指板を彩るセルロイドのポジションマーク
ギブソンのヴィンテージギターの指板を彩る、独特の紋様・パターンをもった美しいセルロイドのポジションマーク。昨今では指板のドレスアップも盛んなようです。今回はヴィンテージのポジションマークを中心に細かく見ていきます。
ギブソンのヴィンテージギターの指板を彩る、独特の紋様・パターンをもった美しいセルロイドのポジションマーク。50年代から60年代初期までのヴィンテージ・ギブソンに採用されていたポジションマークは燃えやすいセルロイドだったため、60年中期には素材が変更され見た目の印象が大きく変わりました。それから50年が経過してもなお、量産品に可燃性の高いセルロイドが使われることは無く、このヴィンテージと似ても似つかないルックスは、ヒストリックコレクションの泣き所でもありました。
昨今ではギブソンのカラマズー工場のレフトオーバーパーツやイタリアの製造元の復刻版で、50年代と同じ、ないしは酷似した素材を入手することも可能なので、コレクターの間では指板のドレスアップも盛んなようです。一方でポジションマークがヴィンテージギターを鑑定する決定的ポイントとはいえなくなってきていますが、それでも一定の割合で識別のガイドラインとなりますので、今回はオリジナルのポジションマークを中心に細かく見ていきます。
最初にご覧いただいた画像は、左から「2000年代のイタリア製復刻版」「カラマズー工場のレフトオーバー」「50年代のヴィンテージ」です。左側の復刻版は色がホワイトですが、これは紫外線で日焼けさせると中央のような黄色を帯びたカラーに変色します。
レスポールに搭載されているディッシュマーカーは9枚でサイズは4種類です。4つのコーナーがそれぞれ少し丸みを帯びているのが特徴です。当時のマシンカットではこのアングルの返しができないので、加工後に手作業でサンディングしていたと推定されます。
この厚みだと、裏返しても部分的に同じパターンが見て取れます。さらにリペアの際に取り外したままで、オリジナルの接着剤と木材の一部が付着しているのがわかりますね。
それでは指板に搭載されている状態を見てみましょう。
ストレートラインとウロコ模様が混在し、独特の美しいパターンを描き出しているのがわかります。別角度で見ると表情が一変します。
次の画像はヒスコレでバージョンアップしたといわれたポジションマークの画像です。参考までに見比べておきましょう。
損壊した50年代のゴールドトップから、ポジションマークを指板のハカランダごと切り出したものが手元にありますので見てみます。光源は右45度です。
このように美しいパターンを見せる素材ですが、セルロイドは摩擦熱で発火するため一度に大量のバルク加工ができず、量産品(ヒストリックコレクションですら)には不向きなのが難点です。ただコレクターにとって、またプレイヤーにとって、このセルロイド素材のしっとりと肌に馴染む帯電性は筆舌しがたく、代替の利かない重要なエッセンスです。
フィンガーボードの彫り込みとポジションマークの間には、わずかな隙間があります。ミントコンディションのギターでも隙間にフィラーが入っていますので、これはもともとある程度のアローアンスをもって加工されていると考えられます。
同年代のレスポール・スペシャルやジュニアなどのドットマーカーも同様の素材なので、綺麗なパターンがあらわれています。
厚みは想像以上に薄く光が透けるぐらいです。今回計測した個体は、9枚で約10mm、1枚あたり約1.1mmでした。
最後に私が一番好きなヴィンテージ・ポジションマーカーの紋様をご紹介いたします。
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