「a.k.a. Nashville Bridge」って、知ってるかい?
1970年代中期、ABR-1の弱点だったサドルとサドルスクリューの取り付け方法を画期的に改善した、ナッシュビル・チューンオーマチック・ブリッジが登場します。70年代のドイツ製ブリッジが、近年のヒスコレABR-1復刻ブームにあって、いまだ健在という事実に、エールを送りたくなりました。
目次
ABR-1の弱点を改善したモダンなブリッジ
ギブソンがレスポールの生産ラインをナッシュビル工場に移転した1970年代中期に、従来のABR-1を改良した「Modern TOM」というブリッジが登場します。ギブソンのフォーラムでは、「Modern TOM Bridge a.k.a. “Nashville bridge”」と表現されていて、Modern TOMが一般的のようですが、日本では長年「ナッシュビル・チューンオーマチック・ブリッジ(NTOMB)」という長いパーツ名で呼ばれていますね。部品番号は、Gibson BR-030(クローム)、040(ニッケル)、045(ゴールド)です。
ABR-1の弱点だった、サドルとサドルスクリューの取り付け方法を画期的に改善した「Made in W.Germany」のモダンなブリッジは、その後の70~80年代ギブソンを語るうえで、大変重要な「ルックス上の変化点」をもたらします。
ボディへの取り付け方法が、従来のポストをダイレクトにねじ込むABR-1方式と異なり、あらかじめ打ち込まれたアンカーに、エレベーションスクリューとサドルが一体化したポストを設置する「合理的な設計」だったことは、ギブソン社の意に反して、サステインを重視するギタリスト達からの賛否を引き起こしました。
そして、何よりもポスト間の長さが73.8mmから74.3mmに広げられて厚みも幅も一回り大きくなりましたから、遠目に見ても、テールピースとリアピックアップの間がもっちゃりした印象になったわけです。近年ではコンバージョンブッシュを活用して、スリムなABR-1にドレスアップするレスポール・ファンも多くいますね。
コンバージョンポストでナッシュビル・ブリッジをABR-1に交換
レスポール・スタンダードのブリッジを交換してドレスアップ
「やっぱりポストはダイレクトにボディに打ち込まれていたほうが、サスティーンが増すだろう」と、高校時代の私はずっと思っていました。ですから、Les Paul 80シリーズが発売されたときに、ニッケルのNTOMBを見て「あらららら」って思ってしまったのですが、実際に多くの70年代ギターでNashville Bridgeを経験してみて、正直「Nashville Tune O Maticって、サウンドが随分とタイトだよな」という感想を持っています。ルックスも見慣れるとキュートです。
それはそうと、冒頭で説明し忘れましたが、タイトルにもある「a.k.a.」って、よく英語の雑誌や新聞で見かけますよね。今回は、ギブソンの英文サイトが「Modern TOM a.k.a. NTOMB」で「え~け~え~」を使っています。これは、「~いわゆる」とか「通称」「またの呼び名を」「別名」という意味で、「also known as」の省略です。「By the Way」と書かずに「BTW」と書いたりするのと同じで、なんとなくアメリカンな感じがします。
3種類のNTOMブリッジ
で、本題に戻りますね。Nashville Tune O Matic(以下NTOM)ブリッジには、年代ごとに3種類があります。75年に登場した初代モデルは、片側に「Made in Germany」と刻印されています。(70年代はSchallerパーツの生産国は西ドイツのはずだが、ここでの表記はW.Germanyではない)
70年代のSGやLes Paulでも、よく見るとブリッジが近年の「刻印無し」に交換されている個体がありますね。
第二世代は、右にMade in、左にGermanyの刻印となります。これは前者よりも採用された期間が長いためか、中古パーツが頻繁にオークションなどに出ています。
一見、スペックは同じに見えますが、サドルの固定方法が異なります。画像でわかりますでしょうか。
右が初代モデルで、左が第二世代以降の現行までのパーツです。
サドルの止め具は、裏から見ると違いがよくわかります。
さて、第三世代ですが、なぜか原産地表記がなくなります。その代わりに、API(テネシーのパーツメーカー Advanced Plating Inc.)というアルファベットが追加されていて、同じパーツがFender社のStarcaster復刻モデルにも供給されたりしています。
スターキャスターとMusic City Jr. - 試行錯誤のGとF
しっかりと「Made in USA」なので、できればパーツ本体に表記してほしかった。
ヴィンテージ・ギブソンのNTOMブリッジが劣化していても、むやみに現行品に交換するのは、お勧めできません。
ヴィンテージは、ブリッジ穴とポストの間にすき間がなく、非常にタイトです。一方、ヴィンテージのポストに現行API製を搭載すると、このようにすき間ができてしまいました。気にならないといえば僅かな隙間ですが、なんとなくスカスカして寂しい感じがしませんか?
我々昭和生まれにとって、70年代後半はすでに「モダンなギブソン」ですが、今から40年前ですから、最近の若者にとっては立派なヴィンテージです。
ギブソンのR&Dが華やかしき70年代に、彼らの夢を載せたドイツ製ブリッジが、近年のヒスコレABR-1復刻ブームにあって、いまだ健在という事実に、エールを送りたくなりました。
最後に、Schallerにリスペクトを込めて、パーツボックスから3つをご覧いただきましょう。
ヴィンテージのNTOMB用ポスト
ハーモニカブリッジ
古めのストラップピン
このストラップピンは、すこし複雑な構造ですが、Germanyの刻印がCoolです。
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