モダンなデザインへの憧れ - Moderne 総括(1)
自分以外に「モダーンというギター」に傾倒しているマニアを見つけたときは驚きを禁じ得なかった。このシリーズでは、フライングVなどの影に隠れながらもファンを魅了するモダーンを3回にわたって紹介する。
目次
いつのまにか復刻されたモダーン
現実には存在しなかったのに、雑誌に掲載された古い特許のデザイン画がコレクターの間で話題になり、まことしやかな噂が広まるにつれ、ギブソンの商品企画部門が動いた。TwitterもSNSも無い時代に、モダーンはゆっくりと、そしていつのまにか復刻されて、我々の目の前に登場したのだった。1982年は、ギブソンにとって「リイシュー」という単語が最も輝いた記念すべき年だったろう。
モダーン好きのRonald Lynn Wood氏
よく「世界には、同時に同じことを考えて、同じように行動している人が、かならず2人以上は居る」といわれるが、自分以外に「モダーンというギター」に傾倒しているマニアを見つけたときは、なにか、ガラパゴスのロンサム・ジョージが、同種のリクガメに出会った時のような偶然の驚きを禁じ得なかった。
Ronald Lynn Wood氏がエアメールで沢山のモダーンの写真を送ってくれたのは、随分昔の事になる。彼は、その後「モダーン好き」が高じて「Moderne: Holy Grail of Vintage Guitars」と題された写真集を発刊するまでになった。
Glenn Miller氏が製作したモダーン
上の写真には、ナチュラル、メタリックレッド、ブラック、ホワイトの4色が登場しているが、このほかにも、マップギターの記事で紹介したアメリカンフラッグ・ペイントのショーモデルや、12弦も試作されたというから、まさに幻の復刻というに値する。Ronald氏の写真集で興味深いのは、カラマズー工場の閉鎖時に、当時の工員によって持ち出されたボディやネックの残材である。
コリーナだけでなく、ここにはマホガニーシェイプのモデルや、スプリットヘッドのモデルが写真で紹介されている。
工員からこれらのマテリアルを購入したルシアー「Glenn Miller氏」は、パーツを搭載し、塗装を仕上げて、3,500~4,000ドルで販売した。当時、17本を完成させたと語っている。もともとのコリーナ・モダーンが、企画段階で「500本限定」と謳ったギブソンの広告と裏腹に、商業的失敗から143本しか出荷されなかったことを考えると、メタルパーツやピックガード、ボディ、ネックがパーツ倉庫に余っていても不思議ではないだろう。
下の写真の一番手前のマホガニー・モダーンは、Glenn氏によって作業され販売された個体のひとつである。
詳細画像は「総括(2)」で見るとして、スプリット・ヘッドストックにチャンキーなネック、ヘリテイジシリーズとは異なるコントロールレイアウトなど謎が多い、コレクター泣かせの一本と言える。
パテントのイラストに忠実にワンピースコリーナで製作された、カスタムオーダーのしゃもじヘッドも、Glenn氏によって模られたスラント・ピックガードが搭載されており、82年の復刻版よりも、リアルにヴィンテージな雰囲気が漂っている。
絶対に完結しないコレクション
これだけステージ映えするデザインなのに、フライングVとエクスプローラーの影に隠れて、マニアックなファンを魅了するモダーン。突然2012年と2019年に復刻されるが、いまだにコリーナでの再生産はなされていない。
謎に包まれたモダーンがヴェールを脱ぐたびに、コレクションの本数が増えてきた。しかし、59年当時のオリジナルが存在しないが故に、絶対に完結しないコレクションだ。次回以降は、ノスタルジックに浸りながら、カスタムオーダーの逸品や、当時のワランティカードなどを含む詳細画像をご紹介しようと思う。
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