アッセンブリーの理屈 Kluson 3 in-line (後編)

「3連ペグ」特集の後編となる今回は、ペグ本体とボタンの交換作業をしていきます。リプレイスメントパーツの仕様に合わせたシャフトの加工方法をご紹介。秘蔵の珍しいクルーソン・ペグなども見ていきましょう。

8弦コリーナ・ラップスティール用の4連クルーソン

VM前編、退屈でしたよ~。

FVなんだなんだ、いきなり。

VMだって、3連ペグの特集って以前やったじゃないですか。あらためて「6種類ある」って言われてもVintage Maniacsの読者なら知ってますよ。

FV写真を見て、「4連」に気が付いた?

VMえ……?(沈黙)

FVいや、3連クルーソンの紹介といいつつ、見せたかったのは「8弦のコリーナ・ラップスティール」だったりしてね(笑)

VM最初から言ってくださいよ、それならそうと。でも、前編では全く触れてなかったですね。

FVまあ、皆さん興味ないだろうな…と思って、写真だけで我慢したんだけど。

VMでも、搭載されている「4連クルーソン」はピカピカにみえます。現行でも出てるんですか?

FVまあ、そこはクルーソンが頑張ったんだろうね。ご指摘のとおり、現行タイプなんだよ。搭載されていたヴィンテージは、ボタンが崩壊して、こんな感じ。

FVでも、コリーナのラップスティールなら、本来ボタンの色は「ブラック」のはずだよなあ。

VMで、今日は「シュリンク崩壊ボタンのリペア編」ですね?

FV先に言わないでよ(笑)

FV前編で紹介していない「シングルライン・シュリンクボタン」も、ちゃんと撮ってあるだろ?

VMあ、ほんとだ。

レスポール・スペシャルのペグを「ノーライン・シュリンク」に交換

FVえっと、ボタン修理の前に、まずは「レスポール・スペシャル」を元に戻そう。

VM「ノーライン・シュリンク」に交換ですね。

FVずっと、この状態で保管していたから見慣れていて、交換するのにしのびないが…。

FV高音弦がダブルライン・クルーソンで、低音弦はシングルラインだ。ボタンのカラーは似ているので、表から見ると違和感ない。

VMその分、裏返して見たときに「チンチクリン」ですよ。早く治しましょう。

FV塗装の焼け具合には、シュリンク・ボタンのカラーのほうが似合ってるね。

VMネジを外して付け替えるだけですよね。簡単なのに、とりかかるまでに時間かけますねえ。

FV作業よりも「決断」に時間がかかるんだよ。ナイーヴなんだ、こうした「想い出のパーツ」を交換するのは。

VM年季入ってますね。弦を巻いたら割れたりして。でもほら、かっこいいですよ、シュリンクのほうが。

FVまあ、比較の問題かどうか悩ましいけれど、表から見ても裏から見ても、時代考証としては正しいルックスになったな。

シュリンクボタンに交換後

交換前

3連クルーソンの崩壊したボタンを交換

VMじゃあ、本題の「ボタン交換」に移りましょうか。

FV今回取り寄せたのは、北米のマニアが作っている「丸穴タイプ」と、通販でも手に入る「四角穴タイプ」の2種類だ。

VM個人的には左のが好きですね。

FVヴィンテージに搭載するときのシャフトとの相性は、君の言う通り「左」が良いよ。

VMしかし、見事に崩壊していますねえ…。

FVバラバラに崩壊すると途方にくれるよね。チューニングできないんだから。といって、高価なヴィンテージに、勝手気ままに適当なペグを取り付けるわけにもいかないし。

FVで、四角穴と丸穴の違いだけど、ヴィンテージに取り付けるには、四角穴はちょっと不便。

VMあ、結局シャフトの先端に入らないのか…。

FV取り付けた後も、こう見えないとダメだろ?

VMここ、ポイントですね。ってことは、やっぱり「丸穴」推薦ですか?

FVただ、丸穴を取り付けるには、結局「シャフト」を切ったり削ったりする必要があるから手間は同じかな。

四角穴ボタンの搭載

まず、縮んだボタンを全部取り除きます。
シャフトのでっぱりをヤスリで四角く削りなおします。
相当な時間をかけて丁寧に削りましたが、まだ入りません…。
だいぶ四角く削れましたが…すでに25分…。

VMこれなら、丸穴のほうが綺麗に入りそうですよね。

FVそうだね、わざわざ穴に合わせて四角く加工するほうが手間がかかる。もっと早く気づくべきだった。

丸穴ボタンの場合

シャフトの先端を切り落としました。
そして、左右の張り出し部分を削ります。
ボタンがすっぽり入ることを確認しましょう。
2液混合タイプのエポキシ接着剤は、硬化時の容積変化がなくて重宝します。
ボタンの丸穴に、たっぷり充填。

VMおー、仕上がりましたね。6個とりつけて10分かからなかった。

FV慣れれば、もっと早くできそうだね。仕上がりも完璧。ちょっとヨゴレをつけてエイジド加工しておけば、さらに完成度が高い。

VMそんなわけで、「レスポール・スペシャルのペグを戻す」のと「崩壊ボタンのリプレイス」を前後編でお送りしました。

FVなにげなくグローバーやシャーラーに交換しがちな「3連クルーソン」ですが、ちょっと手間をかければヴィンテージのルックスを維持できるので、皆さんも試してみてくださいね。

シュリンクボタンのルックスが復活したレスポール・スペシャル

追記

VMねえねえ、パーツボックスの3連に、こんなの入ってましたけど。

FV良く見つけたねえ。それは秘蔵の(笑)「シングル・ダブル」だよ。

FV改造じゃなくて、ファクトリーオリジナル。これが搭載されたギターを買った人は、びっくりしたろう。

VM裏側から見ても改造の跡は見当たりませんね、めずらし~。

 次に読むなら

クルーソン・ペグを年代別に分析 - ヴィンテージ・ギブソン編
ヴィンテージのクルーソン・ペグはシュリンクと呼ばれる樹脂素材の劣化が特徴です。ツマミの経年変化に注目し、分解もしつつスペックの変遷をご紹介します。

掲載されている文章および画像の無断転載・引用(ソーシャルボタンは除く)は固くお断わりいたします。

 Vintage Maniacs Shopのおすすめアイテム

Vintage Maniacs Magazine Vol. 1

Vintage Maniacsのブログに著者コメントを追記し、編集・再構成した「Vintage Maniacs Magazine」。全ページフルカラー仕様で、資料としてもオススメです。Vintage Maniacsが切り込むディープでマニアックなヴィンテージギターの世界をお楽しみください。

ショップで見る
Vintage Maniacs 公式Webショップ