まだまだESシリーズがメジャー - 1961年のギブソン・カタログ

1961年のギブソンはソリッドボディのフェンダー社に対し、ジャズギターやアコースティックギターを製作する高級楽器メーカーのイメージが強く、ヒットチャートで活躍したレスポール人気とは裏腹に、店頭ではまだまだエレクトリック・スパニッシュ・シリーズがメジャーだったようです。

1960年のギブソン・カタログにサンバーストのレスポール・スタンダードが265ドルで登場してから1年後の1961年には、表紙がギブソン・レッドに塗られた新しいカタログが登場します。2色刷りになった以外、デザインは1960年版とまったく同じです。当時のギブソンはソリッドボディのフェンダー社に対し、まだまだジャズギターやアコースティックギターを製作する高級楽器メーカーのイメージが強く、ページをめくるとByrdlandやES-350といった当時を代表するジャズ・ギタリスト愛用のモデルが、500~700ドルという高額で登場します。レスポール・スタンダードの2倍以上の価格ですね。ハードケースも50ドルと高価です。

Barney Kessel(560ドル)やES-355(595ドル)が、ES-350よりも高額だったのは少々意外です。

次のページではセミアコースティック・モデルが前年のモデルよりも充実していますが、ES-330の2ピックアップ・モデルが、なぜか前年より5ドル安くなっています。1960年のカタログではES-330(2PU)とレスポール・スタンダードは同価格でした。

ESシリーズは、まだまだ続きます。ES-125は2PUやカッタウェイ、3/4と多様なバリエーションがあり、価格的には200~300ドルとソリッドギター並みの比較的入手しやすい価格設定だったのでしょう。1961年の出荷本数をみても、SGスタンダードのの1,662本に対し、ES-125はシリーズ全体で3,300本以上になりますから、当時はヒットチャートで活躍したレスポール人気とは裏腹に、店頭ではまだまだエレクトリック・スパニッシュ・シリーズがメジャーだったようです。

さて、ようやくソリッドボディ・ギターです。ななめ上を見上げて唄うレスポール氏の写真は1960年のカタログからの流用ですが、ギターがSGシェイプになりました。しかもSGカスタムは、レスポール・カスタムよりも30ドル値上がりして425ドル、スタンダードも25ドル値上がりし290ドルとなっています。製造工程から考えると、明らかにレスポール・モデルのほうが工数・原材料など高かったはずですが、この一年差でSGスタンダードを290ドルで買った人は、50年後にその格差にさらにびっくりするわけです。

SGスペシャルにはLimed Colorが追加になっていますが、実際ヴィンテージ・マーケットで良くみかけるのはPolaris Whiteです。カスタムやスタンダードにはリコメンドしていない、Durabiltケースが15ドル。その上には聞きなれないArchcraft plush-linedケースというのがありますが、これは天面と底面がべニヤ板になっている安価なタイプで、チップボードよりは若干耐久性が高いケースです。

SGジュニアとメロディーメーカー(2PU)は同じ価格です。現在の市場でも60年までのメロディーメーカーは、その質の高さとシングルカッタウェイから出る図太い低音が人気ですが、この時期ダブルカッタウェイになっても、本質的には大変作りの良い楽器として評価されています。このカタログではサンバーストであるはずのボディシェイプに、チェリー(?)レッドのカラーリングが施されていて、少し違和感があります。

このカタログは裏表紙には1962年印刷とあり内側には1961年とありますが、いずれにしてもこの次のモデルチェンジはファイヤーバードが鳴り物入りで登場する1964年前後までお預けとなってしまうわけです。

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