ヴィンテージのレスポール・ジュニアをマニアックに解析

ギブソンはレスポール・スタンダードと並行して、普及モデルであるジュニアとスペシャルをラインナップに加えました。今回はジュニアに搭載されたP-90ピックアップを中心に、ヴィンテージの仕様や特徴を細かくご紹介します。

ドッグイヤータイプのP-90ピックアップ

特徴的なピックアップカバーの形状

レスポール・ジュニアに搭載されたこのピックアップはドッグイヤーと呼ばれ、「読みかけの本の折り目」に似たピックアップカバーが特徴です。スペシャルやスタンダードに搭載された「ソープバー」は、クリームとブラックの2色がありますが、ドッグイヤーは60年代のカジノや70年代のSG100などを除くと終始一貫してブラックです。

ピックアップの高さは調整できず、「カバーの高さ=ピックアップの位置」になっているので、細かな調整はポールピースで行うしかありません。

ピックアップカバーは後年とも共通しており、裏側に「UC-450-1」という数字が読み取れます。

サイドから見るとカバーがスラントしていない様子が良くわかります。

錆びやすいベースプレートと割れやすいボビン

ベースプレートの左右に耳がついており、この部分でねじ止めします。プレート自体は非常に錆びやすいというか粉をふきやすい素材で、経年によっておおむね次の画像のような見た目になっています。ワイヤーは紙テープで絶縁され、無造作にハンダで取り付けられています。

PUキャビティがとても丁寧に加工されているのがわかりますね。

PUカバーをボディに止めているネジは、クルーソン・ペグを取り付けるネジの流用ですので、年式によってネジ山の位置が異なります。次の画像のネジは、ネジ山が途中で途切れている50年代の仕様です。

ピックアップを横から見ると、ボビンが薄い素材であることがわかります。故に、手荒に扱ったり、ポールピースを締め付けすぎたりすると「ペチッ」という音がしてヒビが入ってしまいます。ひび割れなど「けが」をしたヴィンテージのP-90を頻繁に見かけます。

年式によって異なるマグネット

60年代初期の個体と比較しても外観は似ているため、単体での見分けは困難です。ですが、いったんバラしてみると50年代のP-90ピックアップはPAF同様にロングマグネットが2枚搭載されており、60年代初期とは異なります。60年代はトランジットの時期がありますが、だいたい62年前後でショートマグネットに移行するようです。

ヴィンテージらしい2スタンド・ワイヤー

PUから出ているワイヤーは「2 stands per braid」と呼ばれる、2本で1ブレイドになっているタイプです。後年の「3 stands per braid」とは見た感じも違いますね。

レスポール・ジュニアの特徴

シリアルスタンプの変化

ヘッド裏のシリアルナンバーは黒インキです。後年はボディバックやネック裏のフィニッシュがよりダークブラウンになるため、視認性を上げる意味でゴールドトップに使われていたのと同じような金色のスタンプに変更されます。

3プライのジャックプレート

このギターは弾きこまれているのにパーツのオリジナル度が高く、ジャックプレートは3プライ(黒・白・黒)のオリジナルが残っています。59スタンダードのクリーム1プライと違って良質のレプリカがない貴重なパーツですね。

シンプルなロッドカバーとデルリンナット

トラスロッドカバーはジュニアの特徴でもあるブラックのワンプライで、非常にシンプルなルックスです。ネジは溝が途中で止まっている50年代の特徴が見られます。

ロッドカバーを外すとトライアングルの溝にトラスロッド調整用ボルトが見えていますが、これは50年代から70年代までおおむね共通した仕様で、大きな違いが無い部分です。

ナットはレスポール・スタンダードなどと同じデルリンで、半透明の乳白色です。

ウロコ柄がきれいなポジションマーク

ポジションマークを見てみましょう。セルロイドのバーティカル・ストライプはウロコ柄がきれいに出ていますね。近年復刻されてポピュラーになったヴィンテージのインレイと比べてみました。ヴィンテージらしい素敵な模様ですね。

コントロールノブ

このギターのコントロールノブはスタンダードと共通のトップハットノブですが、本来はバレルノブでも良い時期だと思います。もしかすると交換されているかもしれません。

コンデンサ

50年代初期のころはまだSpragueのバンブルビーではなく、油紙で巻いたようなコンデンサです。

良質なマホガニー

塗装が剥げた部分から覗くホンジュラスマホガニーの色は褐色のダークブラウンで、良質な木材を贅沢に使えた時代であることがわかります。

ブラスポストのクルーソン・ペグ

ヘッドストックを詳しく見ていきましょう。

ペグのポストは、この時代は一貫してブラスです。メッキが剥げると本来はゴールドっぽい色が出てくるはずですが、ブロンズ色に見えるのは錆びの為です。

3連の「Kluson Deluxe」シングルライン・ノーネームです。ネジも当時のオリジナルです。

クルーソン・ペグの変遷

取り外したペグも見てみましょう。クルーソンは年代順に、「シングルライン・ノーロゴ」、「シングルライン・Klusonロゴ」、「ダブルライン・Klusonロゴ」、「ダブルライン・Gibsonロゴ」と移行していきますが、今回のシングルライン・ノーロゴは最も初期のモデルです。

スタンダードの影に隠れているけどおすすめのギター

いかがでしたでしょうか。レスポール・ジュニアはスタンダードの影に隠れ、ローエンドのスチューデント向けギターと評価されがちです。しかしフロントピックアップのザグリがない分、ネックから伝わる弦のヴァイブレーションをストレートに響かせていて、ドライヴィング感は上位機種以上だと思います。

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