漆黒の美しさ - 7610 Roc JetとLes Paul Custom (後編)

Gretsch 7610 Roc JetとGibson Les Paul Custom、2本の黒いギターに注目したシリーズの最終回。今回はレフティのレスポール・カスタムの、ブラックライト対応塗装のレストレーションを中心に見ていきます。

VM (Vintage Maniacs)前・中・後編3回シリーズの最終回なので、レストアからやみクロまで、レアなLeftyのCustomを堪能していただきましょう。

FV (Fukazawa Vintage Club)Roc Jetは、どこいっちゃったんだ?

VMそういえば、「Daisy Jones and the Six」のサタデーナイトライヴ演奏シーンに出てくる主人公のGreatchを「70年代のRoc Jet」って記載してますけれど、あれ明らかに間違いですよね。

FV勉強不足ってヤツだな。でも、今回の70年代Roc Jetを弾いてみて、Gretschのイメージが変わったよ。ロック・サウンドの王道っていうか、ボーカリストはテレキャスかこれ持ってツアー廻れば、他にギターいらないかも。

VMまたまた、極論を…(笑)

FVとにかく、日本製の復刻版でもいろんなスペックが出ているので、店頭で見かけたら取り敢えず手に取ってみるのも良いよね。

VMでは、本題に戻りまして、Les Paul CustomのLeftyです。

FVレストアからいこうか。

VMペグの穴埋めからスタートして、オーバーラッカーされている補修部分の塗装チェック。穴埋めが完了したら、ブラックライト対応の塗装ですね。

左右にスワイプ(ドラッグ)で画像スライド

FVこれが結構難儀したらしく、結局一度、もとの塗装も剥いで、根本的に塗り直すことに。

左右にスワイプ(ドラッグ)で画像スライド

FVで、完成…と思いきや、塗料の粒が太陽光で目立つことが発覚。もう一度最初から。

VM気が遠くなる丁寧な作業工程ですが、よくこんな仕事を受けてくれましたね。

左右にスワイプ(ドラッグ)で画像スライド

FVいやあ、ほんと。いつもながらに感謝していますよ、レストーラーのT.M.さんには。

VMうわ、こんな埋め木で補強してたんですね。

FVで、もう一度ラッカーと調合して、塗装して完成。見事にマッチしたブラックライト対応塗装&ヘッドストックKLUSON対応レストレーションでした。

左右にスワイプ(ドラッグ)で画像スライド

VMで、完成しました。まだパーツを載せてないので、とりあえずやみクロは、レストレーション前の状態でパーツチェックです。

FV楽しそうだね、やけに。

VM70年代って、復刻されていないパーツが多いから、チェックしがいあるんですよ。勉強の上でも。

FV読者の方々にも分かり易くポイントをクローズアップしていこう。

ブリッジはゴールドのABR-1。この時代のモデルは復刻されていないですね。
サドルは本来ブラス製のフラットヘッドなので、この個体は交換されているっぽいです。
ABR-1スクリューの形状とサドルのスダレ模様

ABR-1スクリューの形状とサドルのスダレ模様

2018.3.23

Pat Number入り70年代までの特徴は、DJマークが入っている点。
トグルスイッチって、じっくりクローズアップで見る機会が少ないですよね。ちゃんと「SWITCHCRAFT」って刻印が入ってました。
ABR-1のポストとエレベーションリングは、コンディション良く残っています。

FVこのアングルだと、スイッチがトップのメイプルに当たる部分を、二段彫りしているのが分かるね。

VMなんで、こんな面倒くさい作業やってるんですか?

FVそりゃ、なんてったって天下のGibsonだからさ。

VM答えになってませんよ、そのセリフ(苦笑) あと、このあたりのワイヤリングって、レプリカでも再現している個体、少ないですよね?

FV近年では、ハーネスとかCapacitor、ポットの希少性が認識されているので、ヴィンテージギターショップのお話を伺っていても、オリジナルパーツかどうか、気にするコレクターが増えたそうだ。

VMそれはそうですよね。ギターは木部・金属パーツ・サーキット、すべてがサウンドの構成要素ですから、せっかく手に入れるヴィンテージなら、ポットやワイヤーまで、オリジナルが嬉しいです。

FVテールピースは交換されているよ。

VMいっぱいストック持ってるから、戻せばいいじゃないですか。

FVいや、これは大切な人の形見だから、このままで。

VMあと、気になったのは「Les Paul Customはフレットレスワンダー」と呼ばれている割に、この個体は、フレットがスタンダードのように、しっかりと高さ・太さがありますね。

FV最近、観察力が鋭くなってきたね。ちょっとまとめっぽくなるけれど、さっき話していて「復刻されていないパーツ」でいえば、整理すると次の通りになる。

① Patent Number DJのABR-1

② フラットヘッドサドル(これはVintage Maniacsが2019年に限定復刻しました)

ABR-1用フラットヘッド・ブラスサドルの復刻

ABR-1用フラットヘッド・ブラスサドルの復刻

2019.12.13

③ Patent Number刻印ベースプレートのハムバッカー

④ 70/596、M-8の脚無しピックアップリング

⑤ 彫り込みの「Les Paul Custom」ロッドカバー

VMこうしてパーツを見てみると、50年代のレプリカを作るよりハードルが高いですね。

FVまあ、わざわざ手間暇かけてショートテノンのパンケーキは作らんだろ(笑)

VMま、そうですね。今回のシリーズを通して総括していただくと…。

FVGretschは謎だらけってこと。

VMそれ、勉強不足なだけだと思うなあ(笑)

何か足りないと思ったら、ピックガードを忘れてました。

 次に読むなら

技術を超えた魔法のレストア - Flying V Medallion
今回は「ネック折れ、3PU改造、パーツなし」のフライングVをレストア・メダリオンチューンナップ。美術館の絵画修復作業のような塗装や、リペア作業の様子を多数の写真でご紹介します。アーティスティックで、技術を超えた、魔法のレストアをご堪能ください。

掲載されている文章および画像の無断転載・引用(ソーシャルボタンは除く)は固くお断わりいたします。

 Vintage Maniacs Shopのおすすめアイテム

Vintage Maniacs Slim Leather Strap

1950年代、レスポールのケースキャンディーとして同梱されたレザーストラップは、秀逸なインダストリアル・デザインで、今なお普遍的に愛される、スリムストラップの原型となったマスターピースです。Vintage Maniacsでは、ステッチ・ビーンズパッド、ブラスステイ、ストレートレザーを高級素材で再現しました。フランスの高級ハンドバッグ向けサプライヤーから調達した美しいヌメ革を使用し、スタンダードSB、スタンダードGT、カスタム用に3種類準備いたしました。素材忠実に復刻しています。ノスタルジックな香りとルックスで、貴方のヒスコレ・ブラウンケースのポケットを彩ってください。

ショップで見る
Vintage Maniacs 公式Webショップ