ファイヤーバードの歴史とヴァイブローラの役割

ファイヤーバードというギターはアメリカンロックには欠かせないモデルです。SGではおなじみのパーツ、ロングヴァイブローラ(マエストロ・ヴィブラートユニット)に注目し、この機種の変遷とヴァイブローラが果たす役割を考えてみます。

ファイヤーバードの集合写真

SGではおなじみのロングヴァイブローラ(マエストロ・ヴィブラートユニット)ですが、このユニット無しに語れないのが、もう一方のソリッドボディギターの雄ファイヤーバードです。SGにジュニア、スペシャル、スタンダード、カスタムの4種類があるように、ファイヤーバードにもⅠ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅶと4種類があり、その中でもロングヴァイブローラはⅤとⅦに搭載され豪華さを演出しています。

60年代初期のファイヤーバードは、高い価格と複雑な構造、ボディサイズの大きさから、販売台数はSGほどには伸びませんでした。しかしデトロイトのオートモービル・デザイナーが施したボディデザインの優雅さ、スポーツカーにも通じるスピード感のあるルックスは、ジョニー・ウインターをはじめアメリカンロックには欠かせない豪快なギターのひとつでしょう。

それゆえにロングヴァイブローラの復刻を望む声も多く、1971年にフライングVと同時にメダリオンとして300本強が復刻されます。興味深いのは、フライングVは67年のスペックを踏襲せず、ショートヴァイブローラも搭載していなかったのに対して、ファイヤーバードは、ほぼ1963年のオリジナルスペック通りの復刻になっている点です。ロングヴァイブローラが果たすルックスの役割の大きさがうかがえます。

次の画像は手前から1963年Ⅴ、1971年メダリオン、1963年Ⅲ、1963年Ⅰ(HB改)です。ロングヴァイブローラ、ショートヴァイブローラともに同年代のSGと同じニッケル(Ⅶとカスタムはゴールド)、1965年のノンリバース・ファイヤーバードにはクロームパーツが搭載されています。

ファイヤーバード4機種

まずファイヤーバードⅠですが、テールピースの後方はすっきりしています。アースのワイヤー穴もありません。

ファイヤーバードⅠのボディ

次にファイヤーバードⅢです。SGジュニアとなんとなく印象が似ていますね。

ファイヤーバードⅢのボディ

次はオリジナルの1963年Ⅴで、ニッケルの曇りが風格あります。

ファイヤーバードⅤのヴァイブローラ

最後は1971年のメダリオンです。この時代にクロームではなくニッケルで復刻したのは大変興味深いですね。

メダリオン・ファイヤーバードのヴァイブローラ

さて、ギブソンのヒストリックコレクションでも、1999年以前からロングヴァイブローラを搭載したⅤが復刻されていました。

ロングヴァイブローラが搭載された復刻版ファイヤーバードⅤ

一方でレギュラーモデルのⅤには、ストップテールピースが採用されています。

レギュラーモデルのⅤのカタログ

興味深いことに、2005年にはレギュラーモデルのⅦにロングヴァイブローラが搭載されたにもかかわらず、Ⅴは引き続きストップテールピースです。なぜか、Ⅶなのにクロームパーツのモデルも登場するので、ちょっと試行錯誤な印象もありますね。

2005年のファイヤーバードのカタログ

実はこのファイヤーバードのレギュラーモデルには2種類あって、1990年代の初期にはABR-1搭載モデルがあり、後にナッシュビルタイプのブリッジに変更されるまではマニアの間での人気スペックとなりました。

カタログ最後は、ヒストリックコレクションのパンフレットです。唐突にⅦのゴールド・ロングヴァイブローラの魅力がクローズアップされていますね。

ヒストリックコレクションのカタログ

ニッケルとクロームでは、だいぶヴァイブローラの印象も違ってきます。1965年のⅤで、そのイメージを見てみましょう。ABR-1もミニハムバッカーもすべてクロームで統一されていて、第一印象としては1970年代のSGのような感じです。

ミニハムバッカー搭載のファイヤーバードⅤ

ファイヤーバードの豪快なボディ長になくてはならないヴァイブローラ。Ⅰにヴィブラートユニットを置いて、その印象の違いを見てみました。

ファイヤーバードを並べて撮影

Ⅰにヴァイブローラを置いてみる

ヴァイブローラ搭載モデルとの比較

ヴァイブローラを搭載したときのイメージ

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