ギブソンのヘッドストック・ロゴ用ウォータースライド・デカール
50年代のギブソン社では生産工程で手間暇のかかるシルクスクリーン・プリントが用いられていました。70年代になってソリッドボディ・ギターの生産数量が格段に増えてくると、ギブソン社でも合理化のためにヘッドロゴのデカール化が進みます。
50年代のギブソン社では、同時期のフェンダー社がウォータースライドとよばれるデカールを多用していたのに対し、生産工程で手間暇のかかるシルクスクリーン・プリントが用いられていました。レスポール・スタンダードや、スペシャル、ジュニアのヘッドには、ご存じの通り「Les Paul」の文字がゴールドで印刷されています。
70年代になってソリッドボディ・ギターの生産数量が格段に増えてくると、ギブソン社でも合理化のためにヘッドロゴのデカール化が進みます。これは廉価版のギターに採用されたということではなく、SGジュニアからレスポール・スタンダードまで、全般にわたる仕様変更です。次の写真はギブソンのカラマズー工場が閉鎖されたときに、退職者が持ち帰ったレフトオーバーパーツです。
一般にウォータースライド・デカール(水転写デカール)というと、水につけてロゴ面をスライドさせる印象がありますが、それらは主にリペア用のリプレイスメントパーツです。オリジナルはギブソン社もフェンダー社もリバースタイプを採用しており、台紙の裏側には位置決めのパターンとパーツ番号が印字されています。
今回は70年代初期の純正デカールを見ていきましょう。まず「Les Paul」の文字ですが、これはシルク印刷の時から少し字体が変化します。ゴールドの外周は文字に沿って丁寧にトレースされているので非常に細かくゆがみやすくなっています。リバースでなければ工場の生産ラインで短時間に正確な位置に貼り付けられません。
「Gibson」のロゴも、この頃からシルク印刷をやめリバースのデカールに置き換わります。
これらのデカールは90年代後半まで形状や色は変化しつつも、基本的にはリバースタイプが踏襲されています。画像は90年代の純正デカールで、70年代同様台紙の裏面に位置決めのパターンが印刷されています。
ギターの生産台数が急激に増加するとギブソンは一計を講じ、シリアルナンバーとモデル名を同時にヘッド裏側にデカールで貼り付けることを思いつきます。もちろんシリアルは一台一台ユニーク(追番)ですから、同じデカールは存在しません。
このデカールを作成していた「The Meyercord Co.」は、当時北米で幅広くインテリア・内装用から装飾用までウォータースライド・デカールを製造販売していたメーカーで、現在でもコレクターやマニアの間で美しいパターンのデカールが取引されています。
ギブソン社のロゴやデカールはパターンも多く、研究対象としては大変奥深いものです。たとえば次の画像のデカールは初期のギブソン社カスタムショップ製ギターに貼り付けられていた純正デカールですが、リバースではなく正像になっています。貼り付ける箇所がネック裏のボリュート部分で曲面であるためでしょうか。
最後の写真で左下に見える白いシールなど、今後もギブソンのロゴにまつわるお話を、当時のパーツを見ながら考察していきたいと思います。
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