SECOND刻印のFlying VとExplorer - セカンドって、セコハン?

今回はギブソン・ギターのヘッドストックの裏にある「SECOND」の文字に注目。渋谷で偶然出会ったSECOND刻印の白いエクスプローラーと、同じ刻印の白いフライングV。そんな2本のギターにまつわるストーリーをご紹介します。

「中古」の呼び方

VM(Vintage Maniacs)タイトルの「セコハン」って呼び方、古いですね。中古のことですよね?

FV(Fukazawa Vintage Club)昔は「セコハン、セコハン」って日常的に使われていたけど、子供心になんとなく「良くないもの」的な印象を持たされてたね(笑)

VMそうそう。車でも中古車は「セコハン車」って呼んでましたから、うちの実家では。
※彼は大阪の放出出身です。ときに皆さん「放出」って漢字、正しく読めましたか?

FV初めてアメリカのギターショーに行ったとき、マック・ヤスダさんが「三ツ井君、アメリカでは中古のギターをユーズドって呼ぶんやで。セコハンとかセカンドハンドとちゃうで。覚えときや。映画にもあるやろ?」って、教えてくれて。「おお、さすがヤスダ先輩。お母さんが英語の先生だけあって、 すごい」と思ったよ。
※ロバート・ゼメキス監督:1980年のアメリカ映画『ユーズドカー』の事

VMてことは、写真の「SECOND」は「中古」って意味じゃないですよね。

FV「あったり前田のクラッカー」。英語だと「SECOND HAND」って、時計の秒針の意味で使われることの方が多い。中古のギターは「USED GUITAR」。ここで刻印されている「SECOND」は、工場の出荷品質チェックで外観検査に合格しなかったB級品と理解しておこう。

「SECOND」のフライングVとエクスプローラー

VM3本とも「SECOND」ですか?

FV白のフライングVとエクスプローラーが「SECOND」。ナチュラルのVは見せびらかそうと思って…。

VM自虐してどうするんですか(笑)でも、オーディナルなVとEXをわざわざツーショットってことは、何かストーリーがありそうですね。

FVそうなんだよ。買いたくなったストーリーがあるんだよ。USEDのギターを買うときって、お店とか対応してくれる店員さんとか印象に残るだろ?この白のエクスプローラーは、楽器店の店員さんがずいぶんと丁寧な人で良い出会いだったんだ。

買わずに後悔するなら、買って反省しよう

VMこのエクスプローラーを買ったのは、渋谷の東急本店近くにある楽器屋さんでしたよね。覚えてますよ。説明もしっかりしていたし、わざわざハードケースを奥から持ってきて見せてくれて。なのにFVさんは、ちまちま値切ってましたよね。

FVすまんすまん…反省してるよ。3日悩んだけど、店員さんとの出会いもあって購入させていただいた。あの店員さんからなら、また買いたいね。

VM3日後に、すでに売れてたら後悔してましたよね。普段の自分の銘言、実践してくださいよ、もう!

レアなスペックのエクスプローラー

VMそれで、このエクスプローラーを購入するに至る思考プロセスは?

FVUSEDのEXが2本店頭に掛かってたろ?もう一方のナチュラルの76もリーズナブルな価格だったけど、このホワイトはバインディングがあってレアだった。ペグもピックアップもオリジナル。店員さんの説明も正確。ハードケースもオリジナル。「ヘッドにSECONDのスタンプがあるのでこの価格です」って事だが、マニアにはレアだよ。手元にSECOND刻印の80年代のホワイトVがあったから、「Vintage Maniacsのカレンダー用にツーショットを撮ったらかっこいいぞ」と、思考回路はフル回転。

VMで、何を迷ってたんですか?

FVナチュラルの76と2本まとめて買おうかと。

VMなるほど、今回の写真が中途半端なのは、そういった理由ですか。

FVVは色物もカッコイイだろ?

VMそうですね、白とか黒はシャモジヘッドが似合いますね。

バインディングの有無で変わる印象

FV実は、この白のフライングV、ずっと「バインディング付き」と間違って記憶しててね。

VMなるほど、白で80年代、バインディングありで「SECOND」のVとEXなら絵になりますね。

FV下の画像が断然カッコよくなるはずだったんだが…。

VMいつもながらコレクションの記憶が曖昧すぎてドキドキしますよ。パソコンでデータベースでも作ったらどうですか?

FVで、このVにバインディングはなかったよ。

VMしかし、ネックってバインディングの有無で本当に印象が違いますよね。

「SECOND」の理由は不明

FV最初の話に戻るけど、こうしてUSEDになってしまうと、もともと「外観のどこにDefect(不具合)」があったのかわからないよ。「SECOND」の理由がわからない。

VMバインディング部分をはじめ、せっかくなので各部分のクローズアップを見てください。

FVこの年代だけどブリッジがABR-1ってのは得点が高いだろ?アッパーリンクオーならコリーナの可能性もあったが、これはこれでかっこいいロゴだな。

ナチュラルのVにもクローズアップ

VMせっかくだからナチュラルのVもクローズアップしてくださいよ。

FVじゃあ、あんまり見る機会のない、センター貼り合わせ部分のダボ。

FV74年のVだけでなく、70年代後期~80年代初期までのスペック。

FVそれと、メロディーメーカー特集(ダブルカッタウェイのメロディーメーカー - エピフォンの憂鬱)で紹介したネックジョイントのスラント加工。めずらしい。

VM細かいところまでよく観察してますね。

FV学生時代は観察ノートにスケッチしてたからね。写真を撮って現像して焼き増すだけのお金がなかった頃。

VMやっぱ、ABR-1はいいっすねえ。

ハナテン中古車センター

FVまあ、そんなこんなで、親切で丁寧な店員さんのおかげもあって今回は「SECOND」の説明でした。この場を借りてお礼申し上げます!

VMありがとうございました!

最後に、前出の「放出」ですが、関西出身の人でも読めない人が多いと思います。70年代に深夜テレビで流れていた「ハナテン中古車センター~~、あなたクルマ売る?」っていう半裸女性のCFは覚えていると思いますが、新聞チラシに「中古車の放出」って書かれると、「おー、バーゲンか!」って勘違いします。放出中古車センター(その後ハナテン→現在ビッグモーター)の電話番号が「8710」だったかは記憶が定かではありません…。とりあえず、関西で「あなた、いったい誰?」と聞かれると「ハナテン中古車セ・ン・ター~」って、歌って返すのが礼儀ですので、オフィスに関西出身の定年近い係長がいたら試してみてください。

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