やみクロ - コリーナだってば

美しい木目でミュージシャンを魅了するコリーナ。リンバウッドと呼ばれ、50年代には家具の表面板としても重宝されました。そんなKorinaを多数のクローズアップ写真で見つつ、「コリーナ」という呼称・商標についてもご紹介します。

「コリーナ」という名称について

コリーナ材は、本名「LIMBA WOOD」と呼ばれる、シエラレオネ(西アフリカ)周辺国に広く見られる大木です。人工乾燥でも狂いが少なく、接着性も良いことから、家具から楽器、棺まで用途は多彩です。木目の美しさとマホガニーに類似する特性から、50年代後期にギブソンのフライングVやエキスプローラに使用され、ポピュラーになりました。

あまり知られていない事かもしれませんが、「コリーナ」という名称は、その昔家具メーカーの特定の商品名でした。89年にダラスのギターショーで講演していた「ジョージ・グルーン」から聞いた話です。

彼は、この『Gruhn Guitar通販カタログ』にも掲載されている、コンディションの良い1957年プロトタイプモデルをそのショーで展示していて、講演のあと会話が盛り上がりました。そして、「Hey, Taddy. コリーナは商品名だから、本当はGibson社は“リンバ”という方が正しいんだよ」と教えてくれたのです。

ちなみに、ここに掲出されているVの価格は150,000ドル(当時のレートで約2千万円)。同じカタログの1955ゴールドトップが6,250ドルですから、24本分になりますね。

いまの相場で、55GTが450万円とすると、Vは1億円を超えていた換算になります。

で、89年当時の私の「ギター日記」をめくると、「Korina呼称」について、ちゃんと調べていました(笑) 今のようにインターネットとかが無い時代ですから、Greenwoodからクルマを1時間運転して、Greenvilleにある小さな法律事務所を訪ね、「USPTO=United States Patent and Trademark Office」に書類で問い合わせてもらったのです。その結果は、次のとおり。(今ではオンラインで即時に調べることができますが、当時は調査結果を取得するまで2週間かかっていました・笑)

Korina

申請日
1950年2月24日
登録番号
0559798
登録日
1952年6月10日
商標所有者
United States PLYWOOD CORPORATION NY
住所
55 WEST 44TH Street NY
登録種類
TRADEMARK
適用対象
PLYWOOD, VENEER, AND LUMBER
(合板、化粧板、木材)

50年代には、リンバウッドの美しい木目が家具の表面板として重宝され、その「合板・化粧板」を「自社の商品名」として「KORINA」で商標登録したのが、「United States PLYWOOD CORPORATION」ということです。この会社は、1937年創立の歴史ある「木材・合板メーカー」でした。当時、北米で「KORINA化粧板を貼った普及価格帯のファニチャー」は、家具業界を席捲するほどポピュラーだったようです。(ジョージ・グルーン談) 余談ですが、同社は1967年に「Champion Papers」に買収され「U.S. Plywood - Champion Papers, Inc」に改名されました。

もうひとつ余談を。今回、Korinaで北米の商標登録を調べてみましたが、Gibson社ではなくアルペジオ・ギターが「K Arpeggio Korina」という商標を、1998年に「楽器用商標」として取得していました。(現在はDEAD) 美しいレスポール・シェイプのフライングVタイプのヘッドストックを纏った同社のコリーナモデルを覚えているファンも多いと思います。

さて、さらに「USPTO」で調べたところ、Gibson社がKORINAという名称で商標登録申請した形跡も却下された履歴もありませんでした。

マック・ヤスダ氏の写真集でも特別な存在感を持つ、コリーナのV

ミュージシャンを惹きつける「リンバウッド」の美しさ

美しい木目で人々を魅了する「リンバウッド」をクローズアップで見てみましょう。

見る角度によっては、テンの毛皮のような美しい木目

ラップスティールの日焼けしたコリーナ

とにかく美しく、太陽光の下では「ブロンド」にも見えるイエロー基調のリンバウッドは、その後も多くのミュージシャンを惹きつけて止まないわけです。

ピックガードの色は、「ブラックかホワイトか」好みが分かれるところですが、

4PLYであれば、それなりにスリムでカッコいいでしょ?

ここからは、しばし「リンバウッドの美しい木目」をご覧ください。

モダーンのヘッドストック

同モデルのボディバック

フライングVのテールピース部分(別個体)

Gibbonsチューンナップ企画2本

せっかくの「やみクロ(やみくもクローズアップ)」ということで、「リンバウッド=コリーナ材」の木目をもう少し眺めてみましょう。

モダーンのテールピース付近
同左ウイング部分
ネックジョイントの美しい継ぎ目
やっぱり私は個人的に「ホワイト・ピックガード派」なのかなあ…。

最後に、「買わずに後悔するなら、買って反省」が信条の私が、悔いて止まない一本をご紹介します。コリーナ・ファンの方なら、ご記憶に残っていると思います。

もちろん、真ん中のフューチュラです。

付録

ビリー・ギボンズ・ファンの私は、ドイツの知人と一緒に、こんな企画をやっていた時期もありました。

ギボンズ氏もまえがきを寄せている写真集『Flying V』には、当時のギブソン社が記録していたシリアルナンバー毎の出荷先(ショップ)も掲載されていて興味深いですね。

 次に読むなら

スプリットヘッドのコリーナ・モダーン - ギブソンのサンプル機
めずらしいスプリットヘッドのコリーナ・モダーンは、ギブソンがマホガニーで限定復刻するベースになったサンプル機です。プロトタイプではなく、工場で試作され出荷されなかったデザインラボのハンドメイドなので、シリアルナンバーや「Proto」の刻印がありません。

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