ギブソン純正ハードケースの種類を比較

50年代のブラウンハードケースは、ケースシェイプ、ラッチの金具、Gibsonロゴバッジなどのバリエーションが多岐にわたります。今回は時代ごとのブラウンケースの大まかな比較をしながら、レスポール用ハードケースの魅力を探っていきます。

3.3kgと5.1kg、この重量が何を表しているか、レスポール・ファンならおおよその見当はつきますね。そう、3.3kgは50年代ギブソンのヴィンテージ・リフトン・ブラウンケースの重量です。5.1kgはヒストリックコレクションに付属していた重いブラウンケースの重量です。もちろん個体差はありますが、さすがに1.8kg違うとヒスコレの空ケースを持ち上げた時に「ギターが入っていると勘違いした」という話もあながち嘘ではなさそうです。ただ、重いコスタリカ製といえどもブラウンハードケースが付属しているのは嬉しかったので、ヒスコレがブラックケース一辺倒になったときは残念でした。

左から、G&G USA Aged Replica、59 Brown Case、80's 59 Reissue、Gibson H/C

さて50年代のブラウンケースは、ケースシェイプ、ラッチの金具、Gibsonロゴバッジなどのバリエーションが多岐にわたり“これが50年代の確定スペック”というのを決めにくいのが実情です。概ね6~7種類に大別できるようですが、ラッチの位置が適当だったり、Gibsonバッジが付属していないものが多かったり、中には明らかに他社のギターも入る汎用シェイプを流用するなどまちまちでした。今回は、まず“典型的なブラウンケース”としてギブソン社が復刻のベースとしたスペックを中心に、時代ごとのブラウンケースの大まかな比較をしながら、レスポール用ハードケースの魅力を探っていきたいと思います。

一番上がマスターピースのヴィンテージで一番下がヒストリックの復刻版

まず50年代のブラウンケースです。筆者はこのシェイプ・バランスが一番好きです。ネックからカッタウェイへの流れるようなラインとトップのラウンドが、アールデコのアートのような完成度を描いています。

Gibsonバッジは取り付けられずにポケットに入っていました。初期は「自分でつけなさい」ということだったのでしょうか。

新品のような状態のバッジです。

この後、68年前後にブラックケースが登場するまでレスポール・ケースはディスコンとなります。ブラウンケースが復刻されたのは、ヴィンテージギター・ブームに乗って80 Heritage、80 Elite、59 Vintageなどが市場に再投入された80年代初期になります。

当時は「これがブラウンケースか」と興奮したものですが、改めて比較すると50年代よりもモダンな柄と実用的なラッチが採用されており、ヴィンテージの復刻というよりは80'sブラウンスリムケースという別のものに見えます。ノーリンのGibsonロゴはお世辞にもかっこいいとはいえませんでした。

ではヒストリックで復刻されたブラウンケースはどうでしょうか。

シェイプ、ラッチの位置、内側のライニングと代表的な仕様をうまく反映していて好感が持てます。ハンドル(取っ手)はヴィンテージと比べると随分横に広がってソフトタッチな素材ですが、これはクオリティの高いレプリカが出ていますから交換する手もあります。

Gibsonバッジは良くできています。☆マークの大きさなどでヴィンテージとの判別は可能ですが気になるほどではありません。

50年代とヒスコレ復刻版は、ともにフェンダー社のハードケース同様センターラッチタイプが採用されていますが、60年代初期にレスポール・スペシャルの販売促進で大量出荷されたブラウンケースには、SGレスポールのハードケースにも搭載されていたボトムが尖ったタイプのラッチもみられます。

次は、もともとギブソン社のヒスコレ・ブラウンケースを当初から生産していたG&Gのブラウンケースです。次の画像はVintage Maniacsがエイジド処理をしたもので、外観や色合いはオリジナルの雰囲気が出ています。実用性を考慮して内側はエイジドをしていません。

当時は、いかにレスポール・スタンダードといっても全員がハードケースを購入したわけではありませんでした。付属品としてはギターの価格に対して非常に高額でしたので、ES-125やフラットトップのように、アリゲーター柄のチップボードケースも準備されていました。このスタンダード用のチップボードケースは、後年スペシャルやジュニアのケースと混同されがちですが、ギターのボディ厚が異なるのですから当然ケースの寸法も違います。

ハンドルは交換してあります

スタンダード用は底面が約1/2インチほど深くなっており、ブラウンケース同様に保護金具が取り付けられています。

ハンドルの取り付け位置はボディの重いスタンダードを考慮して後ろ寄りになっているのがわかります。さらにネックポケットには強度を確保するための枕が取り付けられています。これはスペシャルやジュニア用のアリゲーターケースにはありません。

レスポール・スタンダード用のチップボードケース
レスポール・スペシャルやジュニア用のチップボードケース

ブラウンケースは奥が深いので、今後も機会をみて年代別仕様や詳細をレポートしていきたいと思います。ここでレアなアイテムをご紹介します。美しさでは歴代のレスポール・ハードケースの中でも群を抜いている70年代限定生産、アーティストケースシリーズのオックスブラッドです。豪華なインテリア、Gibsonの襷、重厚なメッキのラッチ、絨毯のような内張り。主に「The Les Paul」などが入れられましたが、金バッジの復活など確実に80年代のブラウンケースにつながる試行錯誤がなされている貴重なハードケースです。

最後の画像は1999年のヒスコレ40thの際にキャンペーンで付属したブラウンケースです。当初北米のみのキャンペーンでしたが日本の購入者も保証書をGibson USAに送れば個別に空輸してくれることになりました。レザーストラップが懐かしいですね。

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ヴィンテージと復刻版の違いをチェック - ギブソンロゴ・ケースバッジ
ヴィンテージのバッジはブラウンケースのほか、安価なアリゲーターケースやブラック・チップボードケースの内蓋にも取り付けられていましたので、外れやすい内蓋ごと脱落しているものが結構あり、eBayなどのオークションでも比較的安価で入手できます。

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1952年に誕生してから60年が経つレスポールの歴史において、もっともレアで貴重といわれてきたアクセサリーが、Zipper Case Coverです。カタログでは、1956年にZC-LPという型番で登場して以来、常にラインナップされていながらも、これまで現存するものがほとんど確認されていないというレア中のレア・アイテムでした。

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