MKを追い続けた愛すべきコレクター「aya-yu」さん(MKシリーズ前編)

70年代に登場したGibson Mark Seriesはアコギ界のブレークスルーだと思います。そんなMKシリーズを追い続ける「aya-yu」さんをご紹介しつつ、当時のカタログやモデルごとの価格差などに注目します。

アコギ界のブレークスルー

VMピックアップが付いてないアコギがVintage Maniacsに登場するのって、めずらしいですね。初めてじゃないですか。

FVJ-160Eは紹介したことあるけど、確かにそうだね。パーツとか、特筆すべきポイントが少ないからかなあ。サウンドの動画とかをしっかり掲載しないと、訴えるものが少ない気がしてさ。 意図してる訳ではないんだけど。

VM似たり寄ったりのアコギにあって(※失言ご容赦ください)、70年代に登場したMKシリーズは、 突っ込みどころ満載ですよね。

FV「突っ込みどころ」っていうか、アコギ界のブレークスルーだと思うよ。

VMあれ? こんなカタログありましたっけ? 神田商会が当時販売したカラーカタログですか?

FVところが、日本版カタログのFlattopラインナップには、MKシリーズは割愛されていて載ってないんだよ。500円もしたのに(根に持ってませんよ、笑)。 これは、USA版のセールス用リーフレットだよ。表紙はこれ。MKシリーズだけでカラー8ページも割いているから、かなり力が入ってるよね。

VM神田商会のカタログに無いって事は、日本では、どこが販売していたんですか?

FVまあまあ、焦らずに。じっくりカタログを見ながら、回顧していこうか。

GIBSON MARKSERIES FUNのaya-yuさん

VMFVさんはずっとMKシリーズを集めてますよね。どこが魅力ですか?

FV得体の知れないMK-99の存在かなあ(笑)

VMちゃんと予習してきましたよ。このサイトが凄く情報がしっかりしていて勉強になります。

GIBSON MARKSERIES FUN

VMとにかくアプローチがアカデミックで、学校の講義みたいです。

FVそうね、「aya-yu」さんは学校の先生だから。

VMえ~、このサイトの制作者、ご存知なんですか?

FV私にとってはMKのみならず、Goodallとかソモギの素晴らしさを知る上での大先輩だ。この写真は、aya-yuさんとお友達と3人で早朝の自由が丘で撮影していて、職質されたときのカットだよ(笑) もう20年ぐらい前かな。Nikon F-3でフイルム撮影だったなあ。

FVナチュラルとサンバーストがそろったときは、すっごく盛り上がってね。興奮したよ。

VMいろんなところで職質されてますよね(笑) MK-99はハカランダなんですよね?

FVそうだっけ? MK-81も、すごく上質な素材を使ってるよ。バックも綺麗だろ?

MKシリーズの価格

VMだって、当時はJ-200よりも高額だったんですよ。そりゃ、良い木材を使ってくれなきゃ。

VMMK-81は999ドル。

VMわずか12本しか生産しなかったMK-99が、とんでもない価格で載ってますね。確かに、ハカランダとは書いていないですが。2,199ドルかあ…。

FV日本の価格と比較してみよう。

モデル カタログ$価格 円換算($=293円 カタログ¥価格
MK-35 569 166,717 193,000
MK-53 649 190,157 220,000
MK-72 749 219,457 254,000
MK-81 999 292,707 339,000
MK-99 2,199 644,307 895,000

76年に293円だったドル相場は、わずか2年後の78年には195円になりました。MK-81は999×195=194,805ですから、10万円も安くなってしまったということですね。76年に仕入れた楽器の在庫が残ってしまうと、当時の輸入元にとっては、為替差は大きな頭痛の種だったでしょう。

FVMK-35から81までは、$と円では数万円の差だけど、MK-99は35万円の差があって、どうしちゃったのかなってね。

VMあれ? こっちのYAMAHAのカタログでは、MK-81は415,000円になってますよ。

VMしかも、高額なアコギのカタログとしては、ちょっと説明が雑な感じが…。

FVうーん、こりゃイカンなあ。MKシリーズの斬新さとか特徴諸々が伝わってこないよ。ギブソンは、むちゃくちゃ気合入れて解説してるのに。

オリエンタルな曲線が美しいデザイン

VMFVさんは以前「MKシリーズのピックガードやブリッジって、三味線のバチみたいな、オリエンタルな曲線が美しい」って、デザインの雑誌で述べてましたが、どのあたりですか?

FVアメリカ版カラーカタログの最初のページからして、アピールしてるよ。

VMうひゃ~、ド迫力。さすがに、カラーで8ページ割いているだけありますね。写真も素敵です。

FVだろ? この曲線がさ、自然なんだよね~。

VMピックガードのシェイプは、ほんとに纏まりがあって美しいと思います。でも、もともとはピックガードはつけずに出荷されてるって聞きましたけど。

FVよく勉強しているね(笑) ここを見てごらん。

SEPARATE PICKGUARD - No matter how good a guitar is, some people want a pickguard on it and some don't. Every Mark guitar offers both. The pickguard is packaged separately and attaches instantly with a special adhesive.

FV「ギターは、ピックガードを搭載せずに同梱しています。特殊な接着方法で着脱できます」ってことだ。

VMなるほど。だからフクロに入ったままの新品があるんですね。

VMで、「Special Adhesive」って、丸い両面テープのことですか?(笑)

FVこの「両面テープ」の会社名、読めないなあ…。「LunarkChicago Illinois」?

VM貼ってみましょうか、ほんとに着脱自由自在か。

FVピックガードは沢山あるから、やってみても良いよ。

VMうーん、MKで前後編やるとは思ってませんでしたが、とりあえず次回は「やみクロ MK-81」ってことで続きます。

FVかたじけない(笑)

追記

今回、あらためてカタログや写真を整理していて気づいたことがあります。ブリッジサドルが白い樹脂一体成型のMK-72・53・35と異なり、MK-81はエボニーとボーンのコンビネーションになっている点です。MKシリーズのアピールポイントに、「高さの違うスライド式ブリッジが複数同梱されているので、好みで交換できます」と書かれています。

確かに便利な機能なのですが、最上位機種であるMK-81は違うタイプなのです。私は当初「前オーナーが鳴りを重視してウッドのブリッジサドルを製作した」のだと思っていました。

うっかりとカタログでは見落としていましたが、こんなに大々的に写真が掲載されていますので、本来なら、ひと目で気づかないといけないポイントでした。

aya-yuさんが記事を書いた音楽雑誌掲載の写真でも、MK-81はしっかりとコンビネーションブリッジになっています。

夢中になったモノでも、すこし時間や距離をあけてから見直してみると、素通りしていた「何か」に気づかされることがある。だから、自分の「音の本棚」をひっくり返してみる楽しみがあるのです。みなさんも、ぜひ「ご自身の音棚を発掘」してくださいませ。

私にとって、MKシリーズのバイブルである特集記事。

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