ES-175 - GibsonによるGibsonのためのGibson的な決断(後編)
ES-175にクローズアップする企画の後編。今回は70年代初期でもスクエアウインドウ付きのナンバードPAFが搭載されている理由の推測と、ブリッジ周りのスペックの違いを観察していきます。
目次
スクエアウインドウ付きナンバードPAFの年代
この個体のピックアップは良い感じです。ギブソンのアーチトップ・モデルでは、ときたまギターの年代が60年代後期や70年代初期でもスクエアウインドウ付きのナンバードPAF(60年代初期)を搭載していることがあります。オーナーはラッキーですね。では、なぜこうなったかを推定してみましょう。
175のアッセンブリーは、ギター取り付け前にほとんどのポットやピックアップ、インプットジャック、トグルスイッチのワイヤリングを済ませて、その上で、ピックアップキャビティから中に入れ込んで搭載しているように見えます。
ポットは缶に包まれるように封印されハンダで固定されているので、ギターにピックアップを搭載してからポットに配線するのは難しいというか、すごく手間というか、不可能に近いですね。
「あらかじめ前工程でハンダ作業を完了したアッセンブリーユニット」を、出来上がったボディに搭載したのしょう。
ES-175の生産本数が増減することでアッセンブリーの出荷時期が後ろにずれ、結果として60年代前期のユニットが60年代後期の個体にセットされ出荷されたと考えてみると辻褄が合いそうですね。実際、この2基のピックアップは、ともにスクリューが「+(プラス)」ですから、おそらくカバーを外すと白黒リードのスクエアウインドウPAFが現れます。
M-69エスカッションとGibson Deluxeペグ
さらに嬉しいことに、ピックアップリングはトールエスカッションで足つきのM-69です! これは、まんま1959のレスポール・カスタムなどのスペックですね。
エスカッション・マウント・スクリューも、しっかりと50年代でした。
一方でペグを見ると、Kluson Deluxeではなく、すでにGibson Deluxeに移行しています。
これは60年後期というか、ほぼ70年代のスペック(ただしブッシュは50年代のスラント)です。ダブルリングがヘッドに干渉しそうです。画像のシリアルナンバーもご参照ください。
ローズウッド製ブリッジとメッキの謎
ESシリーズでおなじみのローズウッド製ブリッジも年代によってスペックが異なります。60年代中期以前には、脚の股の部分が長い写真右側のものが採用されていました。
オーナーの方やコレクターの方は経験されているかもしれませんが、このブリッジ、弦交換の際に不用意に落とすと「カッキンッ」という音がして、脚の角の部分が容易に折れてしまいます。強度的にも問題があったのでしょう。60年後期からは脚の短い左側に移行していきますし、アフターパーツで販売されているブリッジも、このタイプが多いです。このあたり、しっかりと日々の改善活動を実施しているギブソン社の現場の良心が見てとれます。
次の写真下段はリプレイスメントパーツとしてオレンジボックスに入った状態で販売されていたブリッジです。ABR-1搭載用のため、エレベーションリングがメッキされています。ちなみにES-175やES-125に搭載された写真上段のタイプはブラス素材そのままで、メッキは施されていません。
この違いは、なんでしょうか。ABR-1を載せるものはメッキする。ローズウッドを載せるのはメッキしない…。区別して管理する方が、めんどくさくて手間とコストがかかりそうです。
シリアルについて、もう一点。ヘッドのシリアルナンバーと同じ番号は、ボディ内部に貼付されているオレンジラベルにもスタンプされています。ただし、フォント(文字)は従来のヘッド裏に用いられたスタンプと異なる、大きくて武骨な形をしています。
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