フライングV2 - アレンビックに対抗するポストモダンのニューモデル
フライングV2はB.C. RichやAlembicなどの高級ハンドメイドギター勢に押されて苦戦するギブソンが「ポストモダンのニューモデル」と「ヴィンテージリイシュー」の両面から市場にアプローチしたモデルです。
目次
1980年前後は、B.C. RichやAlembicなどの高級ハンドメイドギター勢に押されて苦戦するギブソンが、「ポストモダンのニューモデル」と「ヴィンテージリイシュー」の両面から市場にアプローチした、多彩なコンセプトが乱立する戦国時代です。ファイヤーバードでラミネートボディの先駆者であったギブソンは、新興カスタムメーカーに負けじと、プライを採用したフライングV2やエクスプローラーE2という手の込んだモデルを開発しました。
下の写真で私が抱えている珍しいギターは、1980年代後半にアトランタ郊外の楽器店「Atlanta Vintage Guitars」で、オーナーのTut Campbell氏に見せてもらった「Nomad」というモデルです。
パーツにはV2の影響が色濃くみられ、エクスプローラーとモダーンとフライングV2を混ぜ合わせてランダムスターで割ったような、宇宙的なデザインになっていますね。もしかすると、ギブソン全モデルの中で個人的に2番目に好きなデザインかもしれません。(1番はもちろんSGです)
フライングV2の特徴は、面倒なぐらい特注パーツにこだわっている点でしょう。まずは、フックタイプで実用性重視のブーメランテールピース。後にも先にもこれだけです。
テールピースの下にはプラスチックのプレートが置かれています。おそらく振動対策でしょう。
ピックアップは独自開発のブーメランピックアップで、どうやってリペアしていいのかわからないくらいブラックボックスの仕様です。ピックアップリングも、もちろんカスタム仕様。
ボディサイドに塗装のようなラインが見えるのは、ラミネートされているウッドマテリアルが覗くように、わざわざ必要ない部分にまでコンターを入れているためです。
ネックのラミネート構造は、ファイヤーバードというよりもアレンビックっぽいです。
トラスロッドカバーは、だいたいベルシェイプに文字を入れて「カスタムっぽさ」を出す程度のギブソンにあって、わざわざ特注シェイプに特別なロゴ刻印ですから、失くしたら最後です(笑)
こうして振り返ってみると1980年代のギブソンデザインは洗練されていて、案外ブレードランナー世代にとっては2000年を超えてなお「モダン」な印象を与える完成度があると思いませんか?Nomadなんて、いま発売されたら欲しいです。
ここまでやったギブソンですから、エクスプローラーシェイプのExplorer Ⅱだって、これぐらいヤッテ欲しいですね。
フライングV2の価格をカタログで確認
昭和54年(1979年)のギブソンのカタログが出てきたので、当時のフライングV2の価格を見てみました。
カラー写真が豪華な総合カタログで、このバージョンにはExplorer Ⅱも登場していました。
なんとレスポール・カスタム(350,000円)よりも高額な478,000円となっています。SGスタンダードが2本買えますね。
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