ギブソンのカタログに登場するフレイムメイプルの変遷
ヒストリックコレクションの登場以前から最近までの日本版・北米版のGibsonカタログをチェック!同社が「カタログに載せる程カッコいい」と思ったレスポールのメイプルトップを見ていきましょう。
目次
ギブソンでは長年ジャズギターのバックに採用されるような、ピンストライプの幅が揃ったメイプルが高級な素材だと考えられてきました。80年代にレスポール復刻の第1弾となるHeritageシリーズが登場すると、ギブソンのスタッフは当然のように目の揃ったAAAとよばれるメイプル材を使って高級感を演出しようとしていましたから、「もっとワイドで不揃いな、波打つようなフレイムトップは無いのか」という要望が日本からギブソン本社に寄せられたときは、当初何をいっているのか理解できなかったことでしょう。
59 Vintageの規格が持ち上がった後も、ギブソンは長い間あらゆる木目のメイプル材を使って「Vintage」「Reissue」「Classic Plus」「Historic」などのシリーズを発売してきましたが、どうもカタログやNAMMショーに展示される個体を見ると、相変わらず「スジトラ最高」のセンスは脈々と続いていたようです。
ここではギブソン社のカタログを日本版・北米版織り交ぜて、同社が「カタログに載せる程カッコいい」と思ったレスポールのメイプルトップを見ていきましょう。
1991~1998年
まずはヒストリックコレクション以前のカタログです。1991年は59ヴィンテージブームが北米にも逆上陸して、Jimmy WallaceやSam Ashのショップが盛り上がった時期です。これでもかという幅の揃った「スジトラAAA」ですね。
また一方ではHeritage 80 Eliteに見られた美しいタマメ(キルトトップ)も頻繁にカタログに登場します。鱗のような派手な柄は、Standard 82/83などでも持て囃されますが、59年当時のヴィンテージ・レスポールにはあまり見られなかったパターンでしょう。
ヒストリックコレクションという名称が登場してから少し経って、ギブソンは豪華な専用カタログを販売します。ヴィンテージ復刻を意識して作られたこのカタログは紙質も豪華でバインダータイプになっており、カラーチャートが付属していました。白黒写真のレスポール・スタンダードですが、セレクトされたトラ目はワイルドなタイガー・フレイムトップで、すばらしいチョイスですね。
1999年以降
次はいよいよ99ヒストリックと呼ばれマニアから絶賛される時期のカタログです。NAMMショーで発表された3ケタシリアルはピンクバックとよばれ、薄いフィラーやトップの丁寧なバースト仕上げはファンの目をくぎ付けにしました。その中で満を持して登場するのがこのカタログです。
タイムカプセルから抜け出してきたようなバリバリのフレイムトップ。垂涎の個体です。ハードケースはブラウンケース・キャンペーンを適用していなかった国を意識してか、ブラックハードケースになっています。そういえば、オフィシャルにブラウンスリムケースがカタログに登場するのはもっと後期になりますが、実際は99モデルの初期に、購入者が登録アンケートはがきをギブソン社に送るともれなく1台もらえるというプレゼントも北米では実施されていました。次のカタログには上品なピンストライプとワイルドフレイムがそれぞれ掲載されています。
次の写真はワイドフレイム好きの日本向けにディーラーが作成したカタログとは思えない、驚きのスジトラ復活です。しかも58モデルがFiguredとよばれFlame Top (59)と区別されています。シースルーチェリーが紹介されているのもめずらしいですね。そしてこの年はじめてオフィシャルにエイジドバージョンがカタログに登場します。この時すでに社外の人となっていた敏腕Tom Murphyの名前も見られます。
カスタムショップ専用の豪華なカタログが登場したかと思うと、一方で全モデルが紹介されている総合カタログにもHistoric Collectionが掲載されています。しかし写真のセレクションを一体誰が責任持ってやっているんだか…右上の個体を除き、このカタログを見てて「おお!ヒスコレ欲しい!」と思う人は多くない気がします。
次の2004年のカタログにいたっては「Custom Art」と謳われても、「おいおい、Classic Plusか?」という印象です。一方でUSA版は健闘していますね。
2005年は写真もマニア好みの上質なフレイムトップになっています。内側の説明ページに登場するレスポールもカッコいいですね。
2006年は原点回帰というか、ここにきてスジトラ(ピンストライプ)が再登場しますが、実はこの時期は、うねるようなタイガーフレイムが、50's/60'sというヒスコレではないグレードのモデルにふんだんに使われていました。カタログを見てもどちらがヒスコレかわからないような扱いです。代理店もこうなってくると「なにがレスポール・ファンにとっての好みか」を知ろうとせず、適当に手元にあったギターを撮影に貸し出している印象も否めません。
2007年では唐突にブラウンスリムケースが背後に登場しています。しかしこの年、店頭で販売された2007年モデルでブラウンスリムケースが付属したのはわずかな期間だけでした。
2010年以降
数あるカタログの中で最強のフレイムトップだと思います。これが嫌いな人はまずいないでしょう…といえるくらい。写真の撮り方も上手い。Player誌が組んだ特集に登場する個体もハンサムでした。
2010年にはギブソン社がトップのサンバーストに勝手気ままな名称をつけはじめファンの失笑を買いますが、さらにお粗末だったのは北米の高級ブックレット・カタログに登場する5枚の写真です。さすがにフレイムはカッコいいですが、Heritage Cherry Burst/Heritage Dark Burst/Sunset Tea Burst/Light Iced Tea Burst/Version Threeの5種類のサンバーストを紹介するギターの写真が、同じギターをデジタルで色加工しただけ。6,000ドルの楽器を販売するためのカタログでそれはちょっとお粗末な…。
最後に登場するのはPaul Kossoffモデルです。気になるのはバックに写っている塗装が剥がれた部分のマホガニーの色の明るさです。フィリピンマホガニー特有のイメージが、深刻な木材不足に悩む同社の現状を表しています。
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