音の本棚「Beyond my memory - Vの記憶」その2

『Vintage Guitar Magazine』に掲載されたカスタムメイド・ナチュラルVの考察、そして前回に引き続き『Guitar Trader’s Bulletin』を見ていこう。書籍によって記憶の点と点が結ばれていくのは不思議な気持ちだが、胸が躍る一瞬だ。

3本しか生産されていない特別なナチュラル・フライングV

ナチュラルのフライングVは、ツアーやライヴのステージであまりお目にかからないのに、不思議な魅力がある。80年代のVはレイジーの高崎君が愛用したこともあり、ホワイトが圧倒的に人気だった。楽器店に入荷しても白はすぐに売れてしまう。一方、ブルーやナチュラルは、梅田の楽器店の店頭に半年以上も残っていたから、「俺が買わんと、いつまでも売れへんのやろなあ」と、ショーケースの前を通るたびに思った。

Vintage Guitar MagazineのCustom made Flying Vは、そんな遠い記憶を呼び覚ますに十分なインパクトがある。

記事を見てみよう。ニュージャージーのオーナーから鑑定を依頼されたGeorge GruhnとJoe Spannによって分析された考察が、3ページにわたって掲載されている。それによると、写真のカスタムギターは、70年代にギブソンが「Custom Flying V」として出荷した3本の内の1本であるとしている。最初の1本が71年、次が73年、そして最後が74年。Georgeは、シリアル「625654」から、本器を「最後に出荷された74年モデルだろう」と結論付けている。いずれにしても、3本しか生産されていない特別なナチュラルVで、ゴールドパーツとバインディングは圧巻だ。

Georgeの写真を見た、Mike Hickey(Joe Bonamassaのギタテク)は、「ひと目でGuitar Trader's BulletinのCustom Vを想い出した」と言っている。私も写真を見て、まったく同じ連想をした。そして、その写真をナッシュビルのMat Koehler(Gibson製品開発部門長)に送ったところ、彼は偶然にも当時のスクラップから古いポラロイド写真を見つけた。この「出荷時の写真」は、貴重な資料として「ギターの真贋と存在を保証」している。

当時レッドバンクに住んでいた友人のJack Ponti も、このギターを覚えていた。それだけ印象に残るギターだったのだろう。たった一枚の白黒写真が、これまで40年間ギターファンを虜にしてきたのである。だから、ナチュラルのフライングVをみると、いつも「Guitar Trader’s Bulletin」を連想して胸騒ぎがするのだ。

細かなことだが、フライングVやエクスプローラーのピックガードは、やっぱり4プライが良い。スリムで上品だ。

ギブソンには、ハードケースもスリムに復刻してもらいたいね。オシリの金具もリメイクして…。

Hasn’t felt this good since ’59!

さて「音棚」の続きに戻ろう。当時のGuitar Traderは、ヴィンテージ市場を切り開いた東海岸の雄であり、エアロスミスをはじめとして多くのギタリストに支持された屈指のショップだ。Bulletinに掲載された、Brad Whitfordのコメント「Hasn’t felt this good since ’59!」は、Guitar Trader 59 Flame Top Reissueに向けられた名言で、当時このショップが単なる「ヴィンテージブローカー」でなく「企画力のある、ヴィンテージギターを熟知したマニアのショップ」だったことがうかがえる。

1982年は、ギブソン社がコリーナトリオと称して、モダーン、フライングV、エクスプローラーの三羽烏を復刻させた年でもある。ちゃんと、このBulletinでも販売告知されているうえに、フライングVにいたっては、ヴィンテージとReissueを採寸までして比較解説してくれている。

よく見ると、1982年ヘリテージ・コリーナ・フライングVの販売価格が795ドルだから夢のような時代である。

自分自身の記憶が点と点で結ばれ、偶然にもこうして書籍によって解凍されるのは不思議な気持ちだが、同時に胸が躍る一瞬だ。皆さんも経験があるだろう。

どんな記憶の断片であれ、体験であれ、それが曖昧でも明瞭でも、ギブソンというキーワードで脳裏に焼き付いている限り、私たちはいつも「ギターが好きでよかった」と、感謝するのである。そんな時間の延長線上に、アメリカへの憧れが、いまでもいつまでも見え隠れする。

このロッドカバースクリューは、80年代初期だけのオリジナル仕様です。

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モノによる記憶の解凍 - HeritageとVintage
60年代生まれにとってギターは憧れの対象だった。カタログを眺めながら「いつか手に入れる」と夢見ていたものである。今回は80年代初期の日本ギブソンのカタログを見ながら、ギターコレクターとして「モノによる記憶の解凍」について考えてみようと思う。

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