正しく遺すもの - Firebird Ⅴ

Firebird Ⅰ・Ⅲと見てきたファイヤーバード特集、今回は「Ⅴ」をご紹介。あまり細部を見る機会が少ないケースのクローズアップ写真やギターの細部を見つつ、ロングヴァイブローラのデザインにも注目します。

デザインのバランス

VMファイヤーバードをⅠ、Ⅲと見てきたわけですが、どう思いますか?

FVそれって、質問?(笑) 「どう思うか?」って言われても、まあ、やっぱりデザインも構造も何もかも斬新で、凄いなと。

VMデザイナーのコダワリという意味では、Vになるとヴァイブローラのハンドルが丸棒の樹脂取っ手バージョンになっていて、Ⅲの仕様と差をつけています。

FVまあ、実際の使い勝手はどちらもあまり変わらないけど、Vにスプーンハンドルをつけるとカッコ悪かったり、Ⅲに樹脂取っ手のハンドルだと細くてこれも不似合い。

VMデザインのバランスって、どのあたりで調整しているんですかね。ⅢもⅤも絶妙に成立していて独立したデザインのようにも見えますから、土台のボディラインが余程しっかりと完成していたんですね。

FVたしかに。例えば、ヴィンテージのⅢでハンドルが樹脂製に交換されているのを見ると、「おや?」って思ってしまうだろ?

VMあ、それってわかります。

モデルの変遷(ノンリバース〜Firebird X)

FVFirebirdが最初に登場したのが1963年。フェンダー社のストラトに席捲されていた市場への切込み隊長だな。経営陣が寄せた期待の大きさが「スルーネック構造」や「メタルのピックアップリング」「異様に大きなピックガード」といった独特なスペックに込められているんだ。

VMでも、ストラト風(いまでは、そんなコメントする人はいませんが…)のデザインにフェンダー社から当時クレームがついたとか、つかなかったとか。

FVホントかどうか、文献で残っていないからわからないけど。まあその後66年には、ボディシェイプをひっくり返したようなニューモデル(通称:ノンリバース)が発表されているから、 ギブソン社として何か検討させられる背景はあったんだろう。

VM1969年にはノンリバース・モデルがディスコンになって、1972年にはメダリオンとして限定生産の復刻。

FV76年と82年には、ヴァイブローラを搭載しないストップテールピース・モデルを投入するなど、90年代にレギュラーモデルへ復帰するまでは、そんな右往左往する感じだ。ばたばたと忙しいね(笑)

VM2011年頃に発売されたFirebird Xに至っては、大量の不良品をショベルカーで粉砕する衝撃的な動画がYouTubeで公開されました。

FVまあ、「電気回路の不良が原因で販売できないギターです」という声明をギブソン社が出すほど炎上したわけだけど。それでもやっぱり「使えるパーツは丁寧に外しました」とか「回路を外してセットアップしなおして、公立校の音楽室に寄付します」とか、なにがしか、自分たちが生命を吹き込んだ楽器に対する礼儀みたいなものは必要だったんだろうね。

VM60年間大切に扱われた兄貴分は、同じように工場で生産されたのに「販売もされず弾かれもせずに粉砕された弟分」を見て、どう想ったでしょう。

FVメランコリーだな。

時代を超えた普遍的なカッコ良さ

VMちょっとシンミリしちゃったんで、クローズアップに移りましょうか。

FV今回、皆さんに一番紹介したかったパーツは「Gibson」の削り文字だ。

VMこのあたりのGibsonロゴやハープのデザインって、思い出して描こうと思っても全然記憶を再現できないですよね。

FVとくに「Gibson」は、こうしてクローズアップで見てみると只のギザギザマークだ。次の画像は、どこをどうやっても「bso」に見えないだろ?

VM(笑) これぞ「デザイン」ってことで。

FV次にケース。「正しく遺すものFirebird Ⅲ」で、ハードケースの大きさ・厚みがマチマチだという話題になったけど、あらためて見てみると、このⅤのケースは薄くて長い。

VMそういえば、Firebirdのハードケースを、こんなクローズアップで見る機会ってなかなかなかったですが、作りが重厚で、なんとも特別生産な感じがしてきます。

FV中のライニングは薄くてチャライんだけどね。

VM「透き通ったポジションマーク」についても紹介してください。

FV「Firebird Ⅲ」のときは、ドットポジションでの紹介だったので、すこしわかりにくかったかもしれないけど、これだと「フィンガーボードが透けて見える」ぐらいわかりやすいだろ? 63年前後のSGにも同じ素材が使われている。

VMそして「3ストランドのワイヤー」と「マイナスのトレモロバー・スクリュー」。

FV63年製のFirebirdをⅠ、Ⅲ、Ⅴと見てきたのだけど、ニッケルパーツとのマッチングや美しいサンバーストは、時代を超えた普遍的なカッコ良さが宿っていると思うね。

VM同感です。ちょうど日も暮れてきたので「焼き鳥」にでも行きますか。

FVそれ、ファイヤーバードじゃないよ(笑)

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