Vintage Zemaitis その1 - V vs V

独特の美意識が漂う「Made in England」の至宝「Zemaitis」を紹介するシリーズの第1回。今回ご覧いただくフライングVは1982年にNick Wood氏のオーダーで製作されたカスタムオーダー品です。「トニー・ゼマイティスのハンドメイドギター」をギターコレクターのみならず、ギターを愛し製作家を志す若者たちすべてに楽しんでいただければ幸いです。

カスタムメイド・ギターにおける、唯一無二のトップ・ブランドとして、ミュージシャンの創作意欲、コレクターの所有欲、すべてのオーナーの自己顕示欲を満たして余りある満足をあたえてくれた英国のギター製作家「トニー・ゼマイティス」。彼の作品に触れると「木部は木の質感、金属は金属らしく、そして白蝶貝はシェルの手触りが使い手のギタリストに伝わる、有機質なハンドメイド楽器」であると感じるでしょう。素材を素材らしく使う。トニーは生涯を通じて「マチエール」に対する思い入れを大切にした製作家でした。

このシリーズでは、いわゆる楽器の範疇にとどまらず、ロックスターの嗜好品として、金銭的価値以上の永遠のValueを持ち続け、すべての音楽ファンを魅了する「トニー・ゼマイティスのハンドメイドギター」を、ギターコレクターのみならず、ギターを愛し製作家を志す若者たちすべてに楽しんでいただければ幸いです。

ご覧いただいているフライングVは1982年にNick Wood氏のオーダーで製作されたカスタムオーダー品です。「トニーはVシェイプを一本だけ作った」と言われていますが、同じシェイプのフレイムトップVが、もう一本現存しています。

こうして、ギブソンのコリーナVと並べて比較すると、随分とゼマイティスのボディが大きいのが分かりますね。そして、ボディ同様に、ヘッドストックも随分と長細く、大き目のロッドカバーと合わさって、ステージ上でも、しっかりと目立ちそうです。

1982年といえば、フィリップスとソニーが共同して上市したCD(コンパクトディスク)が衝撃的な出来事でした。これまでの真っ黒い大きなレコードと違い、小さくてキラキラしていて途中でB面にひっくり返す必要のない円盤です。確か、ビリー・ジョエルやABBAのアルバムが最初に販売されたと記憶しています。横に並んでいるコリーナのフライングVをギブソンがヘリテージシリーズと称して復刻したのも1982年ですから、1959年にVシェイプのギターが登場して20年後に、遠く離れたミシガン州(USA)とケント州(England)で、Vボディの製作に取り組んだメーカーとビルダーが同時に存在したということですね。

では、細部を一緒に見ていきましょう。

ボディがすごく分厚いですね。この厚みと全長をみると、とてつもなくヘビーなギターに思えますが、実際にストラップをかけて抱えてみた印象は、意外に軽くて驚かされます。トニーは、実用性を重視する人でしたから、ライブ演奏の機会が多いカスタマーには、このようにサイドジャックを勧めることが多かったようです。ステージで演奏中に長いシールドを誰かが踏んだ時に、スポっと抜ける様に、つまり、トップジャックだと、インプットジャック周辺を割ったり壊したりすることがありますが、そうならないよう、ギターを傷つけないよう、配慮していたのですね。

さすがにこのボディ厚ですから、ジョイントの段差もごっついです。レスポールよりも厚みがあるかも。

ボディはセンターオフの3ピース(黄色の矢印部分)になっていて、トニーの標準スペックです。バックのアルミカバーには、シンプルなエングレイヴが入れられています。

ボディ厚の比較をもう一度ご覧いただきましょう。

この部分だけみると、とんでもない事になっている気がします(笑) オーダー主はギターが手元に到着したときは、持ち上げて弾き始めるまで、さぞかし驚いたことでしょう。

ガルウイング調のフレイムが飛翔のイメージ

トニーは、キャビティを彫るときに糸鋸を多用するので、こうした切込みの跡がついてます。手作業らしく、見えないところは豪快です。

そして、配線は…というと、ビニールカバーのワイヤーをよく使っているので、お気に入りだったのだと思います。ポットやセレクタースイッチが薄いトップのメイプルを突き破らないように、アルミのプレートをかませてあるのが、ご覧いただけるでしょうか。

外観の美しさとダイナミックさに比して、こうした実用的なアイデアと配慮は、「ロックスターのツアーに同行するスタビリティを求められたハンドメイドギター」としてのトニーのプライドが見え隠れして、感嘆します。

私がトニー・ゼマイティスのギターと出会ったのが学生時代ですから、随分と多くの月日が流れ、いつのまにか、Zemaitisもヴィンテージ・ギターと呼ばれるカテゴリーに入ってきたわけですが、独特の美意識が漂う「Made in England」の至宝を、これからも少しずつ、皆さんにご紹介できればと思っています。

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