Gibson Flying V 83 - 暑い夏の夜の夢(前編)

ピックガードが無い異質なデザインの「The Gibson Flying V 83™」。迷走するギブソンの空回りする意気込みを感じる、不思議なスペックのフライングVを、前後編の2回にわたってご紹介します。

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ピックガードレスのフライングV

私にとってギブソン社のギターデザイン史上、もっとも不思議なモデルがフライングVです。1958年に登場したコリーナVは、製作本数こそ限定的でしたが、そのインパクトは絶大で、数々のハードロック・ギタリストを虜にしてきました。

最初の復刻は1967年。贅沢なマホガニー1枚板に、でかくて長いヘッドストック、ショートヴァイブローラとワイドピックガードは、私の目を釘付けにしました。それ以降、1971年にメダリオンが登場、1974年のナチュラル、1980年に「しゃもじヘッド」が登場しても、ずっとFVはワイドピックガードでしたから、ピックガードレスのFlying V 83が登場したときには、「なんだこれ?」って感じでした。

「The Gibson Flying V 83™」と呼ばれるこのモデルは、ピックガードが無いだけで随分異質ですよね。ヘンテコですよ、しっくりこないんです。

フライングVらしくないGibsonロゴ

へッドのGibsonロゴが水平なんですね。

フライングVのレイズドロゴやロッドカバーのロゴは、ギターを寝かせたときに正しい向きで見えるのが普通なので、このロゴは「フライングVらしくない」んです。

しっちゃかめっちゃかなスペック

手元にFlying V 83が掲出されたカタログが2種類あったので見比べてみましょう。

当時は、斬新かつラディカルで短命に終わる「Futura」や「Challenger」とならんで、堂々と「Flying V」を紹介しています。同じ時期に一方では「1958 Korina V」を復刻していたのですから、まあ、ワールドワイドにロックブームで肥満気味になったギブソン社が、商品企画でも技術でも広告宣伝でも、転職組のにわかエリート社員に振り回されて、創業精神やKalamazooの伝統もへったくれも失い迷走する中、とにかく「新しいロックなサウンドをクリエイトしよう」とする空回りの意気込みが伝わってきて、同じ製造業で商品企画を経験した筆者としては、同情よりもシンパシーを感じながらこの記事を書いている訳です。

注意して見てみると、カタログのヘッドのGibsonロゴがちょっと斜めになっていました(笑) この記事で紹介している実機では、ちゃんと水平になっていますね。工場の現場の仕業だろうか…。

気を取り直してスペックを見てみます。

ボディがアルダーと表記されています。もしかしたら、ギブソン社初めてのアルダーボディ・ギターかな? ネックはメイプル。指板がエボニー。

フェンダーっぽいマーケットに媚びるなら、エボニーのフィンガーボードは明らかに間違っています。同時に発売された「The Gibson Explorer 83™」というモデルも、ボディ、ネック、フィンガーボードともにFVと同じ仕様でした。

カタログのコピーを見ると「Standout(傑出した)」とか「Thoroughbred(サラブレッド)の血筋」みたいなことをアピールしながらも、「Affordable price(手頃な価格を実現しました)」という事なので、ギブソンにとっては、①ワイドピックガードよりもピックアップリングのほうが製造工程上めんどくさくなくて、②マホガニーよりもアルダーやメイプルの方が安価で、③ローズウッドよりもエボニーのほうが廉価モデル向け、という理解になりそうです。そうすると、レスポール・カスタムは何故エボニーなのか…?

こんなニューカマーというか、迷走というか、北米でも大成功を収めたという印象は無いモデルなのですが、「ケーラー」などのダイナミックなアームアクションには適していたようです。

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