カタログで見るレスポールの価値 1960~1998

ギターを整理していたらチップボードケースに収められたGibson ES-330が出てきた。ケースには当時のカタログが残されている。330は335を買えないギタリスト向けの入門機的に捉えられていたが、カタログで見るとレスポール・スタンダードと同価格なのである。

Gibson ES-330と当時のカタログ

休暇を利用して西宮の実家で倉庫を整理していたら、阪神大震災の被害を免れたギターの中から、チップボードケースに収められたGibson ES-330が出てきた。学生時代にマックスギターギャラリーでYASUDAさんから購入した、ワンオーナーの逸品である。ケースにはストラップやタグ、当時のカタログやピッチパイプ、弦などがそのまま残されている。このカタログには「May 1960 Printed in USA」とあり、筆者の生まれた年の同じ月であったこともあり、大切に保管している。

表紙のイラストは何とも味のある筆書きで、後年登場するフルカラーのバージョンからみると、いかにもショップ向けのような印象が強いが、高級紙を使った分厚い重量感のある作りは、当時ギブソンの製造販売する楽器が贅沢で高価なものであったことをうかがわせる。

ES-330は80年代にはヴィンテージギター・マーケットで「Poor Man's 335」という有り難くないニックネームを与えられ、335を買えないギタリスト向けの入門機的に捉えられていたが、実際このカタログで価格をみると、2ピックアップ・モデルが265ドルとなっており、同じ時期のレスポール・スタンダードと同価格なのである。

1960年のES-330の価格

1960年のレスポール・スタンダードの価格

お父さんと一緒にFordに乗って、楽器店の店頭で「このギターがいいなあ」とねだる青年にとって、この一瞬にES-330を買うかレスポール・スタンダードを買うかが、よもや50年後に宝くじを当てるような金額の開きになるなど、思いもよらなかっただろう。ちなみに近年、美しいトラ目のレスポール・スタンダードが3,000万円だったとすると、ES-330が高額でも30万円前後であるから100倍の開きである。もちろん、その時に自分の欲しいものを買うことが大切だから結果は運でしかないのだが、わかっていても例え話としては強烈だ。

ギブソンが気合を入れてヒスコレのカタログを製作したのは1998年。日本では代理店がマニア向けにカタログを数千円で販売するというフィーバーぶりだった。表紙の紙質は当時を復刻しているかのごとく高級感が漂い、エンボスマークも美しい。

エンボス加工が美しいヒスコレのカタログ

内側が白黒なのは賛否両論あったが、当時を意識したとしたら、なかなか凝っている。ファイヤーバードなども掲載されていたためか、カラーチャートが別紙で付属しているのである。

ギブソンのカタログに付属していたカラーチャート

ギブソンはヒストリック史上最も重要なスペック変更を1999年に敢行するが、その1年前にこのように重厚なカタログを製作していることは、同年のNAMMショーに向けたレスポール・スタンダード復刻プロジェクトへ傾向してゆく前哨戦にも思える。

ギブソンのカタログの歴史

以降ギブソンは定期的に美しく高級なヒストリック・コレクション用カタログを頒布してきたので機会をみて紹介していきたい。

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