Stratosphereにゴー! - 55年と65年のストラトキャスター

登場から60年が経った今でも、当時と変わらないデザインで活躍するフェンダーのストラトキャスター。岐阜のコレクターの方から譲り受けた55年製と筆者がアトランタで手に入れた65年製の個体を見ながら、ギターの物語に思いを馳せてみましょう。

成層圏への憧れ

VM(Vintage Maniacs)めずらしいですね、Vintage Maniacsでストラトキャスターを扱うのは。

FV(Fukazawa Vintage Club)成層圏への憧れさ、当時の。Stratosphereという単語自体が「成層圏」だから。

VMこの写真のストラトは1955年製ですね。この時代は宇宙と言えば月面着陸どころか、やっと人工衛星打ち上げを宣言…みたいな頃ですよ。

FV60年たった今も、当時と同じデザインの工業製品が現役で活躍しているというのは脅威だな。インターネットやBS放送も存在しない時代だからね。当時の電話と現在のスマホを比較すると、その格差はSF映画でも想像できてないよ。

VMレスポールもそうですが、フェンダーとギブソンが発表したギターの完成度がわかりますね。

55年と65年のスペック比較

FV55年と65年のストラトを見てみよう。10年の間にロゴとかフィニッシュの色合いが変化している。

VMストリングガイドとか、ちょこちょこ改善というかコスト削減されてますね。

FVハードケースも、ツイードの生地が傷みやすいとわかると、すぐに耐久性に優れたビニール素材に変更している。フェンダーもギブソンも50年代のハードケースは茶色で、60年代になると黒くなるのは不思議な縁だな。

コレクターの世代交代

VMこのギターは岐阜のコレクターの方から、ご友人を介して譲り受けたんですよね?

FV購入当時の手紙やチラシが入っていて、丁寧なやり取りに時代を感じたね。コンディションが抜群にいいだろ?亡くなられたオーナーは、昔ドゥカティのコレクションを1台手放して、これを購入されたと書いてあったよ。岐阜といえば、世界に1台しか現存しないアルミボディのフェラーリ・デイトナが40年ぶりに発見されて話題になった聖地だけど、このストラトも同様の発見だね。土地の人柄が伝わる。

飛騨高山にて
飛騨高山にて

VMえ、335もあったんですか?

FVそれは別の機会に紹介するよ。

VM日本でもコレクターが世代交代しているのがわかりますね。

FV80年代は、工業で栄えたアメリカの田舎町を旅すると、Pawnshop(質屋)で、なにがしかの60年代ギターを発掘することができたが、eBayが登場してから個人が持っているお宝は人目に付きやすくなったし、枯渇した。今ではeBayですらショップの出品がほとんどだ。

VMそれだけ市民権を得たということでしょうか。

ロマンチックな出会い

VMこの65年は随分昔から持ってますよね。

FVそうだね、1989年にアトランタで手に入れたから30年ぐらい持ってる。愛器というか、相棒というか、思い出そのもの。

VM同じ工場で作られて、遠く日本に持ってこられて、たまたま東京で出会うってロマンチック…って言いたいんでしょ?

FV当時フェンダーの工場で働いていた工員さんたちは感無量だね。

VMえ~、作っている人、あまりそんな事考えてないと思います。

FVなんだ、ロマンが無いな、君は。

VM自分だって、いつも「工場でガンガンフレット打って流れ作業で作ってたんだろ」って言ってるじゃないですか。今度はちゃんと分解してパーツとかディテールの紹介をやってくださいよ!

FVわかったから、今日は写真だけしっかり見つめて思いを馳せてくれ。

VMりょ。

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