ギブソン マローダー - 70年代Vヘッドのマーベリック
ギブソンの新しいエレキギターへの探求は、1970年代にピークを迎えます。従来のギブソンでは考えられないようなスペックを採用し、ファンの度肝を抜いた時期でした。その中でも特異な仕様と美しいデザインがあいまって異彩を放つギターがマローダーです。
目次
70年代のギブソン・ギター
ギブソンの新しいエレクトリックギターへの探求は、1970年代にピークを迎えます。さまざまな電子部品を駆使したサーキットや、強烈な出力のハムバッカー、デタッチャブルネックやメイプルフィンガーボードなど、従来のギブソンでは考えられないようなスペックを採用し、ファンの度肝を抜いた時期でした。
KISSのポール・スタンレーの使用でも有名なマローダーは、その中でも特異な仕様と美しいデザインがあいまって異彩を放つ素敵なギターです。
当時のカタログに掲出されている価格は187,000円ですから、それでも廉価版と呼ぶには高額ですね。
フライングVっぽいヘッドとGibsonロゴの謎
ヘッドから順番に見ていきましょう。
おお、ヘンテコなフライングVだ!と思ってはいけません。当時は、かなり真剣にVヘッドを追及していて、他にもベースでこんな感じのヘッドデザインが登場しました。長年の謎なのですが、当時500円も出して購入したこの「高級カタログ」に載っているマローダーのヘッドロゴ、実物とずいぶん違うんです。
典型的なノーリンロゴもアールデコなデザインで好きなので、通常のGibsonデカールロゴ以外にこのデザインが実際にあったのなら、ぜひコレクションに加えたい…と思って早30年。それと、ロッドカバーで奇妙なデザインを発見。ヨーロッパ仕様か何かでしょうか。知っている人がいたら、ぜひ情報提供願います。
ヘッドストックは、ナチュラルのフライングVっぽくメタル・トライアングルのクルーソン搭載です。
ノーリンロゴではなくダブルラインですね。
シリアルは、あらかじめデカールに印刷された楕円形のものが貼付されています。
同じ時期のレスポールやファイヤーバード、RDなどと共通ですね。フィンガーボードはローズウッドとメイプルが選べました。
秀逸なデザインのピックガード
ピックガードのデザインが超素敵です。SGのワイドピックガードもそうですが、絶対にフリーハンドと記憶だけでは描けません。複雑なのに自然。流れる蔦のようなしなやかさがあります。これをデザインした人は天才ですね。
いろんな角度から、その曲線の秀逸さを見てみましょう。
左肩はトグルスイッチを付けたかったのでしょうか、かなり上がっています。大阪万博のモニュメントからインスパイアされたのかも。万歳した太陽の塔の両手のようです。
右肩にはカッティングの際に邪魔な位置にわざわざスイッチをもってきて、レスポールとの違いを誇張していますがこれは失敗。実に使いづらい。
でもまあ、そんなことは置いておいて、とにかくカーブが美しい。
さらにピックアップもアッセンブリーも全部のっけてしまって、ボディエンドまでピックガードが伸びているのに、ストラトっぽさが無いのがすごい。普通はどんなギターも、これをやるとストラトなどのフェンダー系に似てくるのですが…。
デタッチャブル・ネック
ネックはデタッチャブルなので、プレートが付いています。
そういえば60年代にKalamazooブランドで出していたギターにも、こんな長方形のプレートが付いていましたね。見るからにちゃっちいですが、ちゃんと機能は果たしています。
マローダー特有の先進的なピックアップ
ピックアップは独特ですね。まさにマローダー専用にデザインされたフロントとリア。
とくにリアのバータイプは、後年にコンセプトをまねたピックアップがいろんなメーカーから登場するほど先進的でエポックメイキングでした。そういえば、SGメナスとかに搭載されていた、ポールピースが調整できないクリアボビンのピックアップは、なんとなくマローダーのピックアップに似ている気もします。
極め付けは、ワイドトラベル・チューン・オー・マチック・ブリッジです。これを見ただけで70年代のノスタルジーが漂うわけです。
最後はピックアップ・キャビティです。これだけ大きなピックガードだと、SGのように相当適当なルーティングをしているだろうな…と想像していましたが、豈図らんや、しっかりとタイトなんですねえ。
意表をついてきます。ニクイです。
そしてピックアップの裏側。なんと3点止め。
このアングルだとマスクを外した鉄仮面みたいでCool。こんなデザインができたもの70年代ならではだと思います。とにかく大好きな曲線満載のマローダー、機会があったらぜひ手に取ってみてください!
YouTubeでファンキーなマローダーのサウンドを見つけたので、よかったら見てね。
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