日曜日のギターは、このやろー!! Part 2
ギターマニアって、ギタリストでもコレクターでもルシアーでも、みんな「ギターっていうレディに恋してる」んだ。今日も、Vintage Maniacsを読んでくれて、みんな本当にありがとう!
前回の「日曜日のギターは、このやろー!! Part 1」では、定年を迎えるサラリーマンの趣味について、勝手に書かせてもらった。このところ周囲でもリタイヤ(卒業とか再出発とか言い方はいろいろあるけれど、まあ、世間で流行っている小説には「リタイヤ」って書かれてたな)した同期が「昔から絵を描きたかったので…」とか「陶芸を…」「忙しい時には出来なかった料理を…」「山登りや写真を始めたい…」「楽器演奏したくて…」と言っているが…。実際に一年ぐらい経ってから、どうなったかと聞いてみると「やってみたけど上達しなくて、続けていない」とか、「いろいろ他にやることがあって…」などなど適当な理由をくっつけて、まあだいたいが「頓挫」しているわけだ。
偉い華道家の先生が言ってた。そもそも「やりたいと思っていたが、やっていない」事なんて、時間ができたからといって無理にやり始める必要ないし、やらないよ、時間があっても。「やりたい事」って、本当にそう感じているなら、忙しくてもしんどくても、人生のどこかで絶対にやってるんだ。続けてるんだよ。
もちろん、仕事とプライベートのパワーバランスって、年齢とともに職責が重くなればなるほど、とりにくいし時間も拘束されがちだ。だからこそ、毎日10分デッサンするとか、いつもカメラを持ち歩いて気が向けば写真撮るとか、食べておいしかったレストランのシェフに会ってみるとか、ちょっと遠回りして熱帯魚屋を覗いて帰るとか。日常生活の中に自分が興味ある事と接点を持ち続けるって、意識しなくても自然にやっちゃうんだろうね。俺もそう思うよ。
みんなにとって、ギターがそうだろ?忙しい時ほど手に取って「レイラのフレーズ」を弾いてみたり、試験勉強中に無性に「ハイウェイスターのイントロ」を奏でたり、年度末に残業が重なって、疲れて家に帰ってから無性に弦を張り替えたり。
かの「アルバート・アインシュタイン」だって、モーツァルトを愛し、どこにいくにも愛用のヴァイオリンを携えていたんだから。だから「忙しいのにギターばっかり弾いて」って言われると、「むっと」くるんだよなあ。「忙しいからギター弾いて、感性のバランスとってるんだよ!!」ずばっと言い返したいぜ。10倍になって返ってくるから、まあ大人の俺は心の中でだけ叫ぶことにしているけど。
そうそう、ちょっと横道にそれるけど「デッサン」で思い出した。絵を描くって、対象物をしっかり見ることから始まるよな。「どこがどうなっているとか、この曲線はこうなって、あれとこれがどう繋がって…、丸くなくて四角くなくて、ストライプは何本で…」って感じで。
20年近く絵をならってた訳だが、とにかく鉛筆デッサンとか木炭デッサンとか、毎回毎回、ずっと白黒の世界でレッスンするんだ。小学生の頃は、それが嫌だったね。早く色を塗りたくて。でも、二十歳を過ぎたころから、「ああ、観察するってこういうことか。形状や構造、構成を理解するヒントみたいなものが、ここからくるのか」って感じたことがあった。
高校時代、大村憲司さんのお宅に遊びに行ったんだけど、335を弾きながら「三ツ井さあ、なんでギブソンはスイッチのワッシャーの溝、増やしたんだろうね?」って言うんだよ。俺は「あ、この人、俺と同じぐらい良くギターのディテールを見てるなあ」って。そんな奴、他にいなかったからね。でもパーツオタクでもマニアでもなくて、自分が使う相棒としての道具を、感性で観察してるんだなあ…。
見比べようとして溝を数えるんじゃなくて、大村さんにとっては、店頭の新品をパッと見たときに「自分のと、なにかが違う」と感じる直観があったんだ。それって、ギターの観かたがアートだよね。そう思うようにしているよ。
話を戻すと、定年後の時間の過ごし方(笑)とにかく無理やり趣味を作るって必要はないみたいだから、「自分がずっと好きだったのは何だっけ?」って、小学校時代や中学時代を思い出してみようよ。もしかしたら、本当に興味があったのは、記念切手集めだったり、クワガタムシだったり。ジャンプの裏表紙に載ってた「シーモンキー」かも。
そんな「好きなもの、好きだったこと」を、ちょっと歳を重ねてから思いだして、もう一度、その場所に戻ってみる。タイメックスの古い時計を集めてみると、一本一本のデザインに「あ、これ欲しかった」とか、「吉岡先輩が見せびらかしてたな…」とか。山に出かけて、ブナの木に集まる甲虫の写真を撮るのも楽しいよ。
俺の友達、工業デザイナーで上場企業の役員なんだけど、「色と形がきれいだ」と言って、ゾウムシ集めまくってる。ちょっと前までは、崎陽軒の醤油さしを収集してたから、ああいう「楕円形の立体物」が好きなんだろうね。
ギターって、本当に素敵だよ。抱いて寝ちゃいたいね。曲線とかハードウェアとか、もちろんサウンドもそうだし。女性っぽいんだよね、存在が。だからじっくり舐めるように見ちゃうし、沢山いろんなモデルを手に入れたい、手元に置きたい。ギターマニアって、ギタリストでもコレクターでもルシアーでも、みんな「ギターっていうレディに恋してる」んだ。今日も、Vintage Maniacsを読んでくれて、みんな本当にありがとう!
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