ヴァイブローラのロングとショート、どちらが先か - A chicken-and-egg situation
ヴァイブローラは、ロングとショートのどちらが先に作られたのか。各パーツを見比べつつ、ギブソンのパーツの使いまわしや工夫を推察しながら考古学的にアプローチします。
目次
ロングをデチューンしたのがショートなのか?
VM(Vintage Maniacs)これ、文字通り「鶏が先か、卵が先か」という話題ですよね。
FV(Fukazawa Vintage Club)すんなり「ロングヴァイブローラをスペシャル用にデチューンしたのがショートヴァイブローラでしょう」って答えで正解なら、ジレンマにならないんだが。
VMあ、わかります。「XがY無しに生じえず、YがX無しに生じえない」と考えると、メタファーの視点に立って形而上学的問題をはらんでいるって話ですよね。でも、それは循環参照ですけれど、今回のヴァイブローラは「どちらが先でも成り立つ」ので、紐解けば矛盾しないと思いますよ。
FV今回は「ショートヴァイブローラが先」という持論を、仮説で検証してみよう。
VMアカデミックですね。
FVいや、難しく言ってみただけで、内容は「製造工程や当時の製品ラインナップ」からの推察だよ(笑)
ショートとロングの比較
VMまず、じっくりとショートヴァイブローラ(以下:ショート)とロングヴァイブローラ(以下:ロング)を比較してみましょう。
FV左のロングは、ネジ止めプレート部分の左右が切り落としてあるね。右のショートはネジ3本止めで本体の幅と同じだ。
VMロングは左右の丸棒を取り付けるために、ネジ止めプレートを切って狭くしていますね。
FVだろ? 丸棒の取り付けも、もともとがこの設計なら金型で一体成型で作ればいいのに、わざわざ溶接する手間をかけているから、どう考えても後付けだよ。
モデルによるグレード分けとパーツの共有
VMちょっと待ってください。そもそもヴァイブローラというかビブラートユニットが搭載されるのが1961年のSGLPで、その時はサイドウェイですよね。
FVそうだよ。この時はまだショートヴァイブローラは登場していない。
VM次に、スペシャルやジュニアにもビブラートユニットを…ということで、ビグスビーやショートが搭載されはじめますね。
FVだが、スタンダードに搭載したサイドウェイは重いし壊れるしで不評。一計を案じたギブソンの開発スタッフは、ショートを豪華に見せるため、工房で余ったエボニーの木片に白蝶貝のインレイを入れて搭載してみた。
VMなるほどなるほど。
FVでも、これではどう見てもパーツの使いまわしがバレる。ギブソンはスペシャルとジュニアではブリッジやピックアップのパーツを共有しているけれど、スペシャルとスタンダードは明確にパーツから何から区別してグレードを分けているから、ヴァイブローラにしても、プライドを持って使いまわしをしない方法を考えたんだと、私は推察した。
VM理屈はあってる気がしますね。ロングを裏から見ると、ショートにセミアコのブランコテールピースから外された余りパーツが取り付けられているのが見えてかっこ悪い。それを覆い隠すカバーをつけてロゴを刻印してみたら、すばらしくクールで完成度が抜群だったと。
FVスバリ、ご名答。こう考えると、スタンダードのエボニーブロックはロングよりも先に登場した可能性があるわけだ。
VMうーん、まさに考古学的な楽しみですね、考えて想像するのは。
VMあ、下の写真は本文とはまったく関係ないですね。
FVだいぶ前にエイプリルフール用に撮影したんだけど、見せる機会がなくてね(笑)
VM勝手に増やさないでください。混乱しますから。
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