Guild S-100 - Tribute to Guild
70年代に生産されたユニークなヴィンテージ・ギルドのS-100をご紹介。ギブソンのSGに似たボディに施された豪快な彫刻や特徴的なパーツの他、レアなレフトオーバーボディなどを多数の写真とともに見ていきましょう。
目次
何年製からヴィンテージギターと呼ばれるのか?
みささんにとって「ヴィンテージギター」とは、いつ頃のギターを指すのでしょうか。ギター雑誌の記事やインタビューを見ていると、多くの場合、だいたい70年代中期くらいまでのようですね。たしかに70年代といえば、そろそろ50年の年月が経ちますから、十分にヴィンテージのカテゴリーに含まれる資格はあります。でも1980年代には、すでに60年のストラトやレスポールを「ヴィンテージ」と呼んでいたのを考えると、当時は20年ほど古い中古のギターを「ユーズド」とは呼ばず「ヴィンテージ」としていたわけです。2020年から見た2000年製のストラトやレスポールが「ヴィンテージ」と呼ばれないのも不思議ですが…。今回は、そんな70年代に生産されたユニークなヴィンテージ・ギルドのS-100を見ていきましょう。
Guild S-100とGibson SG
左から2本がギルド、右2本がギブソンです。似ていますね。ただ、ギブソンのSGとくらべるとギルドはより左右非対称で、ちょっとひしゃげたようなキュートなラインが特徴です。
ギルド社は1952年創業の老舗ギターブランドです。もともとニューヨークの楽器店が、労働争議で閉鎖になったエピフォン社の職人と工場設備を買い取ってスタートしていますので、アコースティックギターや高級ジャズギターに定評がありました。
日本に輸入されていたモデルも、Artist Award(GibsonのJohnny Smith)やX-175(同ES-175)など、すばらしいラインナップです。
エレクトリックギターのラインナップというと、レスポールシェイプのブルースバードも人気がありましたが、何といっても目を惹くのがギブソンのSGに似たボディに手彫りの彫刻が施された通称「どんぐりSG」ことS-100です。
どこから見ても鎌倉彫というか、ハンドメイドですよね。
ギルドは大きく張り出たヘッドストックが特徴です。ヘッドストックの画像だとギブソンと見間違わないですが、ボディだけ見るとすごく似ているので、当時イアン・ハンターが弾いているのを「Gibson SG」と勘違いしたファンも多かったと思います。
SG用を流用したハードケース
実は、ハードケースはGibson SG用の流用でした。
ちょっと横道にそれますが、外観はSG用ケースと同じですが中のアンコがLP用です。ケースの両面どちらにもGibsonのシルクロゴが入っていますので、もしかするとレフティ用も兼用していたのかもしれません。
関西人にとって身近なブランド
まあ、このギターを持ってステージに出てきたら、ハードロックはできませんねえ…。
でも、ちゃんとカタログに載っているレギュラーモデルなんです。もともと神戸のロッコーマンが日本の総代理店でしたので(このカタログも当時もらったものです)、関西人にとってギルドというブランドは結構身近だったのです。1973年に最初のエレキを買ってもらうとき、ギブソンのSGかギルドのS-100か、さんざん悩みに悩み、迷いました。
S-100のパーツと細部をクローズアップで紹介
クローズアップで見てみましょう。S-100のヘッドストック・インレイは、白蝶貝ではなくパーロイドです。
ロッドカバーの形状も独特でダイナミックです
ネックのバインディングは、高級ジャズギターっぽくエッジ部分を曲げています。継ぎ目がありません。
そしてハムバッカー。当時としては画期的な、コイルタップができるピックアップです。
このモデル専用のクリアピックガードは、裏側からGuildと印刷されているので、あとあと擦れたり消えたりしません。
ネックジョイントはスムーズな処理がなされていて、当時のGibson SGに酷似しています。
大きく張り出たヘッドストックにはGrover 102Nを搭載。
豪快な鎌倉彫の「どんぐり彫刻」をアップでお楽しみください。
バックのコンター処理も丁寧で美しい曲線ですね。
ギルド独特の工夫がブリッジにみられます。高低調節は工具が無くても手でできますし、弦を外しても落ちないので実用性抜群でした。
コントロールパネルの裏側に、ステッカーでモデル名などが記されています。
番外編「S-100のレフトオーバーボディ」
VM(Vintage Maniacs)いやあ、ギルドがこんなモデルを出していたなんて知らなかったです。僕らの年代だと、ギルドといえばブライアン・メイのレッドスペシャルですから。
FV(Fukazawa Vintage Club)うーん、そんなもんかなあ。ジョン・デンバーやポール・サイモン、井上陽水と、名だたるシンガーソングライターのみなさまがギルドのアコギを使ってきたのだが…。
VMアコギのイメージないですねえ。それはそうと、ちょっと写真で気になったんですけど、真ん中に見えるのは?
FVああ、これか。
FV昔、ニューヨークから足を延ばして、ウェスタリーにあるギルドの工場に遊びに行ったんだ。その時に工場長とS-100の話で盛り上がって、「レフティは無いのか?」って聞いたら「これあげるから自分で作りなさい」って。ブランクの作りかけのレフトオーバーボディとネックをくれたんだよ。工場長が個人的に執務室に飾っていたもので、よく見るとネックエンドのバインディングが先の写真と違っている。ま、宝物だね(笑)
VMこんなキュートな彫刻ギターなら、ベースバージョンがあっても楽しいですね。
FVあるよ(笑)
VM……。
次に読むなら
掲載されている文章および画像の無断転載・引用(ソーシャルボタンは除く)は固くお断わりいたします。
関連する記事
Vintage Maniacs Shopのおすすめアイテム
Vintage Maniacs Magazine Vol. 1
Vintage Maniacsのブログに著者コメントを追記し、編集・再構成した「Vintage Maniacs Magazine」。全ページフルカラー仕様で、資料としてもオススメです。Vintage Maniacsが切り込むディープでマニアックなヴィンテージギターの世界をお楽しみください。
ショップで見る