それ程に、それなりの時代 ES-347 (前編)

新しいアイデアがふんだんに織り込まれたES-347は、ES-345の後継機として1978年にデビューした。中古楽器店に同価格のES-335、347、355があったら、その中から347を選ぶ理由は何か?前後編に分けて、この機種を掘り下げてみよう。

ES-3シリーズのラインナップ

ES-347は、ES-335と355に挟まれて、ラインナップでのポジショニングが不明確になり、販売が振るわなくなったES-345の後継機として1978年にデビューした。バリトーンスイッチの代わりにコイルタップを搭載し、フュージョンギタリストの間で人気沸騰中だった「ディマジオ・デュアルサウンド」を追随するニューカマーは、当時のリーフレットの表紙を華々しく飾っている。

このモデルは、コイルタップスイッチ以外にも、ファインチューニングを可能にした「TP-6テールピース」、サスティーンを加速させるブラススタッド「サスティーン・シスターズ」などの、新しいアイデアをふんだんに織り込んだ、ギブソン開発陣入魂の傑作のはずだった。

もともとES-3シリーズには、330、335、345、355のシンプルな4クラスが準備されていた。Les Paulモデルと比較すると、330はSpecial、335はStandardで355がCustomだ。Juniorを彷彿とさせる320や325という普及価格帯の機種も存在した。では、なぜ335と355の間、つまりStandardとCustomの中間に345というモデルが必要だったのだろう。

言い換えれば、Vintage Maniacsの読者の方々は、中古楽器店に、ES-335、347、355が同じ価格で並んでいたら、その中から347を手に取る「理由は何か?」である。

セールスリーフレットに書かれた解説を読んでも、なぜ345の後継機種が必要だったのか、開発のコンセプトは語られていない。しかし、自信たっぷりに「ソリッドギターのアタック感とチェロのようなメローをブレンドしたサウンドは、これからの3シリーズの主流になるでしょう」と謳っているのである。

1991年に復刻されたES-347

振り返るとES-347は、筆者が学生時代だった「1978年」に登場し、いったんディスコンされたのち、1991年に限定復刻されている。そんなに人気があったのか…と感じる人が多いと思う。筆者もその一人だ。

「ES 347-S 1978年にオリジナル・デザインされたES-347が10年の時を超えて、今、R-4、L-6ハムバッカーをマウントした新しい姿で還ってきた。メイプルのネック&ボディーでギブソンならではの微妙なニュアンスを残しながらも、最新のハードウェアテクノロジーが、より今日的な響きを現実のものとした、ポスト・モダーンの時代への回答である」と書かれても、このコピーから347のサウンドを想像するのは、少し無理がありそうだ。

メイプルのネック&ボディーが「ギブソンならではの微妙なニュアンスを残す」とは、おそらく「91年にはマホガニーネックに戻っている335などのシリーズと区別しています」という表現だろうか。

1991年に復刻された347は、オリジナルモデルと比較すると、いくつかの相違点がある。まず最初に目に留まるのは「コイルタップスイッチの位置」だ。オリジナルモデルは、右ウイングに搭載されていた。

復刻モデルはセレクタースイッチの上に移動している。

どちらかというと、右ウイングの方が使いやすそうな印象があるが、製造工程からみれば、ワイヤリングの面倒さがあったのだろう。

次に、ブラスブロック「サスティーン・シスターズ」が搭載されなくなったことだ。

このブラスブロックが生み出すバイブレーションこそが、ES-347の347たる所以だと思っていた筆者にとっては、ギブソン社が91年当時、何を目指して復刻したのかが不可解なのである。

さて、後編では、各部をクローズアップで見ながら、ギブソンが30年以上前にチャレンジした「新しい技術」にスポットを当てて、このギターの魅力を掘り下げてみよう。

追記

ギター本体のコンディションの良さもさることながら、ハードケースが当時の美しい姿をとどめているのは嬉しい。

ゴールド・シルクスクリーンで描かれたGibsonロゴは薄くなっているが、角度によってその痕跡を見ることができる。

ゴールドのラッチも、メッキが重厚で高級感が溢れている。

ラッチは、表側の2つがフラットタイプで裏側がラウンドタイプになっているが、とくに理由があって使い分けているのではなさそうだ。

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