Manny’s MusicのLes Paul 前編
惜しまれつつも74年の歴史に終止符を打ち、2009年に閉店した「Manny’s Music」。特別な想いがこもった「Manny’s Music Order」の一本は、飛騨高山から濃飛バス「7008便」で、新宿バスタに定刻通り到着した。すべてが凝縮されたような、Henryのレスポール・スタンダードを、改めてじっくり見るまでに25年の歳月が経っていた。
25年ぶりの里帰りを果たす「Les Paul Sunburst」。特別な想いがこもった「Manny’s Music Order」の一本は、飛騨高山から濃飛バス「7008便」で、新宿バスタに定刻通り到着した。
今いるのは、4階の出発ロビーだから、エスカレーターで3階まで下がろう。
ここだ。
前回ゴールドトップを受け取りに訪れてから半年以上経っただろうか。
ゴールドトップ、永遠(とわ)へ 第一話 「再会の日」
2023.4.28
私にとって、もはや「ギター受け渡しの聖地ともいえる存在」、と表現するといささか大げさだが、まあバスタ気分は概ねそんなところだ。
家まで待ちきれなくて、甲州街道沿いの歩道でパシャリ。後ろではストリートミュージシャンがアコギをかき鳴らしながら、横目で様子を伺っている。ここには、私以上に怪しい人物は存在しない位、背広とバーストとバスタはアンマッチだろ?
このレスポールは、ショップオーダーならではのスペックを随所にちりばめていて、すごくレアなんだ。プレミアム・リイッシューに詳しいファンの人でも、Manny’sのレスポールを知っている人は、ひと握りに違いない。あらためて紹介する価値はあると思うよ。
あ、そもそも、Manny’sってショップ、NYCにあった歴史ある楽器店なんだけど、ちょっと紹介しておこうか。私がお店に行ったのが、1985年だから創業から50年が経ってたんだ、ちょうど。1968年に48th Streetに移転したらしい。
Jimi(Hendrix)のレシートの日付は、1970年7月14日だね。ってことは、新装開店早々のManny’sの店頭で彼はストラトを買ったんだな。そういえば、Manny’sは、ガンズ&ローゼズのMV「Pradise City」にも登場するから、観てみると良いよ。
で、レスポールに話を戻そう。1980年初期は、日本ギブソンが59Vintageを企画したり、Heritage Seriesでマホガニーネックが再評価された、第一期ヴィンテージ復刻ブームだった。レッドバンクスのGuitar Trader(ケーブルテレビのコマーシャル動画)のレスポール・スタンダードは完成度の高さと搭載されたヴィンテージパーツで、長年コレクターズアイテムだったし、Leo’s Vintageもアッパーリンクオーながら、良質のメイプルトップと比較的軽量のマホガニーを纏って一世を風靡しているよね。Jimmy Wallace MODELも、皆こぞって手に入れたがった。私も、そのうちのひとりだ。
そして、この「Manny’s」のレスポール・スタンダード。
前オーナーは、「これは特別なショップ・オーダーだから、大事にすると良いよ」と教えてくれた。ワイドフレームのカッコ良さに加えて、ショップオーダーならではの、特殊なスペック。ずっと気になってた。ギターショーで知り合いになったHenry (Goldrich)さんは、Manny’sの二代目経営者で、Manny Goldrichさんの息子さん。余談だけど、Goldrichっていう苗字、凄いよね。まさに「お金持ち」って直訳。で、そのHenryにギターの写真を見せたら、「おお、めずらしいギター持ってるねえ。14本しかない、うちのショップモデルだよ。あ、違う、12本かな?」って、ちゃんと、しっかり覚えていた。
やっぱり「美しくもインパクトのあるトラメ」って、誰の脳裏にでも焼き付くんだよね、ギター好きなら。Henryは、こう続けた。「店によく来るエアロスミスのBradleyが、NJのショップで話題になっているレスポールの事を話してくれたんだ。当時、そのショップはケーブルテレビでコマーシャルもやっていてね。で、Bradleyファンの若者が、自分たちも「Guitar Trader」みたいなレスポールが欲しいって言い始めた。だから、当時出入りしていたギブソンの担当営業(正しくはNorlinのセールスマン)に、相談したのさ」
「彼は、こう言ってくれた。“今、バックオーダーで生産が追い付かないんだけど、なんとかしよう”って。でも3ダースオーダーしたのに、納品されたのは14本だった。あ、12本だっけかな…?」
「届いたギターを見て、Bradleyは、“カッコいいけど、ヘッドのGibsonロゴがヴィンテージとちがうね”って言ってたな。現行モデルに採用されているのと同じロゴだったんだよ。わしは、そんなに気にならなかったけどなあ…」
「で、とにかく木目が全部派手でイカシてた。14本とも。店頭に飾ったら、そりゃあ、目立ってたね。48丁目界隈の楽器屋の店頭には、ウチみたいなクールな特注レスポールなんて無かったからさ」
惜しまれつつも74年の歴史に終止符を打ち、2009年に閉店した「Manny’s Music」。ポール・サイモンが最初のアコギを買った店、Bob Dylanの落書きが記された壁、ジミヘンがストラトを弾いていた店頭。すべてが凝縮されたような、Henryのレスポール・スタンダードを、改めてじっくり見るまでに25年の歳月が経っていた。
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