Vintage Zemaitis その2 - Scull vs Dragon
独特の美意識が漂う「Made in England」の至宝「Zemaitis」を紹介するシリーズの第2回。今回ご覧いただくLP Shapeの髑髏インレイ・モデルは、宇崎竜童さんのファイティング80でステージに登場した1979年製のカスタム・オーダー品です。 「トニー・ゼマイティスのハンドメイドギター」を、ギタリストやコレクターの皆さん、そしてギターを愛し製作家を志す若者たちすべてに楽しんでいただければ幸いです。
VM (Vintage Maniacs)めずらしいですね、Vintage ManiacsでZemaitisを取り上げるのって。
FV (Fukazawa Vintage Club)第1回のフライングVに続いて2本目だね。
Vintage Zemaitis その1 - V vs V
2023.11.17
FVこれまでも、BC Rich、BurnesとかGretsch、Bozoなどのギター・ベースを取り上げてきたけれどそれぞれに、70年代や80年代を反映する時代のサウンドやスペックがあって、奥が深かった。
VMあらためて、70年代を振り返ると、ギターメーカーも個人製作家も、悠々と気ままに好きなギターを作っている感じがするんですよね。
FVいっぽうで、今ほどいろんなパーツが個別に買えたり入手できる時代ではないから、ピックアップがディマジオだったり、ブリッジとかテールピースがドイツや日本製だったり。
VMこのZemaitisも、デュアルサウンドが2基搭載されています。
FV当時、一世を風靡したからね、ディマジオは。音もすごくよかった。
VM僕のZemaitisの印象は、彫金されたアルミプレートが貼られたメタル・トップや、白蝶貝が一面に貼ってあるシェル・トップです。今回のような、インレイのモデルは、キース(リチャーズ)の愛器以外では、あまり見たことがないような。
FVまあ、ドラゴンやスコーピオンをモチーフにした、シェル・インレイの逸品もあるから、順番に紹介していくよ。
VMだらだらと、自慢話や蘊蓄を披露しないでくださいね。
FVう……。これぐらいなら良いかな?
VMさすがに、英国製ギター。後ろのジャガーが映えますね。
FVトニーも愛車はジャガーだったから、似合うと言えば似合うね。ブリティッシュな雰囲気だ。
VMドラゴンといえば、インレイ以外にメタルプレート搭載のモデルもありましたね。
FVまあ、一番有名というか皆さんの印象に残っているのは、ロン・ウッド愛用のラウンド・ディスクと呼ばれる、このタイプかもしれないね。ただ、製作本数は圧倒的にすくなくて、ほんの一握りだ。
VM宇崎(竜童)さんの、髑髏モデルに戻りますが、ヘッドプレートがTop Gradeの槍型なのに、ブリッジとテールピースはStandard仕様の日本製ですね。
FVそこはね、グレードだけの差じゃなくて、実は削り出しのブリッジよりもABR-1タイプの方が良いっていうオーダー主もいたみたい。
VM実用性考えると、一長一短ありますからね。
FV順番に見ていこうか。
VMこの髑髏インレイ、ステージでみると無茶苦茶カッコいいのに、近くでクローズアップすると、お茶目です。赤い目玉が、笑っちゃいますね。
FV遠くから見る印象と違うけど、上手く「ステージ映えする」ように、デフォルメしてるのが、分かるね。サーベルのハンドルは、ヒスイっぽくグリーンのインレイが施されていて、デザイン性に富んでる。細かいところは、細かい。
VM僕が感心したのは、「あまりディテールはどうでもよくて」っていう姿勢でしょうか。ほら、このボディのライン。普通、インレイとかバインディングしますよね。
FV塗ってるだけ? めんどくさかったんだろ? それか、締め切りギリギリだったとか。
VMうーん、屈指のコレクターが放つ前代未聞の無責任コメントだ。今年のワースト発言トップ3入り、間違いないなあ。一応掘ってから黒く塗ってるみたいですよ。
FVマジックで描いてるだけかと思った(笑)
VMバックプレートは丁寧にアルミプレートを削り出しています。
FVTonyの場合、オーダー主からの「小遣い貯まったから、彫金入れたい」という、後々のオーダーにも対応していたから、そのためにも、アルミにしておくって感じかな。
VM配線は、相変わらずゴチャゴチャしています。
FVそうだね、表からみると、トグルスイッチとミニスイッチのレイアウトは、非常に分かり易い。でも、キャビティー内はカオスだ。
VMこの「秋葉原のラジオ会館で売ってるような、メタルノブ」、いかがですか?
FV高校生の頃は、なんとなく「拾ってきたパーツ?」みたいな、失礼な(笑)印象をもっていたが。
VM今、こうして見直してみると……。
FVデザイン的に、完璧だね。
VM…本当にそう思っています?
FVふふふふふふ。
Zemaitis談義は尽きません。トニーの作品には、一本一本にギタリストと製作家がやりとりした、布石のようなものが色濃く反映され、特にこの時代(特に70年代から80年代初期)の作品は、オリジナリティを楽しんでいる遊び心が伝わってきます。カッタウエイの裏側や、ネックジョイントにも、製作家の息吹が感じられ、トニーが終始「マチエールを大切にした」アーティストであったことが分かります。
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