1983年(亥年)のアクエリアス - 中編
ギブソンに手が届かなかった80年代、ギターを弾くすべてのミュージシャンに「Gibson」という文字を身近にしたSONEX。新素材のマルチフォニックボディに良質なローズウッドを使用した新進気鋭のモデルに注目。パーツやスペック、取扱説明書などをじっくり見ていきます。
目次
Sonex 180のラインナップ
美しいレスポールシェイプに、合理的なボルトオンネックで、80年代ギブソンのアイコンともなった「Sonex 180」。リーズナブルな価格と高品質で、アジア製ギターが台頭するマーケットを席捲し、ギブソン王国を復活させるはずだった。
欧州市場では一定の評価を受けたものの、こんにちのヴィンテージギター・マーケットでは、コレクターズアイテムからは程遠い、現行品よりも安価な扱いを受けているのは、ファンとして寂しい限りだ。
Artist、Custom、Standard、Deluxeの4機種からなるラインナップは、749ドル(Artist)から299ドル(Deluxe)まで幅広い価格帯となっていたが、主力モデルは「300ドルでギブソンが買える」というコンセプトからしても、DeluxeやStandardだった。
Artist | 749ドル |
Custom | 449ドル |
Standard | 375ドル |
Deluxe | 299ドル |
価格差に比して、スペックは意外に似通っている。もちろん破格値のArtistモデルは、搭載された電子回路などで、Custom/Standard/Deluxeと一線を画しているが、3機種に関していえば、ピックアップの違いとデュアルサウンドスイッチぐらいしか違いが見当たらない。
クールなネーミングのピックアップ「Velvet Brick」
タグと取説と保証書が付属していて、オリジナルのフライトケースに収まったコンディションの良いこの個体は、「Velvet Brick」を搭載したとされるDeluxeである。
Deluxeのピックアップ「Velvet Brick」は、よく見るとミリサイズの日本製で、米国製「Dirty Fingers」とは異なったサウンドを有している。裏側には「SONEX-180 DELUXE」とスタンプされているので、日本からはるばる運ばれてきたこのピックアップをギブソンの工場で組み込むときに、間違わなくて良い。
ちなみに、このクールなネーミングのピックアップは、同年代のパーツカタログにも登場している。
Dirty Fingersは、80年代に多くのソリッドボディ・モデルに搭載されたディマジオ対抗のヒット商品だが、このSonex 180に搭載するために、わざわざベースプレートが交換され、片側の高さ調整用アジャストスクリューが2本となっていて、弦に対する角度調整がしやすい。Velvet Brickも同様だ。ただし、パーツカタログには、左右共にアジャストスクリューが1本のものが掲載されていた。さて、ここでカタログの写真をよく見ると、Velvet Brickの片側ボビンにスクエアウインドウが見られる。
本機に搭載された実物には、このウインドウは無いから、途中でスペック変更されたのか、写真が間違っているかだ。
ミリスペックの日本製パーツ
Sonex 180には、可能な限りの日本製パーツが搭載され、コスト低減を図っている。たとえばブリッジ。スタッドも含めてミリスペックだが、Schaller製(ドイツ)ではない。
日本的な工夫だろうか、高さ調整のときに滑りをよくする為のワッシャーが1枚かませてあった。
テールピースもスタッドを含めてミリスペックだ。ギブソン製インチスタッドと比較すると、ピッチの違いがわかるだろう。
ネジ類も、もちろんミリである。
アメリカの工場で組み立てるのだから、ネジぐらいインチでもいいだろうという声もある。ピックアップはフライングVの反省を込めてか、ピックガードにピックアップリングでがっつり留めてあるので頑丈だ。(ただし、ボディには留められていない)
新素材と伝統的なウッド素材の良いとこ取り
マルチフォニックボディであるが、当時のカタログによると、ウッド素材と比して「低温から高温まで温度耐久性抜群(-40°F~180°F)※注」で、「音響特性にも優れ、残響音が長く続きます」ということらしい。
ボディの内側に木材のコアがあり、それをサンドイッチするようにマルチフォニック材を取り付けているので、新素材と伝統的なウッド素材の良いとこ取りだ。実際に弾いてみると「スタインバーガー」や「クライン」、「パーカー」のような軽快なコードワークを堪能でき、しかも軽量で取り回しが良い。指板は、今ではなかなか見られない良質なローズウッドだ。
Sonex 180の取扱説明書と保証書
コリーナVなどの高級機種にも共通するぶら下がりタグや保証書など、すべてが高級モデルと遜色ない丁寧な扱いを受けている。
実際に弾いてみると、40年経過した現在でも、ほとんどメンテナンスフリーで、プロの使用に耐えうるコンディション、サウンド、そしてスタビリティを有しているのを体験できる。
身近になった「Gibson」
ふんだんに搭載されたMade in Japanのパーツ。
フェンダー対抗のデタッチャブル構造ネック。
Gibsonロゴを冠したペグ。
1983年の同じ時期に工場で生産された、伝統のSGと新進気鋭のSonex 180。ギブソンが手に届かなかった80年代に、ギターを弾くすべてのミュージシャンに「Gibson」という文字を身近にしたこのモデルに、あらためてエールを送りたい。
ウルトラカッコいい、ヘッドのロゴ。ハードケースもお揃い。
下の写真の四角いケースは「180ケース」という型番で、当時65ドル。プロテクターケースは119.50ドルだったので、本体に比して相変わらずケースは高額な印象がある。
後記
ポットなどのパーツもミリスペックなので、ノブもミリでした…。
キャビティはもう少し丁寧に彫っても良かったかも。
ネックキャビティの加工精度はドンピシャで、ピタっとセットされていてズレません。
ちなみに、Sonex 180の「180」は、180度の高温にも耐えるということですが、180°F(華氏)は摂氏にすると82℃ですので、くれぐれも暖炉の前に置きっぱなしにしたりしないでくださいね。燃えないということではないです。「-40°Fは摂氏4度」で、計算式は、「(XX°F - 32)✕ 5 ÷ 9 = 摂氏」です。アメリカで天気予報を聞いていて「明日は晴れで75ファーレンハイト、過ごしやすいでしょう」って言われても実感ないわけです(笑) 摂氏何度か、計算してみてくださいね。
このあと、Sonex 180がディスコンされると、InvaderやChallenger、Corvusというラインナップがギブソンのエントリーモデルを担います。Corvusを全色集めているコレクターの方、ぜひVintage Maniacsへのご寄稿をお待ちしています。
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