デラックスな奴ら 後編

ミニハンバッカーから繰り出される、絶妙なウーマントーンが再認識され、近年もっとも価格が高騰したヴィンテージのひとつと言われる「Les Paul Deluxe」。ギブソン社が満を持して復刻していることからも、プレイヤーやコレクターの間で話題になる機会が増えています。

1990年初期の雑誌広告手の届きやすい価格

発売当初の70年代は、「プアマンズ・スタンダード」などと揶揄されることも多かった「Deluxe」を前・中・後編の3回シリーズでご紹介してきましたが、実際に「ステージで使っているのをあまり見ない」という印象、ありませんか?

筆者が個人的に印象に残っているのは、「The Who」のギタリスト、ピート・タウンゼントの改造Deluxeです。

センターにフルサイズ・ハンバッカーを後付けしているあたり、常人にはなかなか理解しがたいサウンドを追求している印象がありますが、Peteは同時期に同じスペックの改造デラックスを複数台所有していたので、よほど気に入っていたのでしょう。

Gibson社からは、これまでワインレッドの#1、ゴールドトップの#3、そしてチェリーサンバーストの#9が復刻されています

ご機嫌なDeluxeサウンドが聴けるのは、クリエイションの竹田和夫さんが、タバコロードのライブ(YouTube)でピックアップ・プレートが付いたチェリーサンバーストを弾いている動画です。そうそう、レフティ・ベーシストの松本繁さんもEBベースで、熱い重低音をだしてますよね!

余談ですが、当時この放送を見ていた私は、竹田さんの使っている太目のカッコいいストラップがどうしても欲しくて、何度も何度も梅田のナカイ楽器や三ノ宮のミナト楽器、元町のロッコーマンを、行ったり来たりしました。

ギブソンのカタログに掲載されている右の太いストラップは、レザーが黒いんですが、竹田さんのはライトブラウンっぽいんですよね。で、探し回って高校を卒業したころころに、ロッコーマンの中村さん(故トーラス・コーポレーション社長)から、自宅に電話をいただいて、「アメリカから輸入したギターのハードケースに入ってたよ。探してたでしょ?あげるよ」って。

学生時代の宝物って、Pricelessですよ、ほんと。

そもそも、デラックスって、スタンダードと比べてどれくらい安かったんでしょう。同時期の日米のカタログで見てみましょう。

ふむふむ、Standardが233,000円、Deluxeが218,000円
価格差は、約6.9%です。
アメリカではStandardが749ドル、Deluxeが699ドル
価格差が、約7.2%でした。似たような差ですね。
ちょっと意外だったのは、Pro Deluxeが789ドルの値付けで、高いんですよ。
90年代初期の中古市場では、Pro Deluxeは微妙な値付けですが、メイプルネックが好きなギタリストには、これ以降「メイプルネック+P-90」って、出ていないので、持っておきたい一本だと思います

VMということで、Deluxeの3回シリーズを締めくくってください。

FV「ということ」って、どういうことで、締めくくるの?(笑)

VM70年代のレスポールって、そのあと80年代にHeritage Seriesとか、59Vintageとかオールド・ギター(古い表現で恐縮です)復刻の狼煙があがるので、なんとなくコレクターの方たちからハブられてきた印象あって。

FVそんな気がするだけじゃない? ちゃんとGibson本にも掲載されているし。

VMこの2本のセレクトは、編集者のコダワリを感じますね。71年のPUプレート付きと、生産台数が極小のスパークル・レッド。

FVスタンダードがハンバッカーで復活するまでは、Deluxeがギブソンにとっては稼ぎ頭だったようだ。当時のカタログでも、しっかりとクローズアップされているからさ。

VM僕自身はリアルタイムじゃないので、なかなか印象がないですよ。最近、70年代初期のゴールドトップDeluxeは、手が届きにくい価格になっちゃったので、注目していますけど。

FVそうだね、案外「リーゾナブル価格で手に入るとき」には、気にしてなかったモデルかも。

VMこれで、締めくくって終わりだと、読者の方から「なんだ、広告とカタログの紹介だけか」って、叱られますよ。

FVチコちゃんみたいに、言わないでしょ。わかったよ。これでどうよ。

VMおー、Gruhn Guitarsの在庫リストだ。1993年かあ。アトランタ・オリンピックの前年ですね。よく持ってますね。

FVLes Paulは76年のDeluxeが675ドル。Standard 80 Heritageは1,350ドルで販売されているから、Heritage 80で、Deluxeが2本買えるな。

VMまたそんなこといって、大根じゃあるまいし(笑)

FV他にも、SGとかFirebirdが在庫されているので、垂涎だね。

FVこんなカタログもあるよ。当時はGibsonの輸入元が荒井貿易・神田商会・YAMAHAの3社あって、それぞれ別の販売ルートだったから、カタログも分かれていたんだ。

VMよく見たら、Standardの値段が、YAMAHAと荒井貿易で違いますね。YAMAHAはハードケース込みだったのかなあ?

FV複雑な時代だったんだろ(苦笑)

VMそんなLes Paulの70年代をさらに複雑にしている、カタログの解説文を見つけましたよ。

FV随分、嬉しそうだな。どれどれ。おおおお。

FV「カスタムの標準モデル」とか「大きなハンバッキング2ピックアップ」とか「デラックスを基礎とした製品」と書いてあるが、スタンダードって、そんなポジショニングだったのか、YAMAHAは…。

VM受難の時代…ですかね。

FVこの2台を比較したら、Pro Deluxeを買っちゃうな、多分。

VM最近思うんですけど、2000年初期のLes Paulって、レギュラーモデルでもすごく品質高いし、手が掛かってますよね。ヘッドストック貼り替えて、セブンティーズっぽいチューンナップするのって、楽しくないですか?

FVそうだね、当時のつき板、沢山残っているから、近々「70年代なDeluxe」とか銘打って改造企画やろうか。

VM最後になりましたけれど、「Gibson本」で、著者が「なぞのミニハム」って書いているピックアップは、これですよね。

FVそうそう。これ。あれで紹介したよね、あの時。

VM小田和正さんのヒットソングの歌詞みたいになってきたので、終わりましょうか。

FVそうだね、あの日・あの時・あの場所でね(笑)

この時は、DeluxeとPro Deluxeは、ともに294,000円の同価格。Pro Deluxeは、「シングルコイル・ピックアップ付きデラックス」らしい。さらに、Deluxeは、「普通とは一味違う小さめの…」って、写真を見れば分かることだけ書いてあって、なんだか、愛が感じられません(笑)

やっぱりタイムマシンが欲しい。ワインレッド、いいなあ。

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