それ程に、それなりの時代 ES-347 (後編)
音楽の流行が激しく変わる1978年に登場したES-347。商業的には、あまり成功したとはいえない機種ですが、Sustain SistersやTP-6、ブラス・ナットなど、ポテンシャルを秘めた仕様でした。今回は当時のピックアップにも触れつつ、ES-347のスペックを深掘りします。
目次
1978年の音楽シーン
VM (Vintage Maniacs)ES-347なんて、めずらしいギターを撮影してますね。
FV (Fukazawa Vintage Club)ESシリーズでの位置づけが、いまだに明確にならない「それなり」のモデルなんだけど、妙に気に入っててね。
VMでも、ギブソンの開発陣にしても、コンセプトっていうか、背景はあるんでしょう? このギターがデビューした78年って、どんな音楽が流行ってたんですか?
FVそもそもが、当時は音楽の変化が激しいというか、なにかとロックに理屈をつけてジャンル分けし始めた時代だから。レコードショップに行くと、図書館なみの棚割りになっててさ。音楽ジャンルを思いっきり沢山言える先輩を尊敬してたな(笑)
VM確かに、調べてみるとパティ・スミスの「イースター」とヴァン・ヘイレン「炎の導火線」が同時にヒットチャートですからね。ほかにもエアロスミスやポリス、XTCやチープ・トリック。ゲイリー・ムーアの「バック・オン・ザ・ストリート」が登場しています。アール・クルーの登場はインパクトあったでしょうね。
FV「フュージョン=早弾きクロスオーバーギター」的に、リー・リトナーやラリー・カールトンがFM局を席捲して、「ES-335持てばスーパースターも夢じゃない」って雰囲気だったよ。
VMそれ、「モーリス持てば…」をパロッてます?(笑)
FVアル・ディメオラとか聴いていると「おー、とりあえずディマジオ載せてミニスイッチでコイルタップや~」って、みんな改造してたから…。
VMで、ギブソンはES-347に「バリトーン」の後釜機能として、「コイルタップ・スイッチ」をつけたわけですか。
VMあれ? このスイッチ、壊れてませんか? 片方にしか倒れませんよ。
FVコイルタップだから、両側に倒れる必要ないだろ? 知ってて聞かないでよ(笑)
ES-347のスペック紹介
VM短冊リーフレットにも、しっかりとES-347が登場していますね。
VMどれどれ…。
①ボディはメイプルで特に変哲ないです。
②ブラス・スタッド「Sustain Sisters」は、この後あまり聞きませんが、ネーミングが無茶苦茶クール。アレンビックやヤマハのサスティーンプレートを意識したのでしょうか。
③TP-6は、実際に使うと凄く便利です。当時のセールスリーフレットでも、一押し的にアピールしています。
ちょくちょくやらかすのが、ネジの紛失です。緩めたままライブで使って、終わってケースにしまうときにネジが無くなっているパターンです。
Vintage Maniacsでは、このスクリューを失くしてしまったオーナーの方に向けて小分けしています。
Gibson TP-6用スクリュー(1個)
FVまあ、こんな格好になるまえに、予備でスクリューを備えておくといいよ。繰り返し、宣伝だけど(笑)
④ コイルタップ・スイッチ搭載ですね。
⑤そして、見落としがちなのが「ブラス・ナット」。知らないと「リプレイスしたのかな?」って思うぐらい、ギブソンっぽくない仕様だと思いませんか?
VM商業的には、あまり成功したとは言い難いES-347ですけど、型番の中途半端さはさておき、ポテンシャルある仕様なのが、よくわかりました。
FV白蝶貝のブロックインレイは、当時としては豪華だよ。
VMでも、クラウンインレイとは、ちょっとアンバランスじゃないですか? 同年代に復刻したES-350も似た印象です。
VMあれ? ロッドカバーって、これでいいんですか?
FVなんで? ちゃんと「347」になってるじゃないか。
VM前編で掲載したパンフレットのロッドカバー、“ES”の部分が筆記体でしたよ。
FVありゃ、ほんとだ。気がつかなかった。
FVこっちのカタログでは、見えにくいな。
FVブロックヘッド裏には、「NIHON GIBSON」正規輸入品である証明の「剥がれないシール」がしっかりと貼られていて、保管状態の良さがうかがえる。
VM70年代後半は、メイプルネックの好きずきはありますが、総じて丁寧な作りで木材も良いので、長年の相棒とするには「Neo Vintage」と呼べそうです。このラベルが、なんとも愛らしいですよね。
FV現行のESシリーズでは、メイプル3ピースネックは、なかなかお目にかかれないから、当時のサウンドに想いを馳せて、がんがんジャズコーラスで鳴らすのもいいんじゃない?
VMそれ、賛成でーす。
こちらは、通常のピックアップセレクタースイッチ
すでにアルミからブラスに移行しているゴールドのストラップピン。
57 ClassicとPat刻印ピックアップ
この年代は、ES-347にも搭載された「タールバックのスーパーハムバッカー」と、「Tトップ+刻印Patナンバー」がギタリストの人気を二分しますが、時同じくして登場した「57 Classic PAF」前後のHeritageシリーズ黎明期に投入されたハムバッカーには名作が多いです。古い順に見ていきましょう。
俗にPattent Applied For TMピックアップと呼ばれるモデルです。裏側に水性PAFデカールが貼付されているので、見分けやすいでしょう。スクエアウインドウも開いていない初期モデルです。裏スクリューはブラス 製の「+」頭です。
57 Classic
Pat刻印(A)
57クラシックよりも少し古い時代です。バックスクリューは、まだブラス製で小さいです。スクエアウインドウがすでに開いています。
Pat刻印(B)
裏のネジが大きくなります。スクエアウインドウは開いています。
Pat刻印(C)
裏のネジは大きいままですが、スクエアウインドウがなくなります。
VMPat刻印のハムバッカーって、沢山種類があるんですね。いままでTトップだとばかり思っていました。帰ったら、自分のギターも見てみよっと。
FV70年代から80年中盤までのハムバッカーは総ざらえしておきたいね。なにはともあれ、今回のES-347は「それなりの音楽の時代」に、「それ程までしっかりと取り組んだ」ギターとして、当時の開発チームに拍手だな。
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