メダリオンへの憧れ - ファイヤーバード編(3)~ ノンリバース・ファイヤーバード特集
今回の「メダリオンへの憧れ」は、ノンリバース・ファイヤーバードに注目。リバースモデルに比べてシンプルなノンリバモデルのスペックを、多数の写真でじっくり見ていきます。さらにノンリバモデルのファイヤーバードを縮小して製作された「The Little Wing」もご紹介します。
目次
ルール無視のポジションマーク
「メダリオンへの憧れ その3」は、横道にそれて「ノンリバース・ファイヤーバードⅤ」についての苦言です(笑)
ギブソンのプロダクトラインナップって、「ブロックインレイのカスタム」「ディッシュマーカーのスタンダード」「ドットのスペシャル&ジュニア」が定番なのに、ファイヤーバードのノンリバースは、このルールを見事に無視してくれました。次の画像、一番右のⅤだけドットポジションなんですよ。これって、SGやレスポールのスタンダードに失礼だと思いません?
もしかしたらノンリバースのファイヤーバードは、工場でボディ・ネック作るときは全部一緒に作っておいて、ハードウェアを搭載するときに、ブリッジポストの穴だけ、ステアステップとABR-1を分けていたのかも。カタログで見比べても、「ピックアップの個数とトレモロが違うだけだろ?」って印象です。いやはや手抜きと思われても仕方ないですね。
レアモデルなノンリバース・ファイヤーバードⅤ
ノンリバのファイヤーバードは66年から69年の間にⅠ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅶ合計で3,596本が生産されていますが、Ⅴはその中でも492本しか出荷されませんでした。かなりレアなモデルです。
バインディングの無いネックにドットのポジションマークは至ってシンプル。カーデザイナーのレイ・ディートリッヒが目指した「フェンダー・ストラトキャスターを凌駕する斬新で豪華なデトロイトデザイン」からは、ちょっとスリップしてしまっています。
余談になりますが、この「ファイヤーバード」というモデルはカーデザイナーによるモダンなインダストリアル・プロダクトとして楽器業界に登場したこともあり、漠然と「ポンティアック・ファイヤーバード」から命名されたと勘違いされることが多いようです。ポンティアックのファイヤーバードは、V6からV8までマッチョなエンジンを搭載したスペシャルティ・カーで、ボンネットにレイアウトされた巨大な「火の鳥」デカールが印象的ですが、デビューしたのは1967年です。80年代の人気TV番組「ナイトライダー」に登場するのは3代目ですから、ギブソンの先進的デザイン部門はゼネラルモーター社よりも先に、この「火の鳥」を製品化していたことになりますね。
ピックガードは、さすがにここまで大きいと、縮んで端っこがどんどん割れてきます。フェンダーを無理に真似たのか違和感がありますね。ミニハムバッカーをピックアップから吊り下げるのは、ちょっとサウンド的に無理があるかな…。
リバースモデルでは多重構造で立体感のあったヘッドストックですが、ノンリバは軽量なクルーソンの6インラインを搭載してシンプルの極み。豪華からは遠いですね。
メダリオン・ファイヤーバードⅤのボディとペグ
こちらはメダリオン・ファイヤーバードⅤのクローズアップです。あらためてノンリバースと比較すると、再生産といいつつもしっかりと重厚感があります。
70年代初期は、1969年にデビューした「100万ドルのギタリスト」ジョニー・ウインター人気からも、63年のリバースモデル復刻の気運が高まったのかもしれません。ホワイトやブルーのボディカラーにゴールドパーツのメダリオンⅤって、あればかっこいいと思いませんか?
ファイヤーバードらしからぬセットネック
ノンリバースは「ファイヤーバードのファイヤーバードたる所以であるスルーネック構造」を無視した、通常のセットネックでした。
ジョイントヒール部分がスラント加工されており、手が当たらなくてスムーズです。
キャビティは大雑把な加工です。スカスカで、バックプレートを開けてみると随分と手間を省いた印象を受けます。
ヘッドストックのデザインはオリジナルモデルをひっくり返した形なので、当然ロッドカバーは逆向き。ネジは63年と同じスペックですね。
メダリオン・ファイヤーバードⅤと合わせて見てきたノンリバースⅤですが、全モデルを並べてしっかりと考察したい気持ちになってきました(笑)
特集後記:チューンナップ・ファイヤーバード「The Little Wing」
VM(Vintage Maniacs)思ったんですけど、ファイヤーバードってリバースとノンリバースで全く別のモデルに見えるくらい印象が違いますね。
FV(Fukazawa Vintage Club)リバースに関していえば、まさにネーミング通り「ファイヤーバード」って感じだ。
VMノンリバの方がストラトっぽいですか?
FVうーん、個人的には特にストラトに似ているとか似ていないとかの次元ではなくて、どちらもきちんと完成されたデザインだと思うんだよね。
VMこのチューンナップのファイヤーバードは「The Little Wing」というネーミングですね。随分とバランスのとれた高級感ある仕様です。
FVダークイエローバーストのカラーリングとトラ目、ホワイトピックガード、ゴールドパーツの組み合わせは、初見でフェンダーのリッチー・コッツェン・モデルに通じるテイストも感じるけれど独自の完成度があるな。
VMボディサイズが94%に縮小され、引き締まったコンパクトサイズだからでしょうね。
FVたしかに日本人の体型にはフルサイズのファイヤーバードだと全長が長くて大きいよ。
VMヘッドのロゴ、むちゃくちゃ手が込んでますね。ブラス製ですか。
FVこういった、ギブソンのカスタムショップでもやっていないオリジナリティも、チューンナップの楽しみだ。
FVピックガードの「バード」はハンドカットって言ってたから相当の猛者だよ。
VMボディはチェンバーですかね? 軽量です。
FV製作過程を見せてもらったんだけど、SGカスタムのように3PU搭載用にキャビティを開けているから、それも軽量化に寄与しているんだろう。
VMピックガードの色が違うだけで、ずいぶんとダース・ベイダーっぽいフォースを発散してますね。
FVそれはスプリットローラーでもいえることだけど、やっぱり印象が変わるんだよ。
FVフィンガーボードを見てみると、バインディングにドットポジションってのがCoolだ。あまり考えつかない。
VM今回はファイヤーバードのメダリオンを起点にヴィンテージからカスタムモデルまで、3回に分けて観てきましたけれど、先ほど紹介した「The Little Wing」、全体としていかがでしょう?
FVロケ映えするギターなのは確かだよ。今回もマリン&ウオーク(みなとみらい)で撮影していたら、あっという間に人だかりができたから。
VMそれ、会社の帰りに三つ揃えスーツを着たままのおっさんが、アシスタントを引き連れて撮影してたら集まるでしょ。
FV(笑) チューンナップ・ファイヤーバードの「The Little Wing」、94%の魅力って、ポテンシャルがはかり知れないね。
(Special Thanks to Mr. Ohkami)
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