1983年(亥年)のアクエリアス - 後編

シリーズ後編の今回は、前回ご紹介したSonex 180と同時期に製作されたSGスタンダードにクローズアップ。大きなスペック変更があったインプットジャックや、便利だけど短命なブリッジなど、「変化の時代」を感じるいろいろな仕様変更を見ていきましょう。

SG Standardのスペック変更

VM (Vintage Maniacs)前編のSonex 180に続き1983年シリーズの後編になりますが、なんか「変化の時代」を感じますよね。

FV (Fukazawa Vintage Club)そうだね、新進気鋭のSonex 180やデザイン変更したSGを欧州向けラインナップの主流に据える一方で、59 VintageやKorinaトリオを日本市場向けに復刻する。マーケティングという言葉が、フィリップ・コトラーによってポピュラーになりはじめた80年代、市場の声を製品企画に反映させた結果だよ。

VMMapギターを店頭ディスプレイ用に作ったり、プロモーションにも随分と力を入れてました。

FVしかし、このSG Standardの密かなスペック変更には驚いたよ、当時。

VMそんなに違いますかね。たとえば、ペグとかですか?

FVそうだね、これ。Sonex 180とお揃いだけど、どうみてもUSAやGermany製ではなさそうだ。

VM僕は好きですよ。Gibsonロゴが大げさで。この時期までは、GroverやSchallerを見慣れているので、Japanのペグは新鮮です。

FVバラしてみるか。

VMぜひ。

FVほら、ワッシャーからしてチープだろ。

VMえ~、あまり気になりませんけど。でも、ミリスペックなので、インチのGroverは取り付けできないですね。

VMアフターパーツの管理とか考えると、ペグはGroverならGrover。SchallerならSchallerと決めてくれればいいのに。Klusonもシャフト径が違うのがあったりして、リペア泣かせです。

FVとはいえ、Sonex 180ほどJapanパーツを流用しているわけではないからさ。

VMそりゃ、値段を考えるとSonex 180と同じパーツじゃあファンは怒りますよ。

案外便利なノッペリ・ブリッジ

FVブリッジは当時新発売された、3ポイントABR-1だ。ポスト穴が上に突き抜けていないので、見た感じがノッペリしていて、すぐ見分けがつく。

FVスタッドは共通なので、現行のナッシュビルでも適合する。

VM裏側から見ると、3ポイントの意味がわかりますね。案外便利だったかも。

FV結局、デザイン的にというか、見た目のノッペリ感が受け入れられなかったんだろうね、便利な割に普及しなかったブリッジだよ。

インプットジャックは大きく変化

VM一番の違いといえば、インプットジャックの位置ですね。

FVSGの歴史にあって、大きな変化点だった。そして、これもまた短命。

VMサイドからネックジョイントまで、一気にドリルで穴をあけてますね。これって、当時のStandard 82なんかと同じ手法ですか?

VMここまで穴がきています。

FVそう思うだろ? それが違うんだよ。このあたり、手を抜かないギブソンらしいところ。

FVほら、この直線上にネックジョイントがこないだろ? ということは、まずネックを取り付ける前に、ジョイント側からドリルでリード線用の穴加工をして、キャビティまで通す。そのうえで、インプットジャックホールは、ボディ外周側からキャビティまで短くあけられている。

VMほんとだ。一直線に彫ろうとすると、インプットジャックがボディに直角に取り付けられない角度ですね。

FV黄色のガイドラインを見てほしい。ネックジョイント側からとキャビティ外側から、2回ドリルしている。めんどくさい作業だよ。

ピックアップとバックプレート

VMピックアップは、オリジナルは基盤タイプでしたね。

FVこれはディマジオに交換されていたので、80年代初期のPattent Applied For HBに載せ換えた。時代考証的にはあってるだろ?

VM80年初期の57 Classicって、今プレミアムついてて無茶苦茶高いじゃないですか。

FV良い音するよ。このデカールも、ヴィンテージPAFドンズバでカッコいいだろ?

VM宣伝してますね(笑) フロントとリアのスクリューが、結構「レフトオーバーパーツ」してて、嬉しいっす。

VMフロントの4本のうち、3本は60年代初期までのパーツを流用してますね。リアは4本とも60年代中期からのスペックです。

FV君も詳しくなったね。

VMVintage Maniacs Magazine Vol.1に詳しく載ってますよ。持ってない人は、ぜひ一冊お手元に(笑) そのほか、気を付ける部分はありますか?

FVバックプレートは、唐突に大きさがこれまでのSGシリーズと違う。共有できないので、割ったり失くしたりしないこと。

VM不細工なシェイプですね。なんだこれ。ピックガードもそうですが、スクリュー穴を減らしたり、位置を変えたり、パーツの共通性がなくて、後の時代に困ります。

FVそのあたり、80年代のギブソンは過去からの決別なのか、「無理やりいろんなものを変化させて販売店を混乱させた罪は大きい」って、George GruhnがNashvilleギターショーの講演で言ってた。同感だな。

VMボディカラーが「Cherry Red」ではなくて「WINE RED」というのは、いかがですか?

VMトラスロッドのアルファベットは、なんか呪文みたいです。

FV読めないな、例によって(爆笑)

気軽にライブで弾ける、身近なヴィンテージ

VM総括してくださいよ。

FVうーん、総括ねえ。個人的には、この頃までのギブソンは生産のクオリティが高いしマホガニーも良質なので、70年代が高騰している現状では、気軽にライブで弾ける、身近なヴィンテージだと思うよ。

FVブロックポジションは、マイケル・シェンカーのFVを連想させるんだよなあ。

VM今回、3回シリーズの後編としてはオチがなくて平凡でしたが、最後にヒトコト。

FVまあ、音が良いとか、ギブソンっぽいとか、さすがと思ったよ、Sonex 180もSGも。83年の同じ時期に製造された、キャラクターの違う2台だけど、しっかりギブソンの音がするんだよねえ。不思議というか、さすが。

VMラッカーのクラック、痺れますねえ~。

 次に読むなら

1983年(亥年)のアクエリアス - 前編
1980年代に華々しく登場した期待のルーキー「 Sonex-180」。新素材のチャレンジャーともいえるこのギターと、同じナッシュビル工場で5日を隔てて産声をあげた「SG Standard」の2本。当時のカタログを開きながら、それぞれのモデルを見ていこう。

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