ちょっとチェット・アトキンス12弦
不思議なコンセプトが興味深い12弦モデルのチェット・アトキンスは、めったに市場でお目にかかる機会のないモデルです。微妙な立ち位置で、必ずしも成功したとはいえない「12弦チェット」をお楽しみください。
目次
不思議なコンセプトが興味深い12弦チェット・アトキンス・モデル
1992年のカタログを見ています。フルカラーの豪華なページには、ヒスコレ前のLPリイシューや、
ABR-1時代のファイヤーバード…
に紛れて、チェット・アトキンス・モデルがフルラインナップで掲載されていて、大変めずらしいです。今回は、その中から「12弦モデル」の紹介です。
ロックに「ナイロン・クラシック・ソリッドボディ」という新境地を切り開いた希有の同モデルを、Vintage Maniacsではこれまで3回にわたり特集してきました。
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とりわけ12弦モデルは、チェット・アトキンス・シリーズとして、実際どんな用途があるのか、不思議なコンセプトが興味深い、めったに市場でお目にかかる機会のないモデルです。
レストアから仕上がってきたので、ディテールを見ていきましょう。微妙な立ち位置で、必ずしも成功したとはいえない「12弦チェット」をお楽しみください。
12弦チェットのパーツ・スペック紹介
サウンドホールは、ナイロン・モデル同様に、プラスチックのお皿に筆記体のロゴが入れられています。弦の数が12本であることを除けば、慣れ親しんだデザインですね。
コントロール・ノブは左肩のサイドに配置されていて、これもナイロンクラシックと同じ位置です。ステージで演奏してみると、大変使いやすいレイアウトなのがわかります。
ヘッドのロゴはゴールドのデカールですが、突き板の色に隠れて、ステージ上では判読しにくいと思います。できれば同じ筆記体でも、白蝶貝のインレイとかにしても良かったですね。
角度を変えると、やっと「Gibson」と読めました。
92年のカタログには、この12弦を含む5機種のチェット・アトキンスが掲載されています。
Chet Atkins自身はグレッチのイメージが強いギタリストですが、80年代のナイロンクラシック大成功を経て、ギブソンのニューウェイブ・モデルの旗手となったのは間違いないでしょう。
12本のスチール弦をしっかりとホールドするブリッジには、ギブソンらしい工夫がなされています。
ヘラの様に掘り込まれたブリッジは、弦を通すときにスムーズで、機能的なデザインになっています。
スチール弦のアースは、ブリッジエンドに取り付けられた金属プレートの裏側にハンダ付けされたワイヤーでコントロールキャビティまで延びています。
このブリッジは6弦にも流用されていましたが、後年ラインナップに追加される「Solid Top」のSSTモデルではダミーサウンドホールが省略され、ブリッジも普通のエレクトリック・アコースティックのような、ブリッジピンで止めるタイプになっています。
ヘッドはアウトラインが流麗でスリムに映え、12個のグローバーを纏ってなお大きさを感じさせない秀逸なデザインです。
ちなみに、カタログをご覧いただいて「あれ?」と思われたかもしれませんが、12弦だけはロッドカバーに「Chet Atkins」のロゴが入っていないんです。
バックプレートについて、気になった点をひとつ。
後年は、この「ボディ・センター・キャビティ」に変更され、くり抜きも大きくなりました。そしてキャビティはブリッジの真下に位置変更されているので、サウンドへの影響は大きいです。
それと、ネジ止めの方式が変更されて、ボディにダイレクトでスクリューを止めています。
初期はネジのアンカーが埋め込まれていて、バッテリー交換で何度ネジを止め直しても「スリップ」しない耐久性のあるパーツでした。
80年代に閃光のごとく登場し、瞬く間に世界中のロック・ギタリストを虜にした、ギブソン・ナイロン・エレクトリック「Chet Atkins」の、スチール12弦モデルは、よりどころの無さとレアさが共存する貴重なモデルです。
ピエゾ搭載ナイロン弦モデルとの違い
なかなか内部まで見る機会が少ないので、最後に基板をクローズアップしておきます。
画像で「あれ?」と思われた方は相当なマニアですね。その通り。この基板には、独立したボリュームコントロールが付いていません。
ブリッジに独立したピエゾを搭載しているナイロン弦モデルでは、各弦のコントロールができるようになっています。
「めずらしい」の一点でご紹介したチェット・アトキンス12弦ですが、実際にライブやステージで使われているシーンが記憶にないので、なぜ入手したのか、そもそも思い出せない不思議なギターです。デザインが素晴らしい、その一言に尽きるようです。
このカタログをいただいた「渋谷の道玄坂YAMAHA」は、綺麗なフロアと親切な店員さんが印象的な憩いの場でした。
99年にイシバシRock Sideでいただいたカタログ。チェット・アトキンス・モデルのラインナップも絞られ、12弦は掲載されなくなりました。
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