アッセンブリーの理屈 Kluson 3 in-line (前編)

「ノーライン」や「シングルライン」、さらに「シュリンク=崩壊」するタイプや丈夫な樹脂のものなど、白ボタンのクルーソンペグにはいろいろなバリエーションがあります。今回は黒いボタンのラップスティールギターも紹介しつつ、前後編に分けて「3連ペグ」を観察していきます。

黒いボタンの3連ペグ

コレクションの中には、入手してから一度もアンプを通して弾いていなかったり、弦さえも交換していない楽器があります。エリック・クラプトンのイカのような(エルボーカット)エクスプローラーに憧れて以来、コリーナ…というか、リンバウッドの楽器をみつけると、無性にほしくなってしまい、入手した「ラップスティール」も、その一本です。Vintage Maniacsの読者にも、同じ経験をされた方がおられるでしょう。

TV Yellowのレスポール・スペシャルも、「カラーがコリーナっぽい」という視覚的な一目惚れで、30年以上前に手に入れたのですが、こうして「コリーナ」とならべて見ると、なるほどに「姉妹」っぽい美しさがあります。その上、レイズドロゴを搭載したVヘッドのデザインは、なんとなくフライングVっぽくて、見ていて飽きません。

さて今回は、ギブソンのコリーナボディとしては比較的入手しやすかった「ラップスティール」にも搭載されている「3連」ペグについて観察していきます。見覚えのある「3連(3 in Line)」に、黒いボタンが搭載されていますね。一般になじみ深い「3連」といえば、レスポール・ジュニアやスペシャルに搭載されているシリーズですが、「白ボタン」です。コリーナのラップスティールはデザイン重視だったのでしょうか、わざわざブラックになっています。

6種類の白ボタンクルーソン

「白ボタンクルーソン」には、「ノーライン」「シングルライン」「ダブルライン・クルーソン」「ダブルライン・ギブソン」の4種類がありますが、さらに詳しく見てみると、「ノーライン」と「シングルライン」には、つまみが「シュリンク=崩壊」するタイプと、丈夫な樹脂のタイプがあるので、合計6種類と考えると良さそうです。

まずは、初代の「ノーライン・シュリンク」です。

これはシュリンクしていますが、崩壊する前のコンディションが良い個体です。58年くらいまでのギターに搭載されていました。実は冒頭にご紹介したレスポール・スペシャルは、入手した当時、ペグの一部が崩壊していたので、アトランタで入手した時代が異なる「3連ペグ」に交換したままでしたので、後編では、このペグに戻して印象の違いを見てみますね。

つづいて、59年~61年くらいまで搭載された「シングルライン・ノーシュリンク」です。クレイ(粘土)っぽい「ノーライン」のカラーから、明るい乳白色に変化しています。頑丈です。

「3連ペグ」に共通している点は、裏側にPat Numberが刻印されていないことです。独立したクルーソンには、古くから「Pat No. D-169400」や「2356766」の数字が刻印されています。なぜ3連には打刻されなかったのか、不思議ですね。

クルーソン・ペグを年代別に分析 - ヴィンテージ・ギブソン編

時代は流れて60年代初期~中期です。「クルーソン・デラックス」になります。この頃からは、「シュリンクするツマミ」は見当たらなくなります。

60年代後半になると、SGモデルやMMに搭載されている「ギブソン・デラックス」の登場です。もちろん「クルーソン社製」ですので、刻印以外はまったく同じスペックです。

昔は苦労したリプレイスメント・ペグ探し

さらりと見てきた「3連クルーソン」ですが、いざ、ペグだけ探すとなると昔は苦労しました。レスポール・スペシャルのリプレイスメント・ペグを探した時のお話は「3連ペグ概論(1)」でご紹介した通りです。1990年前後、まだインターネットもeBayもありませんから、ヴィンテージギターのパーツ探しなんて、本当に「古い楽器屋の不用品箱を勝手に漁らせてもらう」ことぐらいでしか発見できません。

この「アトランタのフェイマス・バーゲン・ミュージックで、オーナーのJack Spenceから厚意でもらった、リッチ・ロビンソンのペグ」を、時代考証が一致する「ノーライン・シュリンク」に交換して、オリジナル度をアップしたいと思います。もちろん、リッチのペグは大切にコレクションしておきます(微笑)

ノーライン・シュリンク:ボタンは縮んでいますが、しっかりしています
シングルライン:乳白色のボタンは縮まないタイプ
ダブルライン・クルーソン:少し濃いめのミルキーホワイト
ダブルライン・ギブソン:また少しホワイトの色味が変わっています

工場の生産性を重視し、取り付けネジを12本から8本に削減した、効率化のための「3連ペグ」。時代とともに、これだけのバリエーションがありますから、手元のヴィンテージ・ギブソンの3連ペグをリプレイスするときには、同一スペックを慎重に吟味することが大切ですね。最近では、上質な復刻ボタンを製造販売している北米のマニアもいますので、後編では2種類の復刻ボタンを紹介しながら、リペアの様子をレポートします。

 次に読むなら

3連ペグ概論(1) - ギブソンの効率化が生んだ愛おしい工夫の賜物
効率的なギター製造のために、ギブソンはいろいろな工夫をしてきました。今回は工場のアッセンブリー工程でペグの取り付けの手間を大きく省いた、愛おしい工夫の賜物「3連ペグ」に注目。多彩なスペックでヴィンテージギターマニアを惑わす、ディープな世界をご紹介します。

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