バダスブリッジとギブソンの蜜月

ヴィンテージ・ギブソン・ファンにとって、コンビネーションブリッジとバダスは切っても切れない蜜月の関係です。モデルチェンジの歴史を追いながら、バダス・ブリッジの特徴を見ていきましょう。

ヴィンテージ・ギブソン・ファンにとって、コンビネーションブリッジとバダスは切っても切れない蜜月の関係です。もともとブリッジとテールピースが一体となっているレスポール・ジュニアやレスポール・スペシャルなどでは、オクターブピッチが甘くなりがちでした。その解決方法としてギブソン社は60年代にステアステップブリッジを考案し搭載するのですが、結果的にロックの普及とともに3弦が巻弦からプレーンに移行し、オクターブチューニングの問題は解決しないままでした。

そこに救世主のごとく登場したのが、バダスのブリッジ・テールピースです。日本では神田商会が輸入元となっており、当時の価格は9,000円です。

当時グレコが力を入れていたメロディーメーカーやレスポール・スペシャルのコピーモデルにMade in USAのバダスが搭載されていたので、お買い得なイメージがありますね。

このバダスは年代順に3回モデルチェンジがなされています。もっとも古いモデルは、ローリングストーンズのキース・リチャーズがレスポールTVジュニアに搭載していた、パテント(特許)申請直後のモデルです。特徴はサドルスクリューの留め口が、ひとつひとつブリッジ側のエッジを潰して固定している点で、ひと目でわかります。

上から見たときに、サドルを留めるスクリューの首の部分が見えているのがわかりますでしょうか。

裏側には、「LEO QUAN BADASS」と「PAT. APPL'D FOR」の刻印があります。

70年代にバダスに注目し、このブリッジを標準装備したギターがありました。B.C.リッチです。シーガルをはじめとして、モッキンバードやイーグルなど、B.C.リッチの主要モデルに搭載されたバダスは一躍有名になりました。

ギターの横の白黒写真は、楽屋でシーガルを弾くエリック・クラプトンですね。このギターにはゴールドのバダスが搭載されています。

初期のモデルは、使用頻度が高いとブリッジ・スクリューを支える本体の受け口が弱くなり、弦交換の際にコマが脱落するトラブルが散見されるようになりました。そこで最初の改良が加えられます。

サドル調整用スクリューの取り付け口が金型から変更され、スクリューの首が見えなくなります。内側にピンを取り付けて抜けないようにする構造は、ギブソンが70年代に登場させたナッシュビル・チューン・オー・マチック・ブリッジと同じです。

当時バラ売りされていたバダスのパーツ。
バラ売りされていたギブソンのナッシュビル・ブリッジのパーツ。
ブリッジごと交換する予算のないギタリストの為に、ていねいにバラ売りしていたショップのデッドストックの在庫。古き良き時代です。

この時代も裏面は「PAT. APPL'D FOR」で、特許ナンバーは刻印されていません。

バダスで気をつけなければいけないのは、年代によってスタッドフックの部分の厚みが異なり(多くの場合はスタッド側が狭い)、もともとついているギブソン製のスタッドだと搭載できない場合があることです。もちろんバダスを新品で購入すれば、スタッド(インチサイズ)も付属していますが、中古の場合はちょっと面倒ですね。

ヘッド部分が扁平で広いのがバダス純正のスタッド。上段の左2本は、バダス純正であるにも関わらず初期のモデルには適合しないので注意。
左側はスタッドにフック部分が入りません。

往年のギブソン・プレイヤーに愛されたヴィンテージ・バダス。現在ではバダス社製のモデルを見つけるのは困難で、中古でもヴィンテージであれば100ドル前後になってしまいます。この記事が「やはりヴィンテージ・ギブソンには、ノーブランド製品ではなくてBadassを搭載したいんだ!」とこだわるマニアの方の参考になれば幸いです。

最後に、ちょっとレアなバダスを2つ。

B.C.リッチの初期に搭載されていた、クロームとゴールドのコンビネーションです。ギターも特注なのか、パーツがコンビネーションになっていました。サドルスクリューの留め方で初期型だとわかります。

次の写真はデッドストックのゴールド・バダスです。第2期バージョンなので、サドルスクリューはすでにカシメではありません。スタッドもセットで販売されていたのがわかりますね。パッケージにMade in W. Germany(西ドイツ)とあるのが懐かしいです。

適応機種は結構網羅していて、珍しいところでは、SG Ⅰ、SG Ⅲ(なぜかSG Ⅱは無い)、Kalamazooなども記載されていますね。

上か5つ目の「Les Paul Sunburst」というのは、どれを指しているのでしょう…

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