俺スキ - 7弦買ってみた日曜日
ギアレスチューナーを搭載し、オリジナルのデザインを破綻させずに7弦仕様にしたフライングVにクローズアップ。時代の音楽に応えるべく、ギブソン社が和洋折衷で企画した、ヴィンテージな新鋭機です。
目次
ファン泣かせのモデル
ギブソンは時として唐突に「欲しいけど、買っても使いきれない」ファン泣かせのモデルを企画します。7弦ギターには、びっくりしました。私は「前から存在だけは知っていたけれど、チューニングってどうなっているのだろう?」くらいの知識です。
ちゃんとギターを弾ける人にとっては、音域が広がりフレーズに幅がでる7弦ギターの重低音は、すこぶる魅力的らしいのですが、私には、そもそも「レギュラーのB」とか「一音下げ」とか「ドロップG」とかよくわからないシロモノなのです。なのに、なぜ「俺スキ」なのかといいますと、やっぱりボディシェイプなんです。フライングVです。しかもパッと見がKorina 59Vっぽくないですか?
Vヘッドとギアレスチューナー
Vヘッドは、デザイン的にも見ていて落ち着く安定感があります。SGでもMarauderでも違和感なく似合います。
そんなVヘッドのデザインを利用して、「ど真ん中に4弦のペグを持ってこられた」のは「ギアレスチューナー」のおかげです。
これがグローバーやクルーソンのようなペグだと、ヘッドのてっぺんに持ってくるわけにいきませんから、例えば「左4個、右3個」みたいなバランスか、ExplorerやIbanezのような、縦1列7個のレイアウトになります。それはそれで違和感ありませんが、ギブソンに、「ギアレスチューナーだから、こんなことも出来るんだぜ」って、思いついた企画部のラディカルな若手がいたんでしょう。
余談ですが、ギアレスチューナーの取説を初めて見ました。
7弦でも破綻しないフライングVのデザイン
せっかくなので、3本ならべたカットをご覧いただきましょう。
ケース左から「Korina V」「Reissue Korina」「7弦」です。
聞かなければ「コリーナVのトリオか」って、見過ごしてしまいますね。フライングVの先進的なデザインは、登場から60年が経過した現代でも、そして7弦になっても、オリジナルのデザインとして破綻せず、成層圏を切り裂くようなワクワク感を与えてくれます。
で、買ってしまったので「俺スキ」的に、いろんな角度から観察してみました。
サイドに電池ボックスが見えます。EMG(707と817)のこのピックアップは人気ありますね。でも、普通にパッシブじゃだめだったのでしょうか。個人的には、ここにゴールドのピックアップが載っていたら120点満点です。
PUがブラックなら、ピックガードは白の方が嬉しかったかもしれません。ギブソンらしく、1Pじゃないので、エッジのホワイトレイヤーがしっかりと輪郭を強調していて、ジャックプレートとともにヴィンテージっぽいです。
ケースハンドル修理の秘密兵器
そんなこんなで、日曜日にひとりで撮影に浸っていたら、VM君がハードケースを担いでやってきた。
FVお、どうしたの今日は? 古いブラウンケースだね。
VMやられちゃいましたよ。ハンドルとれちゃって。レザーのムーンハンドルって、まだあります?
FVめずらしいね、君がハンドル壊すなんて。
VM僕じゃないですよ。雑誌社から撮影に貸してくれっていわれて、ちゃんとアコギのギグバッグに入れて渡したのに、撮影の現場で若い子がギターを入れたまま「えいや」って持ち上げたらしいんです。言われたこと守らずに、あとから謝られても…。
FV大事なものを貸すからだよ。ムーンハンドル、あるけど…作ってくれていたおじいちゃんが亡くなったんで、もう作れないんだよなあ。あと15個しかないや。
VMヴィトンに買い占められる前に、一個ください(笑) そういえば、ハンドル修理の秘密兵器があるって聞きましたよ。
FV今、7弦ギターの撮影やってるんだけど…君が来ると横道にそれるなあ。これのことだろ?
VMそうそう、それです。こういうツールを長年さがしていて、唐突に思いついたんでしょ? よっちゃんから聞きましたよ。
FVダボマーカーっていうんだけど、アクセルピンの頭をつぶすのに便利どころか、ばっちり工場と同じ仕上がり。木工をやる人にはポピュラーな、位置決めに使うツールなんだ。今までこんな使い方に気づかなかった。
VM以前の記事では、細い6角レンチで工夫してましたよね。手元にいろんなツールがない人の方が多いから、あれはあれで便利でしたが、この仕上がりは嬉しいっす。
めずらしいミリスペックのパーツ
FVじゃあさ、君のケースを直しておくから、キャビティを撮影する準備をしておいてよ。ピックガードを外して、ブリッジとかバラしておいて。
VMうわっ!! なんですか、これ?
FV毎度毎度、リアクションが大げさだね。ブリッジがアジア製とか、チープだとかいうんだろ?
VMだって、思いっきり「ギブソン製じゃない」ですよ。ほら、サドルなんて最初から溝が彫ってあるし。
VMブリッジポストも、ぶっとい。
FVあ、ほんとだ。すごいね、このパーツ。ブリッジのポストと、テールピースのアンカーが同じ径になってる。しかもミリだ。インチのスタッドが入らんな。
VMこれって違和感ありますね。
FVSchallerでもないのにミリスペックのパーツがギブソンのギターに載ってるってのは、Sonex 180とかの例外を除くと、随分とめずらしいんじゃないか?
VMミリだと、すんなり入りますね。あ~、いまeBayで探してみたら、このブリッジ買えますよ。
FVナッシュビルのパーツサプライヤーに、わざわざインチスペックで金型から起こしてもらったら、ブリッジだけで随分な高額投資だ。チャプターイレブン(米国の会社更生法)直前のギブソンには、できなかったんだろう。
ヴィンテージな新鋭機
VM僕はギアレスチューナー好きですよ。微調整できるし、弦交換は楽だし、壊れないし。使い方はいたって簡単っす。
左右にスワイプ(ドラッグ)で画像スライド
FVやっぱり、プラスチックパーツはホワイトのほうが良くない?
VMいま気がついたんですけど、このギター、ずり落ちますね、座って弾くと。
FVサイドラバーが無いんだよ。そのかわり電池ボックスが…。
VMボックスをボディの反対側にすればラバーが付けられるのに。あきまへんなあ…。
FVあくよ(笑)
おあとがよろしいようで…。
「DSV7EBGH1」DS=デザイナーシリーズ、V7=フライングV 7弦、EB=エボニーブラック、GH=ゴールドハードウエア、1=検査1回目でパス。時代の音楽に応えるべく、ギブソン社が和洋折衷で企画した、ヴィンテージな新鋭機です。
随所に見えるコリーナVの面影と、大雑把なパーツ。こうしたリーズナブルなチャレンジを、これからもギブソン社には期待し続けたいですね。
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