音の本棚 番外編 『ギブソンのすべて』 - 昭和のティータイム
「見せかけだけで、本質が忘れられている楽器の多いなかにあって、ギブソンは本物の楽器を作っています」ギブソンというブランドに本物たる価値を見出した荒井史郎氏の言葉は「Gibson」にあこがれるすべてのギタリストにとって、ひとつの道しるべとなったに違いない。
目次
「Gibson」への憧れと荒井史郎氏の決意
日本ギブソンを率いる荒井貿易社長「荒井史郎氏」は、昭和57年1月1日に出版した「ギブソンのすべて」という書籍の冒頭で、自身がこの伝説的ブランドを日本で販売することへの決意と感謝を述べている。
輸入代理店社長として、ギブソンというブランドに本物たる価値を見出した彼の言葉は、当時サラリーマンの月収をはるかに上回る高級楽器「Gibson」にあこがれるすべてのギタリストにとって、ひとつの道しるべとなったに違いない。
「見せかけだけで、本質が忘れられている楽器の多いなかにあって、ギブソンは本物の楽器を作っています」
「ギターの虫と言われるほど、ギターに魅せられ、ついには楽器の販売から製作にまで手を染めるようになった私が、尊敬する楽器のひとつはギブソンです」
「ごまかしのない楽器作り」「ギブソンの真価」「常に時代の最先端」
ギブソンの歴史と「最先端」を見事に表現した巻頭のカラー写真は、荒井史郎の言葉を力強く裏付けている傑作だと思う。木材の本質を大切にした伝統的モデルを継続しながらも、新しい電気回路を搭載したニューモデルを同時に開発し、市場導入するスピリッツである。
幻のモダーン
筆者が「こんなギターがあったら欲しい」と、40年近くあこがれているのが、ここに切り貼りのコラージュで登場する「フレイムトップのモダーン」だ。
どんな架空の画像でもフォトショップで自由自在に描ける昨今から見れば、他愛のない切り貼りコラージュなのに、なぜ脳裏から離れないのだろう。
荒井史郎イズムを感じるキャッチコピー
同年代のギブソンのカタログには、こういった「荒井史郎イズム」が随所にみられる。とくにキャッチコピーは秀逸で、単なる説明文に終わらず、感嘆を素直に表現している。
「オールドレスポールが欲しかった。50年代モノは最高だって聞いている。今、現実になったヴィンテージ」
「渋い人にはあくまで渋く、ハデな人にもそれなりに。本物はいつもいろんな音楽に応えてくれる」(これは、当時流行語にもなった「それなりに…」というフイルム会社のCMの影響が出てますね)
「アフリカンコリーナのオリジナル、3本そろい踏み。このシェイプ、20年以上も前にあったとはオドロキ」
ギター雑誌や写真集は、情熱や冒険心がつまった宝箱
当時の私は、こうしたカタログやギター雑誌のカラー写真に見入りながら、いつか手にすることができるだろうエレクトリックギターに思いを馳せる学生時代を過ごしていた。
余談になるが、ここで紹介するイラストの2本は、美しいデザインのまとまりと、斬新なプロダクトデザインが大好きで、学生時代に欲しかったギターのトップ10に入る。一本は、来日したKISSのリードギタリストがオーダーした事でも有名な名器、グレコのスルーネック・フライングV。
そしてもう一本は、フラットバーのショートヴァイブローラが後付けされた、コリーナのエキスプローラ。
それぞれ、筆者が高校時代の美術の授業で描いたものだ。
そんな昭和のギター雑誌や写真集は、レトロな中にも当時の情熱や冒険心がつまった宝箱なのだ。
最後に、この写真。The Guitar 3に登場した、アラン・ホールズワースの愛器。
Vintage Maniacsのブログ でも話題になった、イギリス製の「Gordon Smith」。こんな時代から最近まで、全然変わっていないところが、なんとなくすごいような気がしてならない。気のせいかもしれないが…。
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