音の本棚『日本スポーツグラフ④ 楽器の本』1976年のアーカイブス (前編)
この時代、そしてこの雑誌に対する個人的印象は「ハイエンドなカスタムギター登場」「Roland JC-120」そして「Zemaitis」である。前編ではアレンビックの工房の取材記事や、時代を代表するアンプ「JC-120」について見ていこう。
目次
若者の味方「関西楽器社」のエキスプローラー
日本スポーツグラフ④『楽器の本』が発刊された1976年は、ジャンプで「こち亀」の連載がスタートしたり、ピンクレディーがデビューした思い出深い年だ。授業の合間の休み時間には、あの「ペッパー警部」の振り付けを「どれだけ正確に覚えたか」を競う、同級生※のにぎやかな時間が流れ、洋楽三昧だった私にも、歌謡曲のポップさを認識させてくれた貴重な年でもあった。
(※映画プロデューサーの一瀬君のことです)
冒頭から余談で恐縮だが、この雑誌を本棚から引っ張り出すときに、ハラリと落ちた一枚の切り抜きがある。
「なんだ、エキスプローラーか」と思うなかれ。これは、「レアなSG」で紹介した「若者の味方 P&R関西楽器社」の貴重なコレクションで、ずっと探していた切り抜きだ。偶然にも唐突にも、奇跡的に「本棚のすき間から」発掘できて嬉しかった。シリアルナンバー「84545」のオリジナルコリーナ・エキスプローラーは、記述によると「日本に一本だけ(1979年当時)」とあるが、実際に当時関西楽器に入り浸っていた私にとっては、店頭のガラスケースに普通に掛けられていて、頼めば触らせてくれる身近なヴィンテージだった。ペグは、丸ボタンのクルーソンに交換されていたっけ。コンディションもすこぶる良かったので、写真をご鑑賞いただきたい。
アレンビックとGibson Theodore
話を『楽器の本』に戻そう。ここにギブソン・カスタムショップが2022年3月に発売した、一本の「復刻モデル」の写真がある。
私は、この「Theodore(セオドア)」と呼ばれるギターのデザインを見たときに、即座に『楽器の本』そして「アレンビック」の事を思い出したのだった。
この時代、そしてこの雑誌に対する個人的印象は「ハイエンドなカスタムギター登場」「Roland JC-120」そして「Zemaitis」である。
そんなわけで、ギブソンがあまり登場しないVintage Maniacsになってしまうが、お付き合いのほどを。
まず、「ハイエンドなカスタムギター登場」から見ていこう。憧れのアレンビック社を取材した記事が目をみはる。
何度も何度も、写真の片隅まで穴があくように見た。タイトルはこうだ。
アレンビック。恐るべき音の錬金術師たち。リック・ターナーとその仲間
東スポのプロレス記事みたいだな。ライターが伝えたかった臨場感というか、「アメリカで取材して、そのスケールにビビったぜ」っていう熱量が伝わってくる。自分が雑誌といっしょに、アメリカを旅している気持ちになった。
「リペアに持ち込まれたアンディ・ガルシアのギターが…」とか「カルロス・サンタナのオーダーで…」と書かれた記事に、「おー、サンタナがギターもって楽器店にくるのか。プロのギターを触れるなんて、すごい役得だなあ…」などと、勝手なイメージで垂涎の憧れを抱いたものだ。
工房の写真を見てほしい。壁に掛かっている、プロトタイプのようなデザインのギター。その中にある、2本の「バンザイダブルカッタウエイ」が解るだろうか。
アレンビックのデザインは、ヘッドストックこそチンポヘッド(エピフォンのメロディーメーカーヘッド)っぽくて、ギブソンのバナナヘッド6 in Lineと異なっているが、ボディとカッタウエイのデザイン・ニュアンスは瓜二つだ。
ギブソンはスルーネックではないが、ボディセンターに直線のアクセントが入っている。時代は、もちろんGibsonのほうがこの時点で20年近く早くデザインされているのだが、私にとっては「立体物」として目にする画像では、アレンビックの「バンザイDC」のほうが、ずっとずっと前の出来事なのである。
長寿モデルの名機「Roland JC-120」
『楽器の本』といえば、1975年に登場した「Roland JC-120」。この時代を代表するアンプとして、記憶に残る名機だ。
いまでもスタジオに常備される長寿モデルだから、これを読んでくれている20代の若者でも、美しい「伝説のJCクリーントーンと空間合成コーラスサウンド」は、耳にしたことがあると思う。
当時の定価が139,000円と記されている。同じモデルが現在でも現役で製造・販売されており、新品店頭価格がだいたい120,000円前後だから、40年経っても昔のままという、気骨あるローランドの代表作だね。繰り返しになるけれど、『楽器の本』といえば、エレキ、アコギ、アンプにドラムやキーボードまで、薄く広く網羅した総合カタログ的なバイブルだったから、ページを捲ると、そこにはJC-120への憧れがあるって感じだ。
MXRも、このデザインが当時の現行品でした。カッコいい!
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