か。
VMゴールドカバーのスーパーハムバッカーなんて、中古市場に出ないでしょ? しかもFVさんが12年探しても見つからないなら、無いですよ。ツチノコみたいなもんです。
FVPUを探すってのは覚えているのに、入手経路を覚えていないのは摩訶不思議。
吉原詳しく見ながら、いじくったところチェックすれば、何か思い出すかもしれませんね。
VMそれ、さっき僕が言いましたよ。
スーパーハムバッカーは、やっかいなシロモノだ。断線してもリペアできないし、アフターパーツで見かけないし、脚が取れやすい。
しかも、当時流行った「カバーを外してオープンにする」ことが出来ないのである。無理やりはずそうとしても、この通り「金属カバーが割れる」ぐらい強固に埋めてある。
70年代後半から80年代にかけてはディマジオの台頭もあり、ギタリストの多くが、こぞってカバーを外したから、国内外の雑誌で「ハンダを使って、愛器のPUをオープンにしようぜ」という改造特集が定期的に掲載されていた。ただ、誰も「ギブソンのスーパーハムバッカーをオープンにしようとすると壊れますよ」と忠告してくれなかった。だからこうした結末を招き、どさくさ紛れな悲劇が起こりうるのだ。
駒沢公園に持ち出して、冬の木漏れ日を生かした屋外撮影をしながら、ゆったりと「経緯」を思い出すことにしよう。めったにない「再発見」なのだから。
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