2004年のGibsonカタログ(後編) - モノによる記憶の解凍
前後編の2回でお届けする、2004年のギブソン・カタログ紹介企画の後編。復刻フライングVのなかで、もっともリーズナブルで高品質なモデルや、ジャズギターの最高峰Citationの復刻が目を惹きます。新しいコンセプトのSG「SG Elegant Quilt」もご紹介。
目次
高品質でリーズナブルな復刻フライングV
VM(Vintage Maniacs)うわあ、萌えますねえ、このカット。アイドルのステージを最前列で下から観ている気がします(笑)
FV(Fukazawa Vintage Club)なんだなんだ、藪からスティックに。後編は君と一緒に解説するのか。しょっぱなから下ネタだな。
VMいやそうな顔しないでくださいよ。今回はCustom Shopにひとこと言いたくて。
FV本題にいこう。ギブソンの復刻フライングV史上、もっとも高品質でリーズナブルな価格なのが、これだ。
FVこの大きさで、67年当時と同じマホガニーワンピース仕様。しかも、すべての個体が軽量なので、持ってる人は手放さないほうがいいね。確か山野楽器が代理店だった時代の標準小売価格50万円をちょっと切るぐらいだった。4色あるけど、人気なのは圧倒的にチェリーだろう。
VMあとで出てくるLenny Kravitzモデルって、このシリーズの売れ残りをラメ塗装したんですよね?
FV知らんよ、そんな事。知ってても言わんよ。カタログのスペックに「ボディは1ピースです」とは書いてないね。一番のアピールポイントなのに。
メイプルネックのザック・ワイルド・モデル
VMちょっとページが前後しましたけど、せっかくZakk Wyldeモデルも紹介されているので裏話を。
FVそういえば、このシリーズはメイプル3ピースネックを採用しているので、工場でレフトオーバーネックを廃棄しまくってた。手元にも何本かあるから今度紹介するよ。
VM流用できなかったんですね、メイプルネックって…。
FVヘッド裏にザックのトレードマークがプリントされてたから、なおさらだよ。
VMってことは、ザックモデルって結構雑誌で華々しく取り上げられた割に、生産本数と流通量が少なかったんですね?
FV持ってる人、知ってる?(笑)
ファイヤーバードとジャズギター
FV話題をカタログに戻そう。次はファイヤーバードだ。Ⅰ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅶまで網羅したのはいいが、私なら、Ⅰ=サンバースト、Ⅲ=カージナルレッド、Ⅴ=ポラリスホワイト、Ⅶ=ゴールデンミストを選ぶかなあ。
VMカラーの選択肢が沢山あるわりに、誌面はオーディナルな印象を受けますね。
FVジャズギターは最高峰のCitationが復刻されているのが目を惹く。
FV昔、大学生時代にヤスダ先輩の紹介でお会いした津村さん(津村昭氏、バンジョー・ジャズギターのコレクター)が「三ツ井君、俺は世界中のCitation、18本を全部コレクションしたいんだよ。カラマズーアワードもね」って、おっしゃっていた。復刻されたのを聞いたら喜ばれたと思うよ。
VMFVさんは、当時梅田のナカイ楽器に、カラマズーアワードを眺めに、なんども阪急電車に乗ってたんですよね?
FVまあ、ギター関係で通うお店はほとんど神戸だったので、大阪に行くときは「昭和町のエクスプローラー」か「古書の街のカラマズーアワード」を眺めにね。
VMひとつ聞いていいですか? なんでドットの335がサンバーストじゃなくてブラックなんでしょう。
FVたしかに、カタログのどこにもサンバーストのES-335が出てこないね。この次の年ぐらいに「ラリー・カールトン・シグネチャー」で、ロッドカバーにMr.335と彫られたブロックインレイのサンバーストが出るんだけど、ドットのバーストが無いのは物足りないね。
魔法は無い。とにかく技能と忍耐の賜物だ
VMこの写真は何してるところですかね?
FV英文を読むと、2ピースのブックマッチを接着して固定しているクランプのようだよ。ただ、ボディのマホガニーだとわざわざ「ブックマッチ」とは書かないだろうから、たぶんレスポールのトップだろうね。
VMここでも「情熱もって作業してますぜ」って。「魔法は無い。とにかく技能と忍耐の賜物だ」と。
FVいい言葉だね。しかし、現場がどんなに一生懸命真面目に良いギターを作っていても、マーケティングがこけると「チャプターイレブン適用(Chapter11:連邦倒産法第11章)」みたいな悲惨な結果になっちゃうから、製造業って難しいなあ。
マニア垂涎のシグネチャーシリーズ
VMジミー・ペイジ・レスポールと、スラッシュ・レスポールは、このあと完成度の高いヒストリックコレクションが発売になるんですが、2004年時点ではマニア垂涎です。
FVとくにスラッシュのモデルはブラウンサンバーストとか見た目もいいけれど、フィッシュマンのパワーブリッジ搭載が評価できるね。
VMなんといっても、「よくぞやってくれました」的な存在は、アレン・コリンズ・モデルのエクスプローラー。わざわざストップテールピースのアンカー穴を開けて、あえてショートヴァイブローラを載せている。こだわりですね。しかし、スプーンハンドルといい、アレンビックみたいなブリッジといい、よく探してきましたよ。
VMトニー・アイオミ・モデルに至っては、誰が商品企画をしたんだか…。
カスタムショップとPro Shopライン
FVカスタムショップは、ヒストリックコレクションとしてヴィンテージ復刻を謳うだけでなく、ちゃんとインレイやバインディングなどで豪華に演出したギターを発表している。それが、Class 5とかUltimaのラインナップだ。
FVLes Paul Elegantのキルトトップは、昔のStandard 82を想い出させてくれる。
VM前から感じてたんですが、Gibsonのダブルネックって、ヴィンテージでは「4弦ベース+6弦ギター」や「6弦ギター+マンドリン」など、いろんなバージョンがあったのに、いまでは普通に「6弦ギター+12弦ギター」になっていて、つまらないです。
FV普通にSG StandardとEBを買ってくっつけるほうが、カスタムショップにオーダーするより早くて安いぞ。
VM吉野家じゃないんですから、早くなくていいんですが…。
FV最後に、Pro Shopラインという、自動車でいうところのプロ・チューンナップ的モデルが堂々と紹介されている。許せるのはアメリカンフラッグのダブルネックぐらいかなあ。
VMとにかく「アウト」なのは上段の真ん中ですね。
FVやっちゃった事は仕方ないので、工場で情熱かけてカスタムショップを支えている人たちの真剣な表情を見ながら今回はおしまいにしよう。
VMまたカタログ特集やってくださいね。
SG Elegant Quilt
FVあ、そうそう忘れそうになってた。この「SG Elegant Quilt」は、「Supreme」にも通じる新しいSGのコンセプトだ。覚えておいてほしいモデルだね。
VMあ、これですね。このところレスポールのラインナップ拡大に気を取られがちですが、SGって多種多様なことをやってて相変わらず楽しいっす。
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